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超・低家賃のホームショップ!大正時代の時計店を自宅兼コーヒー...

2020年03月12日

アチュー・ワークス

超・低家賃のホームショップ!大正時代の時計店を自宅兼コーヒー屋&書店に(4)

FLAT HOUSEに住む#30

超・低家賃のホームショップ!大正時代の時計店を自宅兼コーヒー屋&書店に(4)

雇われるのではなく、住宅に店舗を兼ね自らのアイデアで商いをして暮らす「ホームショップ・スタイル」。

これまではそのメリットや種類、物件の探し方・借り方などを見て来た。#25からはそのケーススタディ。

大正時代に建てられた時計店を使用して、実際にホームショップ開店に漕ぎ付けるまでの足掛け4年を見てゆく。


このシリーズは

1.物件との出会いとオーナーへの提案

2.内覧と入居者探し

3.清掃と施工

4.開店準備とオープン


の4節に分けて見てゆく。

今回はいよいよ最終章「4.開店準備とオープン 」のエピソード。


2013年福岡の米軍ハウスに転居して見つけた黄色い古家。元は時計店、およそ築100年の店舗付き住宅と判明。

取り壊される前にと知人を介してオーナーOさんに直談判、1年後見事に低賃料で貸してもらえることとなり、関東から福岡へ移住希望のN夫妻が内覧してめでたく入居が決まった。


しかし転居後N夫妻が農業をしたいと辞退。その後、小倉で小さな書店を営んでいたKさんと、パートナーのYくんが入居することになり、残された荷物の片付けや処分などを経ていよいよ改修工事へ、というのが前回まで。


前回の内容はこちら:超・低家賃ホームショップ!大正時代の時計店を自宅兼コーヒー屋&書店に(3)

疾風怒濤の開店前日

10月開店を目指して片付けを始め約3ヶ月経った9月末、いよいよ準備も大詰めに。しかしまだまだ工事中然とする状態から、開店は当然遅れるだろうと誰もが思っていた。

が、「予定通りオープンします!」と宣言する2人に周囲は瞠目、大丈夫だろうか…と心配した。しかしこの後周囲は更に驚くこととなる。


ご両親らも遠方から駆けつけて泊りがけで応援。エントランス上部には右始まりで書かれた旧時計店の看板跡がうっすら見える。

奥側が書店となる部分。概ね出来上がってきているものの、開店前日夕方の段階で商品ディスプレイも什器レイアウトも中途。準備の大変さが伝わって来る

完成したカフェカウンターは古材で拵えた。残した行灯型視力表が良いインテリアになっている

比較的早い段階で出来上がった様子のキッチンはあとは片付けを残すのみといった感じに

とっぷりと陽が暮れて遠方から通う大工さんも切り上げてゆく。いよいよ経営者たちだけで仕上げねばならない時間帯へと突入

「自分も近い将来界隈で飲食店を出したい」という隣町の食堂主人の甥っ子も助っ人参戦

ホームショップであっても締め切りは守る

とにかく開店前の追い込みは経験した者しか判らない嵐のような時間だろう。#26で語った東京の「ひとひとて」の時もそうだったが、見ていてその切迫感や焦燥感がこちらにもひしひし伝わってくる。もちろん筆者とて店舗開店は未経験だが、長い間常に締め切りが付きまとう仕事を生業としてきているので、多少は予測ができる。


本来ホームショップはユルい営業でOKと思っているが、こういう部分でしっかりと締め切りを守るという“けじめ”も一方で大切だ。

お金がかからない部分には余裕を持っても良いかもしれないが、計画通りに動くことで抑えられる費用もある。また、こういう最初の場面で踏ん張れるか否かは以降の運営にも少なからず影響してくることだろう。 


店の完成を見守るように上がった月がぽっかりと

遂にオープン!

結局夫妻は貫徹で店を仕上げ、見事宣言どおり10月初日にオープンさせた。これには周囲も大感心、驚きを隠せなかった。

Yくんのカフェの店舗名は「Sleep Coffee and Roaster」に決まった。そしてKさんの書店は小倉時代の「ナツメ書店」をそのまま踏襲することに。


・店舗部分

築年数およそ1世紀を経た建物の貫禄と味わい深さが、見事新しい世代の感覚と融合。この景色を見ることが古家再生に関わることの醍醐味である。これまでの苦労がまったく苦でなくなる瞬間だ。


エントランスを入るとすぐに待つSleep Coffee and Roasterのカウンター。 右奥の居室を改修した部分にはナツメ書店というレイアウト

床を外したため天井がかなり高い書店部分。庭を隔てる正面の4枚引き戸や、 ガラスがはまる欄間が古家の雰囲気を色濃く残している

入って右手のカウンター席はショーウインドウだった部分。 通りが眺められる人気の席だ

書店からエントランス方面を臨んだ景色。 開口部が多いためかなり明るい。 北側の壁の造りつけた棚にも無事書籍が鎮座

真っ暗だった台所は明るいカフェの厨房へと変身。床のCF(クッションフロア)はモザイクパターンのタイル張りにし、ビルトインの蛍光灯照明は活かした。

エクステリアは大きくいじらず。もちろん予算の問題もあろうが、オリジナルバージョンの踏襲は古家ファンにとっては嬉しき選択

当初のメニューはシンプルで、食べ物はパンのみ。しかし店主が独学で研究し試行錯誤して焼いたもので、人気のメニューだった。現在はランチも提供している


・住居部分

店舗と違い大幅なリニューアルを行わなかった居室部分は、傷んだ天井などを除いて基本清掃と再塗装に委ねられた。

以前にも述べた古家再生の基本「きめ細かな清掃と修繕」がきっちりと遂行されている。住居部分は蔑ろにされがちだが、ジツは店舗以上に大切な部分だ。ここで身体を休め気力を養いアイデアを生まねばならない。「寝るだけ」の場所であってはならないのだ。


店舗から階段を上がって右奥の4畳半は寝室に。 浴室と同様のコバルトブルーと白のコンビがレトロチックなトーンを醸している。 窓側の2畳部屋は多目的に使用できる部屋としてすっきり片付けた。借景を遮る物を置かないレイアウトも手伝い、とてもコージーなスペースになっている

1階の1番奥に位置する浴室には舟形バスタブを入れたが、それ以外はオリジナルの意匠を残している。入っていて楽しそうな浴室だ

疲労困憊なはずなのに笑顔が自然なYくんとK さん。もちろん前途は多難であるだろうが、洋々の方が勝るように見える


古い物を壊したり廃棄したりすることが「再開発」「断捨離」などに言い換えられ、あたかも「善行」かのように表現されることの多い昨今。しかし思い出してみれば、ちょっと前まで「モノは大切に使う」という心得がわれわれには当前としてあったはず。

世紀をまたいだあたりからこの「モノを大切に使う」は、経済効果やら市場原理やらといった新語に相反する邪魔な概念と見られたのか、当たり障りなく隅に追いやられている印象だ。


低賃料の古家をキレイにリペアし自宅と店舗を兼ねるホームショップスタイルは、現在多くの人々が目指す「優良企業に入ってたくさん稼ぎ、新しいものを買う。それを生涯続ける」という生き方と比べればまだまだマイナーなライフスタイルだろう。


しかし戦前のサラリーマンは、全有業人口の約3割程度であったといわれる少数職種で、逆に職人や個人商店主の方が圧倒的に多かった。その彼らのほとんどはホームショップスタイルで暮らしていたはずだ。会社勤めがここまで増えたのはここ半世紀ほどのお話であって、それまでの日本人は永きに渡りホームショップスタイルで生計を立ててきたのである。


ご両親から顔つきが以前より明るくなったといわれたというYくん。4回に渡ってお伝えしてきたこのホームショップを見てあなたの周辺環境やご自身を見直す機会に繋げてもらえたら嬉しい。


店舗が少なくほの暗い駅前通りにあかりが灯った。「ここができて仕事の帰り道ほっとできるようになった」とお客が立ち寄る


アラタ・クールハンド arata coolhand

(イラストレーター/文筆家 東京出身)

ロゴタイプの制作からパッケージデザイン、広告、CDアートワーク、洋服の企画などを仕事とする。2009年と2012年に東京都下周辺の古い平屋ばかりを網羅した『FLAT HOUSE LIFE』を発刊し(2017年に『FLAT HOUSE LIFE1+2』として復刊)その後一冊一軒の平屋にフォーカスしたよりマニアックな『FLAT HOUSE style』をシリーズ化して自費出版。17年には九州の平屋だけを集めた『FLAT HOUSE LIFE in Kyushu』をリリース。幼少期に山口県の外国人向け平屋住宅での生活を体験、その後東京都下の文化住宅や米軍ハウスでの暮らしを経て、現在は都下の文化住宅と九州の米軍ハウス2拠点を軸に活動する平屋フリーク。

最終更新日:2020年03月12日

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