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南砺市に見る、移住の前に楽しく調べたい「風土」と「制度」

2018年01月30日

アチュー・ワークス

南砺市に見る、移住の前に楽しく調べたい「風土」と「制度」

田舎暮らしで生まれる物語#4

南砺市に見る、移住の前に楽しく調べたい「風土」と「制度」

南砺には面白い人を必要とする文化があります

前回の「古民家実例。500万円で入手できる400坪越え物件」で紹介した古民家バンクなど、様々な移住支援を行っている南砺市。いざ移住を決めるというときに、行政のサポートや、その地域が移住者に対してどのような思いを持っているかというのはとても大切な要素。都市生活者としては、田舎という場所に対して、排他的なのではないのかというイメージもあるでしょう。そういう面があることは否めませんが、南砺市の田中幹夫市長は「田舎側も新しい人が入ってこないと立ち行かない時代ですし、実際、南砺でも移住される方、特に若い世代の方が移住されたことで動き出したことがたくさんあります」と言います。


情熱を軽快な言葉に変えて。田中幹夫市長は、全国各地の「田舎」の首長とも積極的に連携し課題に取り組む。 


南砺市の中でも、特に田舎の景色と風習を残す利賀(とが)エリアでは、すでに20年ほど前に「青年山村協力隊」という取り組みを制度化。入村希望者に一定期間、仕事と住居を斡旋し、実際に生活を体験してもらえるというこの制度をつくったときは、受け入れ側にとってもチャレンジでした。「来られる方も不安だと思いますが、受け入れる側もちゃんと受け入れられるかは不安なんです」(田中市長)これがうまくいって、過疎に悩む利賀に新しい住人が定着したことで、南砺の他のエリアにも波及。世界遺産の五箇山・相倉(あいのくら)の合掌造り集落でも、人手が足りない、活気がない、などの理由でとりやめていた伝統行事が、新しいご家族、子供たちが移住したことで復活。さらに、こうして戻ってきた活気によって、集落を出ていた若い人、すでに集落の外で家族を持った人も子供たちとともに帰ってきました。定住者を受け入れることが、自分たちの文化と活気を取り戻すことにつながることを、南砺の人たちも行政も経験し、この経験がさらに充実した制度や受け入れ態勢へと繋がっていったのです。


「空き家だった1軒に、夜、光が灯る。これでいろいろなことが始まっていくんです」(田中市長)


世界遺産の五箇山・相倉(あいのくら)の合掌造り集落。


現在、南砺市で行われている定住に向けての制度の中には、1人1泊1000円で最長30泊31日まで利用できる「なんとに住んでみられ体験ハウス」、定住・移転時にかかる引越費用の補助や、新築・中古、賃貸にかかわらず奨励金や補助金なども手厚いものがあり、また、定住後の子育て、出産についてもフォローは続きます。特に出会いから結婚、妊娠、出産については、行政と地域が手を組んだ、補助金、お祝い金、医療に関するサポートなど、特に女性に対してのきめ細かいサービスや制度があり、一緒に育むという気持ちがここにも表れています。



体験ハウスは山間、里山、街の3パターンから選べる。家具、ひととおりの電化製品、ふとんなどは用意されている。 


職住近接、豊かな暮らしができる家、子育ての安心感…定住に求めるものとはいろいろありますが、田中市長は「これらが揃っていることは前提ですが、それを支えるのはやはりその土地の文化ではないかと思います」と言います。「もともと南砺には、どこか変わった人を受け入れたいという文化があるんです。例えば『土徳』という…これは目に見えないこの土地の力なのですが…」


土徳というのはとても簡単に表すと、「何世代、何世代にもわたって積み重ねられたその土地の人々の暮らしが、その土地の風土や力になる」という意味です。もちろんその背景には地形や気候というものもあるのでしょうが、昔から浄土真宗がしっかり根付き、その「あらゆるものに感謝して生きていく」という教えが何世代も息づいている南砺だからこそ、この土徳という言葉になったのでしょう。


20世紀の美術を代表する世界的巨匠とも言われる版画家・棟方志功は、まだその世界的評価を得る前の第二次世界大戦中、疎開で南砺・福光に移り住み、約7年間、この地で活動をしていました。活動といってもこの時期は、そのキャリアとしては不遇といっても過言ではないものでした。しかし、ここで棟方は福光に息づいていた浄土真宗、これをベースとした南砺の暮らしの中で、それ以降大きく花開く作風、その根源的なものと出会います。偉大な作家の作風を変え、大きく成長させたのが、この土地の持つ土徳。それは普段の生活の中にもあったようです。


「棟方は自分が描いた絵と米や食事を交換して暮らしていました。絵をもらったほうは棟方のことはよく知りませんし、その絵の価値もわからないんです。でも、なんだか面白いやつがいて、変な絵を描いている。じゃあ、いいかと(笑)。こういうことを面白がれる人たち、面白い人を受け入れられる文化。これは富山全体にもある『たびの人』、つまり、楽しみを持ってきてくれる人が、こちら側も必要であるという考え方にも通じるんですね」(田中市長)


#1でも紹介した「BED AND CRAFT TATEGU-YA」の山川夫妻も、南砺にとっては大切な「たびの人」。地域は外の世界のユニークな人材で活性化していく。 

#1建具屋をリノベ!感動と癒しの古民家ゲストハウス【富山編】


南砺にはアニメの世界で著名な会社が進出。これも市側は積極的に受け入れ、現在ではクリエイターたちが集まれる施設や制度の整備も進めています。田舎らしい風景や風土の中で生まれていく新しいクリエーティブは、現代によみがえった棟方志功の物語。


移住支援を推進する「南砺で暮らしません課」はショッピングセンターの2階にある。庁舎や役場という堅苦しく感じてしまう場所ではないのがいい。


単に最近の流行的なもので他の場所の制度をまねするのではなく、住人たちが長く培ってきた文化、風土という背景から生まれた制度。受け入れのための行政の取り組み、そこにはその地域の考え方がにじみ出てくるようです。田舎暮らし、地方への定住を考える際には、制度そのものだけではなく、その土地に息づく文化、歴史、そこから生まれた生活風習や外からくる人への感情などもしっかり把握した方がいいでしょう。旅や体験ハウスなども活用しながらの準備。それもまた、楽しいステップです。


(取材・文:岩瀬大二/撮影:片山よしお)


取材協力

最終更新日:2018年01月30日


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