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古い平屋に暮らすメリットと楽しみ(後編)

2017年10月13日

アチュー・ワークス

古い平屋に暮らすメリットと楽しみ(後編)

FLAT HOUSEに住む#3

古い平屋に暮らすメリットと楽しみ(後編)


前回「古い平屋に暮らすメリットと楽しみ(前編)」では、古い平屋=FLAT HOUSEの入居前のメリットについてお話した。続いて今回は入居後のお話を。費用や契約についてなど金銭的な話が多かった前回に対し、今回は平屋自体の家屋としてのよさや楽しさをたっぷりと解説したい。平屋に入居してからの6つのメリットを挙げてみた。

(1)庭がある

ほとんどのFLAT HOUSEには大なり小なり庭が付いている。特に1950~1960年代に建てられた米軍ハウスであれば、その広さはかなりなものになる。中には同サイズの家がもう一棟建つのではないかと思えるほどの広さのものも。また、外観を保つための道具を保管したり物干しなどのドメスティックな作業をしたりするための裏庭=バックヤードが米兵居住時からそのまま残っている物件もある。

掃除用具や庭道具、物置などはバックヤードで保管。裏庭とはいえ芝生などもきちんと刈りこまれている。

米国兵士が住んでいた米軍ハウスには庭に物干しが残っていたり。人通りの多い道路に面している場合などはなかなか重宝する。


当然そこでは庭先パーティーやBBQなど屋外レクリエーションが楽しめるが、洗濯物が思いきり干せたりペットや子供を安全に遊ばせられたりといった、集合住宅や昨今の建て売り戸建てではなかなかできない日常生活上のメリットも大きい。古い平屋に住むと、家の広さよりも庭があることの有用性に気付かされる。

洗濯物に青空。これがマッチするのがFLAT HOUSE。気兼ねなく思いっきり干せる。 

都心部では難しい火の使用も都下の平屋集落なら可能。そのかわりご近所さんと目が合ったら「ご一緒にいかが」とひと声かけるのがマナー。

(2)玄関までのアプローチがある

玄関ドアを開けるとすぐ道路、というのがほとんどの昨今の戸建て住宅。現在ではこのアプローチがすっかり住宅から失せてしまったが、FLAT HOUSEには家屋が小さくとも玄関ドアから門までのスパンがきちんと取られている物件が多い。

アプローチを歩く時間で「公私の意識スイッチ」を切り替え。たとえ敷地が狭くとも、こんな感じのレイアウトならば無理なく施せる。


一見さして必要のない空間と思われるかもしれないが、パブリックな場所とパーソナルな場所を繋ぐブリッジ部分でもあり、決してムダではない。「気分を切り替えるスペース」とも言われており、防犯上の役割も果たしている。


何よりアプローチがあることで道路から見たエクステリアの格がぐっと上がる。狭い敷地面積ゆえ、家の広さを優先してここを削ってしまう都市部住宅の住人たちはこの「外観の質」を軽んじているフシがあるが、古い平屋に住むとそのレゾンデートルの大きさを実感させられる。

芝庭の上に緩やかなアールを描いて玄関へと延びるアプローチが、道路からのエクステリアを美しく見せる。半世紀以上前に建てられた米軍ハウスには家が小さくとも当然のようにある。

(3)オリジナリティーあふれるインテリアが楽しめる

古い平屋には造り付け=ビルトインのインテリアがよく設えられている。シェルフであったりニッチであったり、ちょっとしたカウンターであったりと千差万別。玄関に靴を脱ぎ履きするためのベンチがあったりする米軍ハウスも見たことがある。

キッチンの木製キャビネットがもうアンティークのような味わい。配色やモールガラスが建築当時の空気を伝えてくれている。

バスルームに設えられた歯ブラシや化粧品などを入れるメディスンキャビネットもオリジナルのインテリア。幾度も塗り直されたようなテクスチャーがいい。上部のシーリングライトも素敵。


もちろんこれらはあらかじめ図面に引かれたものであろうが、時には大工がその場で機転を利かせて作られたのでは?と思えるようなものもあるから見ていて楽しい。また、照明器具も今では中々見られないようなデザインのものが付いていたりする。古い平屋物件を内覧するときや友人の住むFLAT HOUSEに行くときは、いったいどんな建具やインテリアに会えるかとわくわくする。

こちらは腰板。家具や靴による破損や汚れから壁を守るのが役割。米軍ハウスにはしばしば残っているが、古い家具ととてもマッチする。 

エントリー部分の造り付けシェルフは、電話を置くために設えたと拝察。抜かれた開口部上部が面取りされていて洒落ている。

ドア上に唐突に開けられた孔は空気を循環させるためのベンチレーション。すっかりトマソン化しているが、小物を飾ったりするのにちょうど良い。

年代物のコンセントパネル。大手電機メーカーのものだがロゴが古い。細かにレリーフが入っている凝ったデザイン。

海底から氷山を見上げたような面白いデザインのダウンライト。増築部分に付けられていたものなので半世紀は経っていないものの、すでにレトロ感が漂う。

(4)駐車スペースがある

逆にこれがないFLAT HOUSEを見つけるのは難しい。最低でも1台、物件によっては2台分駐車できるカーポート・ガレージが確保されているのが一般的なFLAT HOUSE。さらに都心部から離れればその台数は反比例して上がり、5台は軽く停められそうな広さを有する駐車スペースが付く物件なんかも出てくる。

もっともこの場合は前出の広い庭が兼ねるというケースが多いが、どちらにせよそんなスペースが家賃に含まれているというユメのような話が古い平屋にはある。

クルマと二輪車が置けるカーポート、そしてアプローチという贅沢なレイアウトもFLAT HOUSEにはよくある風景。特に米軍ハウスであればこれらは9割がた付属している。


首都圏では敷地内に停めることは到底不可能、月極パーキングが徒歩5分圏内に借りられれば御の字。その上月額3万以上、山手線内回りともなれば5万円以上なんていう高額を払わねばならない状況。しかしその視点を少しだけずらせば、それがまるまる貯金できてしまうという話。

都下から少し北に上がって埼玉県に入ればこんなに潤沢な駐車スペースがある物件も。庭も兼ねているものの、とにかく広い。詰めて停めれば10台はいけそうだ。 

九州のFLAT HOUSEは更にすごい。ガレージを自作してもまだ余る。しかも賃貸!

(5)周辺への気兼ねがいらない

昨今都市部のマンションやアパートなどの集合住宅では、小さくても定期的に鳴ったりする音に対して煩わしさを覚えるという、騒音ならぬ「煩音(はんおん)問題」が増加しているという。「二階の住人が帰宅後カギをテーブルに置く音が気になる」「下階の蛇口をひねるキュッという音が耳につく」「隣室の室内引き戸のレールのきしみ音で目が覚める」など、一見神経過敏から来る問題のように見える苦情が増えているというのだ。


ストレス社会ゆえのニュータイプのトラブルともいえそうだが、これらには「建物同士の過剰隣接」も少なからず関与していると思う。気分がやたら滅入ると訴えたあるマンション住まいの主婦が専門家にいろいろと調べさせたところ、向かいのマンションの屋上に設置された大型エアコンの室外機から出る低周波が原因だったという事例も聴いたことがある。


平屋には上下左右がないのでそのような問題とは無縁。また、隣家と一分の隙もないような都市部の超・狭小住宅のように建ぺい率ギリギリに建てられていないので、空間的なアローワンス(余裕)も充分にある。FLAT HOUSEでは金銭面だけでなく精神面でもゆとりある暮らしができる。

集落のFLAT HOUSEは、昭和中期の暮らしにはまだあった“余裕”を教えてくれている。「とにかく詰められるだけ詰め、できるだけ大きく建てる」という今日の企業的セオリーはここには見当たらない。

(6)近所関係が密になる

昔はお隣さんと醤油の貸し借りをしたものだ~なんていうご年配の昔話をしばしば耳にするが、FLAT HOUSEの集落ではそんな話も昔日の遺風ではない。現に筆者が三鷹市の平屋集落に住んでいた時分、長ネギやらニンニクやらを買い忘れて隣家から借りた経験がある(前者は庭で育てていたものだった)。もちろん後日買って返却したが、次第に同じものでなくてもよいという暗黙のルールが完成。また、来客などでたくさんこしらえた総菜はお裾分けする。そうすれば後日別のおかずが入って器が返って来るのである。そのうち留守のときに配達物を預かったり、来客に対応したりと相互扶助の幅は広がってゆく。これは防犯面においても悪いことではない。


そうこうしていると、時にどちらかの家で一緒に食事をしたり呑んだりということも日常化してくる。集落であればその輪も広がり、情報交換もそういう場で行われるようになる。ここまで関係が構築されると前項のような問題は先ず起こらない。もし「そういう関係が煩わしい」というのであれば、必ずしもしなくてもよい。集落内にはしない世帯もあった。しかし会えば挨拶は交わした。こういうことを一切合切しなくなり、互いが疑心暗鬼になって街中にビデオカメラを付けまくるのが今の“鉄筋高層住宅型”社会なのではないか。FLAT HOUSEでは近隣との信頼度は高く、会話も多い。

FLAT HOUSEに集まるときは飲食物持ち寄りの「B.Y.Oスタイル」。これにはドタンバ欠席や急遽参加にも対応可能という長所がある。お手製料理がたくさん食べられるのもメリット。


以上がFLAT HOUSEに住んだ上での楽しみや暮らしにおけるメリットである。先述したとおり、今編の6点では金銭的な話よりも家が住人に与える視覚的・精神的影響についての話がメインとなった。これらは現在の住宅において軽視されがちだが、ややもすれば金銭的なメリットよりも重要なのではないかと筆者は考えている。そしてこの他にもうひとつ、自分としては一番ではないかと思っている大きなメリットがあるのだが、これは不定期開催しているトークライブでのみお話ししているため、あしからず。


しかしこうして改めて長所を挙げてみると、現在の住宅はあまりに画一的で退屈極まりなく感じられる。「新しい」「高気密」という以外に何も取り柄がないようにさえ思える。前者はいずれ古くなるだろうし、後者は必ずしも身体に好影響ではないという専門家の研究事例もある。何より住んでいて「つまらなそう」である。しかし少なからずの日本人は、こういうものに一生の時間と稼ぐ金銭の大半を捧げているのだ。初期費用も固定費も低く、近隣とのコミュニケーションも庭もあって、ローン返済や高家賃に追われることなくゆったり暮らせる古い平屋=FLAT HOUSEは、まさにその正反対に位置するもの。あなたはどちらを選ぶだろうか。


アラタ・クールハンド arata coolhand

(イラストレーター/文筆家 東京出身)

ロゴタイプの制作からパッケージデザイン、広告、CDアートワーク、洋服の企画などを仕事とする。2009年と2012年に東京都下周辺の古い平屋ばかりを網羅した『FLAT HOUSE LIFE』を発刊し(2017年に『FLAT HOUSE LIFE1+2』として復刊)その後一冊一軒の平屋にフォーカスしたよりマニアックな『FLAT HOUSE style』をシリーズ化して自費出版。今夏には九州の平屋だけを集めた『FLAT HOUSE LIFE in Kyushu』をリリース。幼少期に山口県の外国人向け平屋住宅での生活を体験、その後東京都下の文化住宅や米軍ハウスでの暮らしを経て、現在は都下の文化住宅と九州の米軍ハウス2拠点を軸に活動する平屋フリーク。

最終更新日:2017年10月18日


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