STEP5 専門家インタビュー

東京カンテイ・中山登志朗さんに聞く 消費税増税とマイホーム購入戦略

消費税増税や住宅ローン減税、空前の低金利など、めまぐるしく様々な状況が取り巻く中で、今後のマイホーム購入をどのように考えれば良いかを、中山さんに伺いました。今回は特にマンションを例に置いて、具体的に語っていただいています。

消費増税前に買うか、増税後に買うか

――消費税が増税されると、住宅ローン減税は拡充されるとか。すると、消費税増税後に買ったほうが得になりますか。

それは、購入する物件の価格帯と住宅ローンの元本の額によります。たとえば、1億円をはるかに超える、都心に代表されるような高級マンションだと、消費税増税によって500万円以上負担が増えるケースがほとんどです。住宅ローン減税で戻ってくるのは最大400万円ですから、増税前に買ったほうがいいですね。

また、400万円の減税を受けるには、10年後の借入残高が4000万円あることが前提です。例えば、2500万円のマンションを買って2000万円のローンを組んだ場合、200万円以上戻ることはありませんから、消費税増税前と変わりません。つまり、元本が比較的少ない場合は消費税増税前に買ったほうがお得な場合がある、ということになります。

一方で、6000万円のマンションを頭金1200万円・借り入れ4800万円で購入すれば、住宅ローン減税で400万円が戻ります。これに対して、消費税増税による負担増はせいぜい100万円程度。ローン減税とで差し引き300万円の開きが出ますから、消費税増税後に購入したほうがいいでしょう。

とはいえ、これらはすべて一般論。そもそも住宅の購入は、ひとりひとりの人生設計に基づいて考えるべきものです。消費税増税で100万円高くなるからと慌てて買って、10年後に住み替えが必要になったとき、そのマンションが1000万円値下がりしていたらどうでしょう。差し引き900万円の損になってしまいます。

買うときの値段がいくらか、ということだけでなく、将来、売ったり貸したりする可能性はあるか、そのとき、その物件は適切な値段で売れる、または貸せるだけの価値が保てるのか、総合的に判断する必要があるでしょう。

消費税増税前後のマンション市況

――消費税増税は、マンションの価格動向にどんな影響を与えるのでしょうか?

マンションの価格は、地価や景気など、さまざまな要因で決まります。けれども、現在は比較的地価が安定している時期なので、主に需要と供給のバランスに注目すればいいでしょう。

消費税増税前には少しでも安くマンションを買おうとする人が増え、需要が拡大しますから、それに伴ってマンション価格は徐々に上昇するでしょう。なおかつ、今回の消費税増税は、2014年4月と2015年10月の2段階での引き上げが予定されています。2014年4月に税率が8%に引き上げられたあとも、10%になる前に買いたいという需要が残るはず。しばらくは価格上昇が続くと思われます。

首都圏 地域別 新築マンション価格の推移(一戸平均価格:単位/万円)

新築マンションの場合、内装変更などの注文工事を伴う契約を2015年3月末までに結べば、引き渡しが2015年10月以降でも8%の税率を適用する措置(経過措置:2013年9月末までの契約なら5%)がとられます。従って、2015年4月を境に、マンション分譲会社は在庫整理に転じるとみています。当然、価格上昇は頭打ちになり、2015年10月以降は下降線をたどるでしょう。2016年には、増税前の2013年と同じ水準に戻ると思われます。

――すると、3年待てば値上がり前の値段で買えますか?

ここで問題になるのが供給量です。2015年春以降、マンション分譲各社は新規分譲を控えるでしょう。2014年の首都圏の新規分譲戸数は5万5000戸程度と予測していますが、2016年には3万戸ぐらいに減るのでは。買う人にとって、2014年はより取り見取りですが、2016年になると、希望の条件に合う住戸がなかなか見つからない、という事態になりかねません。

住宅ローン金利の見通し

――住宅ローン金利は、これからどうなりますか?

金利に先高感が出てきたことは確かです。2013年6月現在、フラット35の金利は最も低いもので2.030%(※1)、当初10年間の固定金利特約期間で1.53%(※2)ですが、5月から0.2〜0.4%ほど引き上げられています。反対に、期間限定ですが3年固定で0.6%、4年目以降も実施金利から1.6%優遇という住宅ローンも登場しています。日銀が4月に実施した「異次元緩和」以降、金利動向の先行きが見通しにくくなっていますから、毎月確認する必要があるでしょう。

一方、変動金利は2.475%と固定金利より高くなっています。もっとも、多くの金融機関はマンション分譲会社との「提携ローン」を用意して1.5%程度優遇するので、実際の金利は1%未満になります。とはいえ、固定金利同様、変動金利も先行きの見通しは難しくなっています。

※1 返済期間が21年以上35年以下の場合。取り扱い金融機関が提供する金利で最も多いもの
※2 住信SBI銀行の「ネット専用住宅ローン」の場合

――早く借りたほうがお得でしょうか?

金利の上昇局面では、なるべく早く借りた方が、支払い総額は少なくなります。しかし、長い目で見れば、現在の1%、2%という金利はとても低い水準なのです。それが0.05%や0.1%上がったとしても、焦る必要はありません。

住宅ローンを考えるうえで一番大事なのは、金利そのものよりも「自分は毎月いくら払えるか」ということです。6000万円のローンを組む人と、2000万円のローンを組む人とでは、おのずと金利の動きによって受ける影響の大きさが違いますから。もちろん、金利の動向は注視するべきですが、それと自分が家を買うタイミングとは分けて考えたほうが良いでしょう。

「消費税が上がる」「金利が上がる」といった周囲の状況に振り回されることなく、自分のライフステージや家計の見通しを考えて、冷静に判断することをお薦めしたいですね。

記事監修者プロフィール

中山 登志朗(なかやま としあき)

中山 登志朗(なかやま としあき)
株式会社東京カンテイ 市場調査部 上席主任研究員

不動産市況全般の調査・分析を担当するほか、市況レポート“Kantei eye”編集長を務める。
新聞・雑誌・テレビ・ウェブサイトなどに数多くの原稿・コメントを提供。著書に「戦略的マンション購入マニュアル」(ダイヤモンド社)他がある。

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