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動く平屋!? これからはマイホームよりもマイキャンパー

2020年02月18日

アチュー・ワークス

動く平屋!? これからはマイホームよりもマイキャンパー

FLAT HOUSEに住む#31

動く平屋!? これからはマイホームよりもマイキャンパー

動く平屋!? これからはマイホームよりもマイキャンパー

都市のひ弱さが露呈した大震災

2011年の震災では、都市機能やそのインフラの脆弱さがすっかり露呈した。水道やエレベーターなどがすべて停まってしまった高層マンションの住人が、ポリタンクを両手に毎日修行僧のように何度も数十階分の階段を上り下りさせられていることを嘆く様子や、タワービルの利用者が長期に渡って続くめまいを訴えたりしているニュース映像は、「過密都市に暮らすことはどういうことと背中合わせか」という現実を身近に伝えてくれるものだった。当時都心から離れた東京都下のフラットハウスに住んでいた筆者は幸いそれらのような目には遭わなかったものの、23区内では行われなかった計画停電や買い占めが起こった食料・燃料の確保など未経験の対応を強いられて閉口したことも事実。大都市圏に暮らす限り、程度の差はあれ未想定の「通常生活の中断」を突如として無差別に余儀なくされるのだということをあの時思い知らされた。


11年3月東京都下で実施された「計画停電」の際に我が家隣のマンション屋上から撮影。週に数日輪番で数時間町内の電気が停まった。向こう側のマンションにはあかりが灯っている

家を所有することのリスク

その中で感じたのは、「1カ所で暮らすことの危うさ」と「災害時に動けることの大切さ」の2つだった。大きな自然災害に見舞われたとき、最低限の生活私財と共に安全な場所へ移動できることはかなり有効だと痛感した。フリーランスという職種ゆえ住宅購入のような高額ローンが組みにくい筆者は、むしろ「住まいは賃貸で」というポリシーで暮らしていたのだが、幸か不幸かこういう事態においては優位性を発揮。即「動ける生活」へと考えをシフトするに至った。


都下のフラットハウスにはガレージやカーポートが当然のように付いているため、自家用車を持てていたことも幸い。それを使えば自力である程度の場所までは避難できるだろうということもすぐに発想できた。クルマに食料や着替えなどを積み込み、災害時には暮らせなくなった自宅から一旦離れるという手段がとれる。水道や電気が止まってしまっているのなら、それらが確保できる場所へ動けば良いのだ。そうすれば心身は相当ラクになるだろう。むしろ持ち家があると動きが制限され、資産であるそれらを守ることも考えなくてはならない。急遽足手まといな存在となってしまうのだ。マイホームはなくマイカーはあるということが、こういう事態下では案外有効なのだなと感じた。


計画停電中のアトリエにて。ランタンを灯し、カセットボンベ式ヒーターで暖を取りながら仕事や食事をした

これからは車中泊ができるクルマがいい

当時屋根が開閉する仏製のコンパクトカーに乗っていた筆者は、このサイズのクルマに生活私材を積んで長期間暮らすのは困難と判断し、買い替えを決めた。選車にあたってはワゴンやワンボックスなどが先ず候補に挙がったが、やはり長期間その中で快適に寝られる車両が良いだろうということになり、クルマで永年サーフトリップを続けている写真家の友人Kさんのアドバイスから「キャンパー」にフォーカスした。


我が国ではキャンピングカーという方が通りが良いだろうキャンプ仕様のクルマは、欧米諸国ではキャンパーと呼ばれ庶民に親しまれている。後部座席を1列外すとセミダブルほどのベッドが完成して寝室仕様になり、シンクやガスレンジ、小型冷蔵庫やエアコンも完備。ハッチバックを開けると小さなシャワーも付いている。「車中泊もできる」ではなく、完全に「車内で生活する」ことに特化したクルマだ。


カーテンを閉めれば寝台列車のような完全個室となる。寝心地も抜群、朝どこで寝ているかさえ判らなくなることしばしば

サイドボードを開けるとシンクと2口ガスコンロが出現。下部には冷蔵庫が装備されている


全国津々浦々のサーフポイントを巡ってサーフィン旅行を楽しんでいるKさんは、仕事に活用したり家族旅行もこれ1台でするという正にベテランのキャンパー乗り。キャンピングというとバンクがせり上がった背の高い大きな車両を想像する人もいるかもしれないが、日常使いできるタイプのものがありKさんが乗っていたフォルクスワーゲンの「ヴァナゴン」はまさにそのタイプだった。一見小ぶりなフルサイズバンだが、2人以上で泊まるときは天井部分がポップアップしてベッドが増設されるというシステマチックなこの車両、ネットで物色したところ価格も手頃でタマ数も多いことが判明。Kさんに倣ってこれに乗り換えることに決めた。


コンソールにはさまざまなサイズのものが収納できるよう工夫されている

リアに付いている簡易シャワー。BBQをした後の器具や靴に付いた泥などを落とすのに重宝する

道の駅で宿泊。左隣に停まっている典型的なバンク付きキャンピングカーと比較すると普通車両に見える

購入は迷うべからず

中古車サイトで「ユーロバン」というヴァナゴンのアメリカ仕様車を見つけた。サイズが若干大き目で内装が違うという以外大きな相違のない車両ということが判ったが、出品業者が遠方だったこととこの車種にしては100万を切るという破格だったことからKさんに助言をあおいだ。いろいろな角度から分析してもらった結果サインは「GO」。電話で問い合わせてみたところ対応も良かったので、そのまま手付けを打つことにした。


聞けば震災後中古キャンパーの売れ行きが好調らしく、入庫するとすぐ売れてしまうのだという。加えてリタイアした年代層がキャンパーで全国を巡るというのがブームで、それがまた品薄に拍車をかけているようだとのこと。現に、その後この価格で同タイプの車両を見ることはついぞなかった。今では走行距離が多い車両をたまに見かける程度で、それもそこそこ高価格。コンディションの良い車両となれば見つけることさえ困難になっている。選び過ぎたり躊躇することはことキャンパーに於いては厳禁、今やある程度のコンディションであれば見つけたら即断が肝要のようだ。

経済性だけでは語れない

大きな額の衝動買いとなったが、その結論は「大正解」。災害時ばかりでなく、日常での使用用途も広がった。トークイベントの遠征では、着替えと器材を積んでしまえば時間を選ばない手前勝手なタイミングで出発でき、ホテルの予約なども不要。折りたたみ自転車を積んで連泊取材にも向える。古平屋の改修ではこれを現場に着けて宿所化させることで往復の移動時間が省けたし、東京から九州への引っ越しでも大活躍してくれた。大型家具の運搬や大人数での移動も可能。運転中疲れたら即仮眠が取れるという点もジツにありがたい。7年経った現在すっかり元が取れた感だが、何もこのクルマのよさはコストパフォーマンスといった金銭面の話だけではない(事実、車重がある故一般道での燃費はよろしくない)。いつでも移動ができるという精神的安堵感といったメンタルな部分への貢献が一番大きいように感じている。

PCを携行すればオフィスにもなる。好きなロケーションで泊まりがけの仕事が可能

街中へ呑みに行くときはコインパーキングに停めホテルとして使用

「家よりキャンパー」の時代が来る!?

過密都市で狭小住宅を買うのなら、いっそ駐車できるだけの地面を確保しキャンパーで暮らす方が良いのではないかと、震災以降本気で考えるようになった。家を買うくらいの額が用意できるならば、かなり良いキャンパーや更に快適なトレーラーハウスだって購入できる。震災のような非常時には家族や家財と共に移動でき、平常時にはノープラン旅行ができるキャンパーは、自然災害が頻発する昨今最も理に適った買い物ではないか。賃貸住宅に住みながらキャンパーをセカンドハウス、あるいは緊急脱出装置として併用するという新しいライフスタイルだ。


荷物をみっしり詰め込んでも大丈夫。天井をポップアップさせれば上で就寝できる


「話としては面白いが、現実として考えづらい」という声も聴こえてきそうだが、今後20年の間に再び大きな地震が太平洋側の都市を襲うという予測がほぼ確実視されている。台風や豪雨も季節によらなくなり川の氾濫や地滑りが都市部でも頻発、1カ所で暮らし続けることの難しさが昨今浮き彫りになっている。16年の熊本で起きた震災では家屋が崩壊し、普通乗用車での車中泊を余儀なくされている人々の避難生活が相当厳しそうに映った。あの時筆者は、ああ~キッチンやエアコン完備のキャンパーだったら…と思いつつ見ていたが、事態が終息したあとには同様のことを感じた被災者も少なくなかったのではないだろうか。


一見現実と乖離していると思われるような暮らし方も、非常時には「正解」になったりする。キャンパーのようなモビリティーハウスを持つことが、令和時代のライフスタイルの主流になるかもしれない。


アラタ・クールハンド arata coolhand

(イラストレーター/文筆家 東京出身)

ロゴタイプの制作からパッケージデザイン、広告、CDアートワーク、洋服の企画などを仕事とする。2009年と2012年に東京都下周辺の古い平屋ばかりを網羅した『FLAT HOUSE LIFE』を発刊し(2017年に『FLAT HOUSE LIFE1+2』として復刊)その後一冊一軒の平屋にフォーカスしたよりマニアックな『FLAT HOUSE style』をシリーズ化して自費出版。17年には九州の平屋だけを集めた『FLAT HOUSE LIFE in Kyushu』をリリース。幼少期に山口県の外国人向け平屋住宅での生活を体験、その後東京都下の文化住宅や米軍ハウスでの暮らしを経て、現在は都下の文化住宅と九州の米軍ハウス2拠点を軸に活動する平屋フリーク。

最終更新日:2020年02月18日

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