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写真:GYRO PHOTOGRAPHY/アフロイメージマート
以前「スタバの利用層は意外と低年収?」という記事をネットで見かけたことがある。これが記事として成り立つのはスターバックスの利用者は収入が高いというイメージがあるからだろう。記事のネタ元はマーケティング会社の行ったアンケート調査だが、今回はこの件について、利用者ではなく立地という切り口で大阪府を対象に見てみたい。
まずスタバはどこにあるか? 同社のウェブサイトを調べたところ大阪府下にはスタバは117店舗あった(2020年1月1日現在)。このうち関西国際空港内にある5店舗(泉佐野市2店舗、田尻町3店舗)と大学構内の5店舗(吹田市2店舗、枚方市2店舗、茨木市1店舗)については、特定の施設利用者が対象で「来街者が利用する」というイメージとは離れるので残る107店舗について見てみたい。(イオンモール内の店舗も特定の施設利用者ではないのか! という声は、スルーさせてくださいね(笑))
「スタバ不在都市」の分水嶺は人口20万人以下の都市!?
大阪府下のスターバックス店舗数(上述店舗を除く)は以下の通り。
スターバックスコーヒージャパンウェブサイトのデータを元に作図
いちばんスタバが多いのは大阪市。これは予想通りの結果。107店舗中63店舗と半数以上の店舗が大阪市内にある。その次は堺市で7店舗。ちなみに大阪府下で一番人口が多いのが大阪市でその次は堺市。ということは、単純に人口が多い場所ほどスタバは多いのか? ということで、行政区と人口規模からスタバの有無を見てみたのが次の図。
図2
スターバックスコーヒージャパンウェブサイトのデータを元に作図
人口20万人以上の行政区には全てスタバがある。10万人~20万人の行政についてはスタバの有無はおよそ「半々」。これが10万人以下では21行政中、四條畷市、泉南市、藤井寺市のわずか3行政(約14%)であり「ほぼ無い」。スタバは、こと大阪府下に関しては、人口20万以上の都市に設置、10~20万都市は半々、10万未満都市は基本は見送り、と人口規模との関係が見られる。
南大阪にスタバは不向き?
関西国際空港(写真:アフロ)
行政区ごとの「スタバの有無」から人口規模と出店に関係性があることがなんとなく見えたので、つぎはエリアごとに見てみたい。大阪府は、統計等において以下の8つのエリアに区分される。
市区町村ごとの「スタバの有無」をエリア単位で見てみると、少し面白い結果が出た。
スターバックスコーヒージャパンウェブサイトのデータを元に作図
南河内、泉北、泉南のエリアが圧倒的に出店されている市区町村が少ない。それ以外の5つのエリアでは「スタバのある市区町村」が約68%であるのに対し、南河内・泉北・泉南の3エリアでは24%の市区町村にしか出店していない! この3エリアに人口規模の小さい行政区が多いのは確かだが、人口が10万~20万人程度の行政区をみても大東市(12.3万人)や池田市(10.3万人)にはスタバがあるのに、岸和田市(19.4万人)と和泉市(18.6万人)にはスタバはない。きっと人口以外の切り口で特徴があるに違いない
スタバの店舗は地価が高いエリアにある⁉
そこで各エリアごとに人口だけではなく地価と年収も比べてみた。
また、泉北地域はスタバが8店舗あるが内7店舗が堺市内。泉北の5行政区のうち堺市を除いた4つの市と町の人口を足しても堺市以下。ということで堺市は大阪市同様に独立した地域として取り扱い、その結果が以下の図だ。
人口は平成27年度国勢調査(総務省)、地価平均は「土地代データ」(2018年度 大阪府)、平均年収は「年収ガイド」(大阪府 所得(年収)ランキング)の数値を元に作図
そもそも「スタバの利用層は収入が高い」というイメージがあるのではないか? という興味から始めたこの記事だが、地域年収と店舗にはあまり関係が見られない。年収が高いエリアほど多くの店舗があるのであれば、三島地域や豊能地域にはもっとあってもいいはず。北河内地域には11店舗もスタバがあるのに、北河内地域よりも年収平均が高い泉北地域(堺市除き)にはスタバが1店舗しかないのもおかしい。
三島地域や豊能地域がおおむね大阪市のベッドタウンであり、収入の高い人は三島地域や豊能地域で暮らし大阪市地域で働く。なので収入が高い人がたくさん働きに来る大阪市地域にはスタバが多い。そんな仮説も成り立つであろうが、「住人の年収」とスタバの関係はこの表を見る限りでは、それほど関係性が見て取れない。
そこで注目したいのが地価平均だ。
使用したデータは2018年(平成30年) の公示地価の平均値。スタバの複数ある地域はすべて13万円/m2以上であるのに対し、スタバが1店舗以下となる3地域は最高でも泉北地域(堺市除き)の10.1万円/m2、他は10万円未満。「スタバ複数地域」と「スタバの少ない3地域」の地価平均の平均は、それぞれ25.4万円/m2と7.8万円/m2。かなりの差が見て取れる。
スタバ利用者の収入が高いか安いかはわからないが、スタバの店舗があるのは地価の高い地域であるということは言えそうだ。
チェーン店の出店具合で街ウォッチングを楽しめる!
写真:アフロ
土地は、とくに商業地域については、収益性の高い地域の方がおおむね価格が高い。スタバ出店が地価の高い地域に偏っているのは、当然という見方もできる。しかし、店舗によってはランニングコストを抑えるために地価の安い郊外地域に重点的に出店する業態もある。スタバが地価の高い地域に出店する傾向があるのは「地価の高い地域に出入りする人を対象とした方が売上が上がる」もしくは「収益性の高い事業形態」といったことが考えられる。
このあたりの考察は門外漢なのであくまで「こう思う」といったレベルにとどまっており、数値の検証についても単純に平均を比べた程度で精度はあまり高くない(本来なら「行政区」ではなく、もっと細かなメッシュで調査すべき!)。それでもなんとなくの傾向は見ることができる。
この記事をきっかけに「最近スタバができたからこの辺は盛り上がる」「この駅前にスタバがこないのはまだ地価が安いから」などと街をながめて楽しんでみてはいかがだろうか? また、スタバだけでなく他のFC店舗等でも同様の考察が楽しめる。「チェーン店ばかりで楽しくない」とはよく言われることだが、せめてこのような楽しみ方をしてみてはいかがだろうか?
参考サイト
最終更新日:2020年02月12日
不動産コンサルタント
田中 和彦
京都をベースに空き家活用、相続対策、不動産有効活用をしています。一般的には不動産有効活用=アパート経営ですが、不動産の利活用には無限のバリエーションがあります。自身でもギャラリー、シェアスペース、簡易宿所等の運営をしています。記事を通じて、不動産の持つ様々な価値を伝えていきたく思います。
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