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「gonma」に「春乃色食堂」に 富山県南砺市のリノベーショ...

2017年10月24日

アチュー・ワークス

「gonma」に「春乃色食堂」に 富山県南砺市のリノベーション

田舎暮らしで生まれる物語#2

「gonma」に「春乃色食堂」に 富山県南砺市のリノベーション

昔ながらの建築物の良さと、最新のインテリアを組み合わせた伝統+モダンな空間

戦国時代から続く名家の蔵を人が集まる場所に

富山県南砺市(なんとし)福光地区。ここは自然に囲まれた場所でありながら、同時にいにしえからの文化も色濃く残る場所です。富山県ですが、医王山(いおうぜん)という自然豊かな山の峠道を車で20分も走れば、石川県金沢市。歴史的に文化圏としては金沢、前田藩との結びつきも強く、商家や酒、麹、米菓子などの賑わいに思いを馳せられる街並みがあります。


「建物は古いかもしれませんが、その建物たちがいきいきと使われていれば、昔から続くこの街に新しい何かが生まれるような気がしたんです」というのは、この地でケータリンググループ「OCATTE」を主宰する中川裕子さん。もともと、地元の食材、伝統的な調理法などを生かした料理を研究・実践してきましたが、その延長線上で考えたのは「場」。そこで、築100年を超え、全く使われずに解体を待つばかりだった「蔵」に着目します。いや、解体といってもその費用も馬鹿にならず、朽ち果てるまでそのままになる可能性もあったというのが正しい状況でした。

代表の中川さんは、全国の地域活性化の取り組みについても研究中。各地に熱心に足を運ぶ。


「蔵自体は格安でしたけれど、改修費用はかなりの負担でした。それでも、それだけの価値はあると信じて…」(中川さん)

蔵の改修は「元Olive少女で渋谷系の音楽好き(笑)」という中川さんのセンスと、ケータリングを通じて得た「人が笑顔で集える空間づくり」の経験がミックスされ、そこに、地元南砺らしさを加味したものとなりました。


完成したスペースは、中川さんの料理を楽しみつつ、お酒を気軽に楽しめる、ワインバー的でもあり、カフェダイニング的でもあり、交流の場としても多目的に活用できる場。名前は、中川さんの家系の家紋から「gonma(ゴンマ)」と名付けられました。

「形にはこだわりませんでした。でも、地元のものを大切にしながら、地元の方がいろいろないいものと出会えたり、地元の再発見ができる。また外の方がここに来られて南砺のことを知っていただける。そこにはこだわりました」

家紋をいかしたロゴ。伝統と次代を組み合わせるという気持ちの表れ。

2階はコミュニティースペースやイベントして活用。蔵から見つかった物入れなどもインテリアとして存在感を醸す。


そのこだわりは細部にも。ワインは地元の信頼できる酒屋さんと、南砺好きの東京のワイン関係者のおすすめから中川さんがセレクト。ビールは地元のクラフトビール「城端(じょうはな)麦酒」を常備。南砺では手に入りにくい輸入食材もあれば、中川さんお得意の地元食材のおつまみも並びます。

また、この地伝統の麹と地元のジビエ文化を組み合わせたハムなど組み合わせのアイデアも豊富。毎週土曜日は、ゲスト的に、近隣の氷見市で人気のカレー店のメニューもラインアップしています。さらに、器やインテリアにも、地元作家の一点物を多数使用。例えば、世界遺産でもある五箇山で造られる和紙を使ったアイテムは、強さとデザイン性の高さで中川さんのお気に入りです。

クールな雰囲気のビールサーバー。世界のビールと地元のクラフトビールが楽しめる。


「でも、無理なく。本業のケータリングなどの活動をしっかりやりつつなので、店を開ける基本的な時間は水~土の20時~24時。頑張りが見えすぎるのって、来られる方もリラックスできないですものね」と中川さんは自然体。営業日以外でも様々なイベントを開催していますが、それも「やりたいものを」。ふらりと訪れる旅の人と地元の方の交流も自然にはじまる場。朽ち果てるのを待つばかりだった建物が、今や、笑顔が集まり情報を発信する場所になりました。

昔のままのスローな時間 変えずに使うからこその素敵なひととき

全面リノベに近い形の生かし方もあれば、あえて「そのまま」にすることで人々が集う場所もあります。「gonma」からほど近い場所にある食事処「春乃色食堂」。一見、日本映画の舞台、セット? と思えるようなノスタルジックなたたずまい。前田藩の米蔵だった建物を大正時代にリノベ。そのリノベから100年以上の時代を経て、今もその時代の浪漫を残しながら営業を続けています。

店の前では記念のポートレートを撮られる方も多いという「春乃色食堂」。


シンプルな中華そばがなんともこの場所の空気にあう。おでんは山菜やたけのこ、この地の名物である具沢山のがんもどき「まるやま」が名物。濃い目の出汁ながらきつさがない。


カウンターもテーブルもまさにノスタルジック。大正の空間に、昭和のしつらえ。メニューもシンプルで懐かしい中華そばやチャーハン、派手さはないけれど心と体にしみるおでんなど、なんともほっこり、しみじみ。古い空間とはいえ、太陽光が自然に入り込み、春乃色という名前通りでもあり、いつでも春の日和という趣きもあります。

自慢のおでんを取り分けてくれる田畠徹也さん


「インテリアなど特になにか意識してやっているわけではないんですが…」というのは三代目のお兄様とともにお店を切り盛りする田畠徹也さん。「せっかく昔からあるものですから大切にしていきたいとは思います」。自然体の人、空間と、こちらの料理は実によくあいます。傷んだように見える壁も愛おしく感じられるのは、長年、ここで我が家のように幸せなテーブルを囲んだ人たちの笑顔がそこにあるからなのかもしれません。

わが土地の歩みを空間に生かす、そのための地元の手工芸品

「gonma」の中川さんが大切にする地元の工芸品。インテリア、空間を考えた場合、やはりコンセプトにあったディティールまで考えるのは当然ともいえます。南砺は、木彫から現代ではプロ野球で使用されるバットの製造など木の工芸文化が息づいていますが、紙もまた自慢の工芸品。「gonma」で使われているのは、五箇山和紙です。土地柄、米が年貢として納められなかったため献上品としての和紙が発達。特徴は皮革と比べられるという強靭さで、洗濯をしても大丈夫とも言われています。


この伝統の紙工芸品と、山間の暮らしに惹かれ移住したのが石本泉(せん)さん。山口県出身で東京の武蔵野美術大学卒。除雪に追われる厳しい冬などもちろん楽しいことばかりではありませんが、それでもなお、ここだからこその喜びを感じながらの毎日。「五箇山和紙の里」に勤務しながら、東京のデザインユニットとのコラボによる独自ブランド「FIVE」を立ち上げ、五箇山和紙のすばらしさを発信。特徴である色合いや強靭さを生かし、ビビッドなカラーから伝統の模様のアレンジまで、洗練された発想とデザインスキルから生まれる五箇山和紙のステーショナリーや小物などは世界のバイヤーからも注目されるアイテムに。

もともと秘境好きだったという石本さん。この地の恵みを感じられるのは都会暮らしの経験があるからこそ、なのかもしれない。

レターセット、名刺入れ、タペストリー、ジュエリーボックスなど多彩なアイテム。中にはロンドンのアパレルショップでしか買えないという限定ものも。世界と田舎は意外と直接つながっている。


「秘境ともいえる場所だからこそのぼーっとできる時間や、コミュニケーションに、自然な食材、紙の原料があります。その恵まれたものを生かして、僕なりに五箇山和紙の良さを発信していきたいです」という石本さん。その発信は、地元でも、世界でも広がっています。


伝統的な工芸品も守るべきものを守りながら、現代にあった歩みを続けています。わが土地の歩みを空間にも生かすのなら、このような取り組みで作られたアイテムを――現代の職人たちの想いを場に取り入れることで「魂」を入れていくのも楽しいものでしょう。


(取材・文:岩瀬大二/撮影:片山よしお) 

最終更新日:2018年12月12日

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