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築古マンション購入時は「建替え議論の有無」に気をつけろ!

2018年07月05日

田中 和彦

築古マンション購入時は「建替え議論の有無」に気をつけろ!

住民の合意形成を阻む高いハードル

築古マンション購入時は「建替え議論の有無」に気をつけろ!

ペイレスイメージズ/アフロ

マンション建替えの流れ

マンションの建替えについての要件は、徐々に緩和されている。1983年の区分所有法改正までは特段の定めがなく、民法に従い全員の同意が必要だった。それが2002年の「マンションの建替え等の円滑化に関する法律」の施行、2016年の同法改正などを経て、今では一定の要件(注1)をクリアすると3分の2以上の賛成で建替え決議ができるようになった。

しかし、いまだ多くのマンション建替え決議は、その一定要件をクリアしていないため、集会において区分所有者および議決権のそれぞれについて5分の4以上の賛成が必要となる。以下「簡単に」流れを説明する。


【1】建替え決議集会への召集通知
通常の集会と異なり、当該集会の開催日の2か月前までに招集通知を発する必要がある(通常の集会は開催日の1週間前までの通知)。通知事項には以下の3点が必要だ。

  • 「会議の目的たる事項」
    「○○マンション建替え決議に関する件」等、建替え決議を行う会議である旨を明確に示す必要がある。
  • 「議案の要領」
    「再建建物の設計の概要/階数・面積・用途・配置・間取り」「取り壊し・建築の費用概算」「費用分担/決定の方法と基準」「再建建物の区分所有権の帰属/決定の方法と規準、保留床の取得者」が必要。
  • 「その他の通知事項」
    「建替えを必要とする理由(「建物が老朽したため」等の抽象的な理由はだめ。維持回復した場合の比較も必要)」「建替えをしない場合の建物の維持または回復の費用」「(あれば)修繕計画」「修繕積立金の金額」が必要。

【2】通知事項に関する説明会の開催
【3】建替え決議集会の開催/建替え決議の実施
【4】建替え不参加者との各種交渉
【5】建替え不参加者への売渡し請求


以上が建替えの流れ。なんとも面倒な手順を踏む必要がある。

マンション建替えは「大規模修繕の延長線上」ではない!

一方、大規模修繕の場合はどうだろうか。重大な変更を伴う大規模修繕の実施では、集会において区分所有者および議決権のそれぞれについて4分の3以上の賛成が必要となる(注2)。具体的な説明は割愛するが、建替えほど煩雑ではないもののこちらも一定の手続きを経る必要はある。

ここで、多くの人が勘違いをする。5分の4=80%、4分の3=75%なので「建替えは80%、大規模修繕工事は75%の賛成。その差たったの5%、合意形成の手間にそれほど差はないのでは?」と思うだろう。しかし、建替えと大規模修繕、両者の差はとてつもなく大きい。順を追ってその理由を見てみよう。

まず大規模修繕の議決を取る際を考えてみよう。マンション内で意見が割れるとすれば、それは「大規模修繕すべきvs.大規模修繕する必要なし」。ここでのポイントは、大規模修繕必要なしと考えている反対派も、修繕されて状況が良くなることが嫌なわけではないということ。反対者の多くは「工事費が高い」等の金銭面、「この部分は工事の必要なし(orここまですべき)」等のプラン面、「今はまだ必要ない」という時期的なことで納得がいかないだけだ。修繕が実施されること自体への反対は少なく、工事内容、スケジュール、予算等々、丁寧に擦り合わせていけば、4分の3=75%の賛成も見えるだろう。身の回りを見ても大規模修繕を実施しているマンションはいくらでもある。

また、新築での購入時にあらかじめ「大規模修繕案」が存在していることも大規模修繕を実施することへの抵抗感を和らげている。

写真:アフロ

建替え賛成派と反対派の埋まらない溝

一方、建替え決議の場合は事情が違う。建物価値を維持するための大規模修繕に大反対する人は少ないが、建替えて新しくなることに「絶対反対!」という人は存在する。その反対理由は大きくわけて2種類存在する。

一つ目は、大規模修繕で十二分、建替えは不要だ!と考えている人。こういう人は建替えについて、金銭的負担が大きくなる、既存不適格(建築当時は合法であったが、現在では法制度が変わり同じ大きさや高さで建替えることができない状態)で建替え後に専有面積が減る、といった理由で真っ向から反対の立場を取ることが多く、建替え派への歩み寄りは難しい。

二つ目は、建替えでその場所を離れたくない人。建替えは大規模修繕と異なり、居住しながら進めることができない。解体から新しい建物竣工まで、長ければ数年間その場所を離れることになる。これは高齢者や病弱者には、つらい。「いつ死ぬかわからない。ここで死にたい」などと言われる場合もある。高齢者でなくても「子供が小学校を卒業するまでは動きたくない」といった事情の人も多い。ごく近所に代替えの賃貸住宅があったとしても、「離れたくない」が反対理由ならば歩み寄りの余地がない。

大規模修繕の合意形成が「75%の賛成者を積み上げる行為」であるのに対し、建替えの合意形成は「一方から80%を目指しているのに、反対勢力は75%を目指して正面衝突してくる」イメージと考えれば、「その差5%」ではないことが理解できるだろう。

築古マンション購入時は「建替え議論の有無」に気をつけろ!

ペイレスイメージズ/アフロ


築30年~40年以上の築古マンションを新築マンションより割安な価格で購入、その差額をリノベーションに回して思い通りの部屋をつくる!と考える人は年々増えている。大規模修繕はおよそ15年前後で行われることが多く、築30年~40年は大規模修繕を2度終え、そろそろ建替えを視野に入れた話が出てくるタイミングだ。

そのような古いマンションを購入する際は、建替え等の議論の有無を必ず確認しておきたい。これは重要事項説明書だけに頼らず、管理組合へのヒアリングや理事会/総会の議事録でしっかりと確認したい。

ポイントは「建替えの有無」ではなく「議論の有無」。建替えすべきかどうかは建物の状態や住民の事情により異なる。外部から見て簡単に理解できるものではない。建替え話があるから良い悪いなどと早急には結論は出ない。

問題なのは、その古さでありながら全く建替えの議論がされていないマンション。建替えか大規模修繕か?建替えるならいつのタイミングか?このような話が持たれていないマンションは、心配極まりない。どのようなマンションであれ建物の老朽化は進む。備えのないマンションは何かことが起きた時に揉めるのは必至だ。「お金の備え」すなわち修繕積立金も大事だが、お金が豊富だからといっても安心はできない。先にも書いたが「建替え」と「大規模修繕」の差はとてつもなく大きい。

(注1)市区町村の都市計画として市街地再開発事業が決定されれば、「区分所有法の一括建替え決議」(全体の5分の4以上、棟ごとに3分の2以上)は不要となり、かわりに「市街地再開発事業による建替え」(全体の3分の2以上)で建替えを決議できる。

(注2)計画修繕工事は重大変更にはあたらず、管理組合の普通決議(過半数の賛成)により行うことができる。


最終更新日:2018年07月05日

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