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超・低家賃! 大正時代の時計店を自宅兼コーヒー屋&書店に(1...

2019年10月29日

アチュー・ワークス

超・低家賃! 大正時代の時計店を自宅兼コーヒー屋&書店に(1)

FLAT HOUSEに住む#27

超・低家賃! 大正時代の時計店を自宅兼コーヒー屋&書店に(1)

自宅を店舗に兼ねたくらし方/ホームショップ・スタイル。ここまではその探し方や種類、既に開店している物件の例などを見て来た。今回はそのケーススタディ。ある物件を見つけてオーナーにホームショップ用に賃貸を提案するところから、実際に入居者がホームショップ開店に漕ぎ付けるまでの足掛け4年を


1.物件との出会いとオーナーへの提案

2.内覧と入居者探し

3.清掃と施工

4.開店準備とオープン


の4節に分けて一緒に見てゆこうと思う。

ドラマは筆者が福岡と東京の二拠点生活を始めた際、味わいある外観の古びたモルタル造りの建物に魅かれるところから始まる。

油彩画のような家

福岡に引っ越して来た2013年は自転車でよく町内を散策した。新しく住む町では必ず時間を割く筆者のルーティンだが、かつて米軍基地がありその特需で賑わったこの街には、古びた景色が東京の街よりもまだ色濃く残っている。かつてのベースタウンも、今やビーチリゾートのような海沿いのベッドタウンへと変貌したが、駅前にはコンビニすらなく目抜き通りも日中だというのにひと気がない。駅すぐ横の酒屋を除けば、開いているのかさえ疑わしい小さな個人商店が飛び石状に散見できる程度。そんな枯れた街を、いいフラットハウスはないものかと海方面に向かって自転車を走らせていたところ、黄色い細長な建物が眼に飛び込んできた。その大きさやフォルムから店舗付き住宅と推測、しかし錆び付いたシャッターから既に閉まって相当な時間が経っているということが見てとれた。そう遠くない将来取り壊されるのだろうという空気が建物からにじみ出ており、ところどころ崩れた外壁が真夏の青空に映え、それがまた格別。奥側に2階がありフラットハウスではなかったが、何だかとても気に入ってしまった。


屋根瓦が落ちていたりシャッターも錆び付いていたりと経年劣化が著しい。解体するのはカンタンだが、このマチエールは時間を経ないと到底出せない味わいだ

西側はアサガオの群生に覆われていてまた絵になる。油彩画家なら筆を取りたくなるだろう

「急ぐ」ことが救う

数ヶ月もすると、目ぼしい町内の古い木造家屋が取り壊され出すのをしばしば見かけるようになった。跡には今や全国で見かける黒っぽい樹脂製サイディング住宅に取って代わられた。あの黄色いモルタル店舗もそろそろ手がかけられるのではないかという懸念が強まる。大至急オーナーに会って待ったをかけなくてはという切迫感に襲われた。町内会の活動を盛んにしているフラットハウザー仲間に相談したところ、すぐに探し出してくれた。この素早き連携プレーが古家の救出に繋がるのである。躊躇したりしている猶予はない。

まずはそのよさを伝える

現オーナーのOさんは物件の真裏に住んでおり、幸いにもすぐ面会が叶った。ガッチリした体格のとても感じの良い中年男性で、やはり近々の解体を考えていたのだと聴かされた。古家保護の場合早急にすべきことは、この建物の良さと価値をオーナーに伝えること。そして残すことのメリット。今や新築よりも古い建物にこそバリューがあるということを例を挙げて説く。まさか崩れかけた家をここまで褒められるとは思ってもみなかったのだろう、Oさんも最初はあっけにとられた様子だった。しかしその後、自分の幼少時代の家や街周辺の様子など家にまつわる興味深いエピソードをたくさん話し始めた。これはできれば壊したくないと思っているオーナーに見られる反応。祖父の代からの眼鏡と時計を扱う店だったことに始まり、建物は増築が重ねられていて母屋は築から100年近く経っていること、隣には映画館があったこと、店前で米兵の集団乱闘があったことなどなど思い出話が一瀉千里。「生き証人」の説話に今度はこちらが聴き入ってしまった。この古家のオーナーならではの思い出話は、家だけでなく地域の歴史も学べるため本当に貴重な時間だ。


通りからはすっかり建物全容が見渡せてしまう。屋内に入ってみたい衝動に駆られる

海風が直撃するせいか、窓ガラスも一部落ちるなど二階部分のヤレ具合が激しい。こんなふうに瀕死状態で家が建っているというのも九州ではそうめずらしい光景ではない

使い方のプレゼンテーション

そして次にすることは、建物をどのようにして使うかの提案。フラットハウスの場合筆者がよくするのは、オーナーは金銭を出さない代わり家賃を破格に設定し、リノベートは入居者に自由にさせる。そして決める前にはじっくりミーティングの機会を設けるというもの。今回はホームショップなので、これにどんな入居者でどんな職種を入れるかという提案も加えなくてはならない。「それはそうと、いったい何に使われるの?」ということがオーナーにとっては一番気になるところだからだ。

青写真は具体的に

この街にはどこの街にもあるレストできる場所=飲食店が極端に少ない。駅近くに唯一あった喫茶店は閉店、物件から空き地を隔てて隣にあった食堂も経営者の高齢化からたたんだばかり。今となっては駅前の寿司店と海沿いにカフェがあるのみで、あとは駅から徒歩20分ほどの隣町のコンビニのイートインスペースがかろうじて担っているといった状態。仲間ともよく話していた「先ず誘致すべきは飲食店」という話をオーナーに伝えると意図を汲んでくれ、では検討しましょうという言葉をもらって会談は終了。このように具体的なプレゼンテーションをしないと空き家が開くことはない、というのはこれまでの経験から実証済み。少なからず手応えはあった。


駅前の目抜き通り。平日の正午でこの人通り

駅から隣町へと続くバス通りも静まり返る

ときに粘り強く待つ

初期費用が一般の物件よりもかかるため、賃料は最初の数年間を無料か1万円程度に~という提案が引っかかったのか、その後連絡がぷっつりと立ち消えてしまう。こういう物件の場合いろいろな事由が考えられるため、あまりせっ突き過ぎると良い結果を生まない。話し合いも持ったので建物が黙って解体されることはなかろうと踏み、とりあえず先方のリアクションを待つことにした。半年が経ち1年が経過しても音沙汰なし。さすがにこれは遅過ぎると思い、こちらから連絡をしようと思い立った矢先「貸してもいい」という連絡が入った。どうやら早期の解体を希望していた親族との調整に手間取っていたらしく、Oさん自らが説得して回ってくれていたそう。もう感激の一言、ここまで動いてくれるオーナーは滅多にいない。ここまでの時間としたことが報われた瞬間だ。


解体は食い止めた。ここからが再生古家ホームショップへの本格的なスタートである。次回は、長期空き家だったOさんの時計店の屋内がどうなっているのか、そしてどんな入居者が現れるのかが明らかに。乞うご期待! 


歩けばネコたちの無防備な姿が散見できるユルき街


アラタ・クールハンド arata coolhand

(イラストレーター/文筆家 東京出身)

ロゴタイプの制作からパッケージデザイン、広告、CDアートワーク、洋服の企画などを仕事とする。2009年と2012年に東京都下周辺の古い平屋ばかりを網羅した『FLAT HOUSE LIFE』を発刊し(2017年に『FLAT HOUSE LIFE1+2』として復刊)その後一冊一軒の平屋にフォーカスしたよりマニアックな『FLAT HOUSE style』をシリーズ化して自費出版。17年には九州の平屋だけを集めた『FLAT HOUSE LIFE in Kyushu』をリリース。幼少期に山口県の外国人向け平屋住宅での生活を体験、その後東京都下の文化住宅や米軍ハウスでの暮らしを経て、現在は都下の文化住宅と九州の米軍ハウス2拠点を軸に活動する平屋フリーク。 

最終更新日:2020年01月27日

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