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写真:ミラタス/アフロイメージマート
土地や建物の売却を不動産会社に依頼する際に締結する契約を、「媒介契約」と呼ぶ。これは、不動産会社にどのような業務を依頼するかを明確にするための契約であり、不動産会社は宅地建物取引業法によって媒介契約の締結を義務付けられている。この「媒介契約」、実際に不動産の売買を経験した人はもちろん、不動産に興味のある人であれば一度くらいは耳にしたことがあるだろう。また、この媒介契約に「専属専任媒介」「専任媒介」「一般媒介」の3種類があることまでご存じかもしれない。
この3種類の媒介契約、取引の相手方(売却の媒介であれば買主)を見つけてもらい、成約時には所定の仲介手数料を支払うという点においては同じなのだが、少しずつ内容に違いがある。以下では、他の2種類と比べあまり一般的ではない「専属専任媒介」(取引の相手方を自分で見つけてきたとき、例えば知人や親戚等が購入する場合であっても、依頼した不動産会社を通して取引をする必要がある。依頼主にとってかなり厳しい契約)を除いた「専任媒介」「一般媒介」の2種類の契約について、契約上の取り決めの違いだけではなく、依頼者にとってどのような影響があるのかまで説明をしたい。
一般媒介と専任媒介、一般媒介の方が良い?
とはいえ、まずは一般媒介と専任媒介の違いを把握してほしい。大きな違いは以下の3点だ。
1、依頼する不動産会社の数
<一般媒介> 複数の会社に依頼できる。
<専任媒介> 一社にのみ依頼できる。
専任媒介で一社に任せた場合、その会社の動きが悪くて他の会社に依頼したくても契約期間中は別の会社に依頼することができない。
2、売却状況の報告義務
<一般媒介> 報告義務自体がない。
<専任媒介> 2週間に1度以上の報告義務がある。
報告がなくても聞けば良いだけの話であり、報告は回数より中身が問題なので、それほど大きな差があるとは思えない。
3、レインズへの登録義務
<一般媒介> 登録義務がない。
<専任媒介> 契約締結から7日以内に必ず登録する義務がある。
一般媒介であっても登録してほしい旨依頼すれば問題はない。
1については一般媒介ならば「不動産会社を増やす」「不動産会社を競わせる」ことができるのに対し専任媒介は、それができない。2と3が実務上それほど差がないので「ならば一般媒介の方が良いのではないか?」となりそうだが話はそれほど簡単ではない。
専任媒介は囲い込みをされる?
よく言われるのは「専任媒介は一社にしか情報を出さないので、その一社に情報操作されてしまう」ということ、いわゆる囲い込みだ。具体的にいえば、不動産会社が依頼した物件をレインズ(不動産業者専用の情報流通サイト)に登録した後、他の不動産会社から問い合わせがあっても、自社で買い客を見つけるまでは「商談中です」などと嘘をつき、両手仲介(売主と買主の双方から仲介手数料を受け取ること)にこだわることだ。
確かに専任媒介にすれば、そのような情報操作をすることが可能になる。しかし、全ての不動産会社が「嘘をつく」訳ではない。どのような営業活動をするのか、どのような問い合わせがあったのか、それは自社の客か他業者が紹介した客か。そういった質問を通して依頼した会社とコミュニケーションを図れば、相手もそのような「嘘」はつきとおすことはできない。
また市街地のマンションや一戸建ての売却であれば、媒介を依頼している不動産業者に対して、売却物件と比較できる周辺物件の状況をヒアリングすることで「囲い込まれて売れない」のか「高いから売れない」のかを判断しやすくなる。
一般媒介は広告量が増える?
専任媒介よりも一般媒介の方が良い、という主張の根拠で「複数業者に任せることによって競争原理がはたらき、各業者が活発に広告活動をする」というものがある。果たしてそうなのか?
答えはNO。すぐにでも売れそうな物件であれば一般媒介を締結した各会社がこぞって販売活動を行うだろうが、市場価格から乖離して売却が困難な物件であれば広告活動を積極的に行う会社は少ないだろう。広告は売主からすれば、「しなければ売れないんだから大量投下してほしい」だろうが広告費を負担する会社からすれば「売れない不動産は広告したくない」のが本音。
広告費用を回収するという点においては、むしろ専任媒介の方が不動産会社にとって都合が良い。一般媒介の物件に広告費を投下しても自社で契約できなければ一円も回収できない。しかし専任媒介であれば他社が買い客を見つけてきても片手(=売主側からの3%の仲介手数料)は手に入るので広告費は回収できる。
写真:アフロ
ポイントは「一般か専任か?」ではなく「担当者が何をしてくれるのか?」
専任媒介だと一社以外と付き合えない。一般媒介だと一所懸命に活動してもらえないかもしれない。でもネットの記事を読むと専任媒介でも囲い込まれて活動してもらえないかも。考えれば考えるほどに悩んでしまうかもしれない。では一般と専任、どちらが良いか?
答えは、どちらでも良い。言い換えると「一般か専任か」はあまり問題ではないということだ。ダメな不動産会社は一般でも専任でもダメ、親身になってくれる不動産会社なら一般でも専任でも親身になってくれる。
実際に折り込みチラシや不動産仲介ポータルサイトに掲載されるときに一般と専任で見え方の違いはない。皆さんが物件を購入検討する際に、売り側の仲介会社の媒介の種別を気にはしないだろう。
「一般か専任か」の正しい答えは、「信頼のおける不動産会社担当者が活動しやすい方」といえるだろう。「専任で任せてもらえると嬉しいが、一般でも頑張りたい」。これが多くの仲介営業マンのホンネだ。「専任でないと活動しない」などという担当者は少し怪しいかもしれない。そう言われた場合は、なぜ一般では活動しないのか? と尋ねてみるのが賢明だ。
最終更新日:2019年12月02日
不動産コンサルタント
田中 和彦
京都をベースに空き家活用、相続対策、不動産有効活用をしています。一般的には不動産有効活用=アパート経営ですが、不動産の利活用には無限のバリエーションがあります。自身でもギャラリー、シェアスペース、簡易宿所等の運営をしています。記事を通じて、不動産の持つ様々な価値を伝えていきたく思います。
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