ページトップへ

Yahoo!不動産おうちマガジン は家探しのヒントが満載の情報サイトです!

>
>
>
本当は空き家問題より怖い「所有者不明土地」

2018年05月10日

田中 和彦

本当は空き家問題より怖い「所有者不明土地」

所有者不明土地、ってなに?

本当は空き家問題より怖い「所有者不明土地」

ペイレスイメージズ/アフロ

「全国には所有者のわからない土地が約410万ヘクタール、九州の広さほどある」。そう聞くと驚く人も多いだろう。これは昨年、所有者不明土地問題研究会が公表した内容だ。以前から空き家は多くあったにもかかわらず数年前から「空き家問題」が顕在化したように、最近は「所有者不明土地問題」がクローズアップされだしている。さて、その所有者不明土地とは一体どのようなものだろうか? またその存在でどのような問題が引き起こされているのだろうか? まずは所有者不明土地の説明からしていきたい。

「所有者不明土地」ってなに?

通常は土地の所有者を知ることはそれほど難しくない。登記簿を確認すればわかるからだ。土地所在地を管轄する法務局には登記簿があり、そこには土地だけでなく建物も所在、面積の他、所有者の住所・氏名が記載されており一般公開されている。所定の手数料を支払えば登記事項証明書等を取得し所有関係以外に抵当権設定の有無などの権利関係を調べることができる。では「所有者不明土地」とはどのような状況のものなのか? 所有者不明土地問題研究会による「所有者不明土地」の定義は以下の通りだ。

所有者台帳(不動産登記簿等)により、所有者が直ちに判明しない、又は判明しても所有者に連絡がつかない土地


登記簿で所有者はわかる。だが、なかにはなんらかの理由で登記簿に記載どおりの所有者となっていない土地がある。これが「所有者不明土地」だ。同研究会が、全国の登記簿をサンプル調査した結果を基に、所有者のわからなかった所有者不明土地の割合を宅地・農地・林地の地目別に算出し、全国の地目別面積に所有者不明率20.3%を乗じて算出した数字が約410万haであり、九州の土地面積(368万ha)と近かった。ゆえに「所有者のわからない土地は九州の広さほど」と言えるわけだ。

実は九州ほどではなく佐渡島ほど

では、所有者がわからない土地が実際に九州相当の広さがあるのかというと、そうではない。なぜならば「所有者不明土地」には、登記簿を見て所有者はわかったが住所が不正確なためにすぐには連絡が取れないケースや、名義の相続人が多数いて一部の所有者にしか連絡が取れない共有地なども含まれているからだ。これらの土地には、調査をすれば簡単に所有者がわかる土地もあり、純粋に「所有者不明」ではない。

現に同協会のレポートにも以下のように記載されている。

なお、地籍調査では、これらの土地について、登記名義人の戸籍・住民票等により土地所有者の所在を調査し、再通知している。追跡調査の結果、ほぼ全ての土地所有者に通知が行き届き、最終的な所有者不明率は0.41%にとどまっているが、探索に多くの時間と手間がかかっていることが明らかになった。


九州相当には程遠い。全体の0.41%は約8.4万ha。佐渡島(約8.5万ha)にも満たない面積だ。

所有者不明土地の原因は登記システムにあり!

写真:アフロ


しかし全体の0.41%とはいえ、佐渡島(約8.5万ha)と同等の面積の国土が誰のものかわからない状態は看過できない。また、調査をすれば所有者がわかるとはいえ、九州ほどの大きさの土地を全て調査するための時間と費用は膨大なものである。

所有者不明土地問題の本質は、所有不明な土地の多寡よりも、登記簿を調査してもすぐさま所有者がわからずに多くの時間と手間をかけなければ所有者にアプローチできない土地が存在する現在の登記システムに問題があると言っていいであろう。

登記簿を調査すれば土地の所有者がわかる「はず」なのに、なぜこのような事態が起きるのだろうか? 問題はいくつかあるが、大きな理由の一つとして登記が義務ではないことがあげられる。

土地を購入する場合、もちろん分譲マンションや一戸建てを購入する場合もおなじであろうが、購入代金の支払いと同時に売主から買主に所有権移転の登記をする。買主がローンを利用する場合は所有権移転をしなければローンが実行されないし、ローンの利用がない場合でも登記せずに売主名義のままでは別の第三者に二重売買される可能性もあり、義務ではないといえ登記をしないということはまずあり得ない。

これが相続ではどうなるか。

相続が原因で土地の所有権を手にするとき、ローン等の借り入れは必要無い。また相続で譲り受ける土地は登記上の所有者が故人なので二重売買の恐れもない。相続財産としての土地や建物が自身の所有物であることが遺産分割協議書などで明らかになっていれば、所有権移転登記をしなくても(少なくとも当面は)困らないわけだ。むしろ登記をしない方が登記費用がかからないので得だと考える人もいるであろう。

それでもその土地が市街地にある資産価値の高い土地であれば、いつかのタイミングで正しい登記にされ売却されたり抵当に入れられたりする可能性が高い。だが資産価値の低い土地となるとそのまま放っておかれることが多くなる。使う当てもなく、売却もできないような土地に、わざわざ手間や時間、コストをかけて登記を変更するメリットはない。

そのような理由で、郊外の土地を中心に所有者不明土地が発生する。同協会のレポートでも、最後の登記から50年以上経過している(=登記簿上の所有者が現所有者ではない可能性が高い)土地が、大都市では6.6%しかない(それでも多いが…)のに対し、大都市以外では26.6%となっている。所有者不明土地は郊外に偏っている。

所有者不明土地は空き家問題よりも大きな問題

写真:アフロ


所有者不明土地があると様々な問題が生じる。廃棄物が山積みされている土地が所有者不明土地であった場合、臭いがしたり治安悪化の恐れがあったりしても差し迫った危険がなければ簡単に撤去することもできない。道路予定地に所有者不明土地があると買収に時間がかかりスケジュールが遅れる。山林や崖地などが台風などの自然災害で危険な状態となった土地の場合、道路と違って対策工事ができなれば近隣住民の命に関わる事態になるかもしれない。

上記のように所有者不明土地は、本来は不必要である様々なコストを発生させるだけでなく、固定資産税が徴収できないため税収が減るという大変厄介な存在だ。また、何か抜本的な対策をしない限り、今後相続によりさらに増えていく。

空き家問題は、所有者に対して利用を促したり課税を強化したりなど対策を打つことができる。しかし、所有者不明土地は対策を打つ相手がわからない、もしくは特定するのに多大なコストがかかる。所有者不明土地問題は、空き家問題よりも深刻な問題である。

このような現状を受け今年3月に閣議決定されたのが「所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法」だ。これにより所有者不明土地を「円滑に利用する仕組み」「所有者の探索を合理化する仕組み」「適切に管理する仕組み」が構築される。例えば「円滑に利用する仕組み」では、地域住民にとって公益性が認められる場合であれば一定条件のもとで最大10年間の土地利用権が認められることになる。

この法律の施行によって、すぐさまに所有者不明土地が円滑に利用され、もしくは、所有者が探索されるわけではない。上記の「円滑な利用」においても「地域住民にとって公益性が認められる」とはどんな場合か?といった疑問は残る。しかし、そのような試行錯誤が繰り返され本法律に則った事例がいくつか現れれば、それがきっかけとなり所有者不明土地に対する関心が高まり、よりよい解決案を構築していく土壌作りとなるであろう。本法施工後の動向に注目したい。


【参考サイト】

最終更新日:2018年05月10日

キーワードを入力してください

キーワードから探す


本文はここまでです このページの先頭へ

Yahoo!不動産 おうちマガジンとは?

不動産にまつわるマジメな記事からおもしろ記事まで、家さがしが楽しくなる情報をお届け!新しい暮らしのヒントが満載のマガジンです。