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建具屋をリノベ!感動と癒しの古民家ゲストハウス【富山編】

2017年09月06日

アチュー・ワークス

建具屋をリノベ!感動と癒しの古民家ゲストハウス【富山編】

田舎暮らしで生まれる物語#1

建具屋をリノベ!感動と癒しの古民家ゲストハウス【富山編】

得難い体験とともに過ごすクリエイティブな空間

富山県南砺(なんと)市、井波地区。最寄りの駅といってもそこから歩けば2時間弱かかり、これといった飲食店もない。古民家(建具屋)を改築したゲストハウス「BED AND CRAFT TATEGU-YA」のロケーションは、住むにも、ゲストを迎えるのにも決して便利な場所にはありません。「だからこそここを選んだんです」とオーナーの山川智嗣さん。県内富山市出身、この地には小さいころに数度来たのみで、ご自身のこれまでの人生とはこれといって縁のない場所でした。


ともに上海で活動していた山川ご夫妻と、同じく上海から“来日”した猫のちょんまげくん。 


山川さんは主に商業建築に携わる建築家として上海で活動。上海を選んだ理由は、決まりきった慣習や安定に縛られずゼロからクリエイティブにかかわれる面白さ。「日本でちょっとおしゃれだなと思うスペースは、結局、流行のブランドをみんな使っていたりで、それほど刺激を感じなかったんです。」(山川さん)建築やデザインの関係業者とのマニュアル的な関係も、安心感よりも足かせのように感じたといいます。


中国での6年半の成功を踏まえて、上海に拠点を置きつつ、再び日本にもクリエイティブ活動の軸を置こうと考えた山川さん。そのときに向かった先は往復の利便性が高く、商売がしやすそうな東京、大阪など大都市圏ではなく、ここ南砺市・井波。選んだ理由はほとんど接点のなかった小さいころに戻ります。


「井波は不思議な街で、約8000人の住民のうち、200人以上が木彫刻職人として活動している。小さいころに行って忘れていたことだったんですが、振り返ってみると強烈な記憶だったんでしょうね」。


 ゲストハウスの入り口にもしっかりと木彫り彫刻が存在感を放っている。


街並みを歩けば、確かに木彫職人の家ばかり。家族や関係者を含めれば住人のほとんどがその関係者なのではという街。ここにくれば東京などではできない面白いことができるのでは、という確信が山川さんには生まれました。築約50年、木造2階建て、約200平米、元建具屋という建物を、地元の工芸品とともにゲストハウス兼オーナーである山川さん夫婦の住居として生き返らせること。それが山川さんの井波での暮らしのスタートでした。

1日1組限定の貸し切りスタイル

1階がゲストのオープンスペースと夫婦の住居、2階がゲストの宿泊スペースという構成。宿泊スペースは、6畳2部屋と4畳の小上がりベッドがある寝室。5人までがゆったりと使えます。「もともとの良さを見せたかった」と山川さんが言うように、当地の建築らしさを残し、高い天井、見事な梁を感じられながら開放感のある仕切り方が見事。水回りも美しくまとまり、細部まで一点物の職人の手によるアイテムにこだわります。和モダンとかんたんにはくくれない、田舎の良さと快適さのバランスが整っています。また、1日1組限定というのもリラックスできる要因のひとつ。


1階のオープンスペース。ウッド基調の落ち着く空間になっている。レンタサイクルで街をゆっくり見てまわれるのも嬉しい。

この見事な梁! そしてさり気なく置かれた木彫刻家・田中孝明さんの作品が空間のアクセントに。

綺麗にリノベーションされた水まわりは清潔感とオシャレ感も完璧だ。 

ちょんまげくんも思わずリラックスしてしまう落ち着いた和モダンな空間。

彫刻の街で、職人に教えてもらえる贅沢

この空間はもちろん、ゲストに喜ばれているのが、「BED AND CRAFT TATEGU-YA」の大切な構成要素である“CRAFT(モノづくり)”の体験。キャッチフレーズは「職人に弟子入りできる宿」。スペース自体にも井波の木彫作品が飾られ「作品があってはじめて完成する空間」(山川さん)という大切なものですが、この作品を創った職人のもとで、モノづくりを体験できる場を作ることが、山川さんのやってみたかったことのひとつでした。


トモル工房の田中孝明さん。


そのワークショップで指導してくれる職人の一人が、「トモル工房」を主宰する田中孝明さん。欄間(らんま)などの飾り彫りを発祥・本流とし、豪壮な特徴もある井波彫刻の技法を生かしながらも、柔らかく優しい表情の人形創作も手掛けています。このワークショップでは、木彫りのスプーンなどお土産にもなる暮らしの工芸品づくりを、井波彫刻の技法を伝えながら指導してくれます。


職人の業を間近で見られるだけでも貴重な体験だ。


「『BED AND CRAFT TATEGU-YA』のゲストの7割は外国の方。英語での対応は大変ですが、それもまた楽しいものです。そもそも井波は江戸中期から続く職人の街ですが、多くは県外出身者。私自身も広島県出身で学校を卒業してから井波で弟子入りしました」。

田舎は保守的、というイメージもありますが、職人の街はもともと新しい発想を持った人の受け入れには柔軟。だからこそ時代とともに伝統を紡いでいけたのでしょう。「伝統的な龍などを彫っても、『お前の作品は愛嬌があるな』なんて言われますよ(笑)」(田中さん)


体験では上の写真のような木のスプーンなどを作らせてもらえる。


形や発想は自由でOK。難しい工程は助けてもらえるので安心して参加できる。伝統の技法を教わりながら原木からオリジナルな発想で創る時間。それはただ物を作っている時間ではなく、井波という街の歴史や文化と一体となる時間。旅だからこその体験です。


ワークショップに込めた山川さんの思いは「街全体を宿泊施設orホテルに」。「施設にキッチンがないのは街に出てほしかったからです。ゲストハウスの建物内で完結するのではなく、街の飲食店に行っていただく。職人のみなさんに触れる。街全体がゲストハウスになればゲストも街の人もみんなが楽しくなりますから」(山川さん)


日本人でもなかなか訪れない場所に外国人客が注目したのには、そのコンセプトが魅力的だったという理由もあるのでしょう。

昔は、高山と金沢を結ぶ道として商家が軒を並べ大いににぎわった場所。往時のにぎわいを残してくれる建物も減り、「BED AND CRAFT TATEGU-YA」となった建具屋も、山川さんが手に入れなければ壊すということになっていました。


「それはもったいないなと思いました。趣がなくなるのはさびしいし、昔からある良い風景は残したかった。それがこの地を最終的に選んだ理由のひとつですね」(山川さん)。


意義深い拠点づくり。「でも、そんなかっこいいことを言っていますが……」と山川さん。「実際は、夫婦2人で仕事ができて、上海で出会った愛猫の“ちょんまげ”と一緒に住める条件を探していたら、ここしかなかった(笑)」。


山川夫妻にとっては単純に、自分たちらしい仕事と暮らしができる拠点として選んだ場所。上海出身、7歳のちょんまげは、さしずめ、日本語はわからないけど新しい土地に興味津々の転校生といったところでしょうか。


「スーパーがなくてもネット通販があるし、車で少し行けば北陸新幹線もある。田舎で暮らしたいわけじゃなくて、たまたまここが田舎だっただけなんです。たまたま好きな職人がいて、たまたまそこでゲストが喜んでくれて、ちょんまげもまあ、快適に暮らしているようですし。ハードルを下げるわけじゃないですけど、移住というものをあまり重たく考えると辛いだけじゃないですかね」。



カナダ人の映像作家が宿泊した際に、母国から大きな賞の受賞の一報が入り一緒に祝杯。日本の田舎で外国人ゲストにロードムービーのような出来事が起きる喜びも山川さんの言う「たまたま」から。でも、その「たまたま」の背景には、伝統をしなやかに紡いできた井波という職人が集まる街がありました。この街の日常は、訪れる人にとっては得難い非日常体験です。その喜びは、交流する井波の人々にとっての嬉しい非日常。山川さんと井波の出会い、そこから始まった暮らしが、この地を訪れる人々の素晴らしい体験と物語を生んでいきます。


(取材・文=岩瀬大二/撮影=片山よしお)


取材協力

最終更新日:2017年09月06日


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