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古い平屋 FLAT HOUSEの種類/米軍ハウス編

2017年12月12日

アチュー・ワークス

古い平屋 FLAT HOUSEの種類/米軍ハウス編

FLAT HOUSEに住む#5

古い平屋 FLAT HOUSEの種類/米軍ハウス編


ここまで平屋に住むメリットや定義など概念的なお話をして来たが、ここからは「FLAT HOUSE」そのものに話題を移したいと思う。ひとくちに「FLAT HOUSE」といってもいくつか種類があり、筆者は以下の6つに大別している。

【FLAT HOUSEの大別】
(1)米軍ハウス

(2)文化住宅

(3)プレハブ

(4)注文設計

(5)セルフビルド

(6)以上に該当しない平屋


今回は(1)の「米軍ハウス」について解説したい。

広くて洒脱。古家好きなら一度は住みたい米軍ハウス

広さもあって板張りの洋間だけで構成された間取りの洒脱さから、FLAT HOUSEの中でも一番人気の「米軍ハウス」。今や平屋フリークのみならず、全国の古家ファンの憧れの的ともなっている。「米軍ハウス」とは、戦後わが国に駐留した米軍兵士とその家族のために造られた木造平屋を指す俗称であり、正式名は「Dependents house」という。「DH住宅」とも呼ばれ、沖縄では「外人住宅」の俗称で認知されている。朝鮮戦争にはじまり、ベトナム戦争終結前まで全国の米軍基地周辺に一部を除いて日本人によって建てられた。大抵の場合は集落となって建てられ、旧日本陸軍の練兵場(現代々木公園)に作られたワシントンハイツに至っては、アメリカの街並をそのまま明治神宮横に移植したような様相だった。現在は老朽化や税金の問題などから取り壊しが進み激減、基地周辺の住宅地の中にわずかに点在している状態の“絶滅危惧種”のアンティーク住宅である。しかし昨今では個人レベルで再生する機運も高まり、ヴィンテージカーのように丁寧にレストアされて再利用されるケースも増えている。

比較的初期のものに多い下見板張りのハウス。半世紀以上もの間原形を留めているわけだから、木造の耐久性も手入れ次第のように思われる。腰窓のみの物件が多い中、バルコニーに出られる掃き出し窓のあるハウスはめずらしい。

最も多く見られる普及型のモルタル壁米軍ハウス。カラーリングもベージュ、サーモンピンク、スカイブルー、ライムグリーンなどの中間色が多い。大抵は掃き出し窓はなく腰窓のみ。庭やカーポートは標準装備。隣家や公道との境界は背の低いフェンスで区切られることが多く、中にはまったく仕切りを設けないハウスもある。

モルタルと下見板張りのハーフ&ハーフの外壁というレアなタイプ。先述の木製フェンスもオリジナルパーツとしてファンの間で珍重されるが、老朽化やシロアリ防止を理由につまらない総金属製のフェンスに交換されてしまうケースがもっぱら。刷新するなら同じ木製を設えてもらいたいものだ。樹の陰から覗く中央の出っ張った部室は玄関ポーチで、日本人に貸すようになってから靴を脱ぐスペースとして増築されたケースが多い。

破風(屋根の三角の部分。はふ)が二重になったダブル・ゲーブルのハウス。特に内部も部屋が二重になっているというようなことはなく、デザインの遊びだと思われる。不思議と福岡県ではこのタイプのハウスによく出会う。

おそらく土地の取り都合から、このような形に建てられたのではないかと考えられるL字型ハウス。筆者も同タイプに住んでいたことがあるため個人的には好みなのだが、潤沢に土地が要るためか残存数も少ない。現在の新築住宅にも見かける機会が少ないのはその所為だろうか。

2枚のドアがある長屋タイプ。当然内部も二世帯に仕切られているが、その分一棟のハウスより専有面積は少ない。そのサイズからおそらく単身の若い兵士が入っていたのではないかと思われる。一見昔の小学校のようにも見え、郷愁を誘う。

沖縄の外人住宅は、その殆どが平板な陸屋根、棟はコンクリートブロックで作られている。当時米軍が彼の地を直撃する台風を恐れて堅牢な材料を使ったようだが、おかげで夏は蓄熱し屋内は灼熱、冬は冷え切るという副作用に見舞われた。湿気も籠り易く、春先から除湿器を回す世帯もある。雨戸の戸袋のように見えるが後付けだろうか。周囲のブロック塀の丸穴が独特だ。

広い庭を有する宜野湾市の高台に建つ外人住宅。米軍ハウスというより裕福な人が暮らす昭和モダン住宅のようなルックス。大きく半円状になった出入口のタタキ部分が独特である。おそらく本土のハウスと同じく、建てたオーナーによって細かな意匠が違うのだろう。


以上が米軍ハウスである。
時代や場所によって仕様も異なりタイプもさまざまで、大量供給された割に全体で見たときの統一感はあまり無いというのも面白い部分である。これらは日本が他国の占領下にあった「歴史の証人」でもあることから、国なり自治体なりが費用を捻出して保存することが望ましいと考えるが、そういった話が一向にその俎上に載ることがない。先述したように昨今は個人の努力によって保全が以前よりは進んでいるものの、依然として解体され続けている希有種の「FLAT HOUSE」である。なにしろたっぷり取った敷地に建っているため、一棟取り壊すと2棟以上の新築戸建てが建ってしまう。そのためデベロッパーのターゲットになりやすく、解体の憂き目に遭う可能性が最も高い「FLAT HOUSE」でもある。


今後は減りこそすれ増加することはまずないので、一度は住んでみたいという人は今すぐにでも物件探しに出かけることをお勧めする。解体のピッチも去ることながら、賃料も年々上昇傾向にあるので速やかな行動が肝要。なにより住みたい人が動くことで「歴史の証人」が一棟でも救われるかもしれないのだから。


次回は「文化住宅」について解説したいと思う。こちらも乞うご期待!


アラタ・クールハンド arata coolhand

(イラストレーター/文筆家 東京出身)

ロゴタイプの制作からパッケージデザイン、広告、CDアートワーク、洋服の企画などを仕事とする。2009年と2012年に東京都下周辺の古い平屋ばかりを網羅した『FLAT HOUSE LIFE』を発刊し(2017年に『FLAT HOUSE LIFE1+2』として復刊)その後一冊一軒の平屋にフォーカスしたよりマニアックな『FLAT HOUSE style』をシリーズ化して自費出版。今夏には九州の平屋だけを集めた『FLAT HOUSE LIFE in Kyushu』をリリース。幼少期に山口県の外国人向け平屋住宅での生活を体験、その後東京都下の文化住宅や米軍ハウスでの暮らしを経て、現在は都下の文化住宅と九州の米軍ハウス2拠点を軸に活動する平屋フリーク。

最終更新日:2017年12月12日


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