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自分の大事なものとは? 神奈川の小さなパン小屋から考える

2016年10月14日

lefthands

自分の大事なものとは? 神奈川の小さなパン小屋から考える

外資系企業からパン屋へ転身

自分の大事なものとは? 神奈川の小さなパン小屋から考える

オーナーの山下さん

こんな風に暮らしたくなる、デンマーク家具に囲まれたお店

平日はもちろん、土曜日ともなると10時の開店前から長蛇の列。品川から東海道本線で1時間弱、駅から歩けば徒歩15分と交通の便は必ずしも良くない場所に人気店「ブーランジェリー・ヤマシタ」はあります。人口2万5000人の小さな町に、脱サラしてパン職人の修行をしていたオーナーの山下雄作さんがセルフビルドで店をオープンしたのは2014年4月のこと。山下さん自身は自分の店のことを「お客様が3人も入ったら一杯になってしまうような、小さなパン小屋です」と謙遜しますが、まずはお店をご覧いただきましょう。

北欧にありそうなシンプルな外観。30年以上空き家だった元美容院を元大工の知人の手を借りて自らコツコツ改装。

営業開始前、ずらりと並んだパンたち

レジカウンターから見た風景。ヨーロッパの町にありそうな小さな店内。

行列待ちの人たちのための椅子もボーエ・モーエンセンのデザイン


ブーランジェリーの背後には、この春オープンした併設の食堂スペース「ラ・ターブル・ド・ブーランジェリー・ヤマシタ」があります。こちらは企画展示も行う小さなギャラリーでもあります。

食堂スペース入り口

山下さん、実はパンの修行を何十年も続けて念願の店を持った、というわけではありません。パンの修行は2年10ヶ月。「それも店では焼くところまでは修行できず、生地の仕込みまで。もちろん自宅の機材を使ってパンを焼くなどはしていました。というのも、3年で独立する、場所はここ神奈川県二宮町と決めていたんです。」(山下さん) 

聞けば山下さんはデンマーク留学から帰国後、都心にあるデンマーク家具を扱う家具店で青山店、銀座店の店長をしていたとか。華やかな経歴や洗練されたお店のセンスから考えると、都心からも、さらには最寄り駅からも離れた店は、少し不思議な感じがします。しかしそんな場所でも、お客さんがどんどん集まってきています。なぜ都心から離れた小さな町で午前2時に起床してパン屋を焼く生活に至ったのか、もう少し詳しい話を聞いてみましょう。

家族ともっとたくさんの時間を過ごしたい、がきっかけ

「僕は祖母の代から親子3代に渡って自由学園という学校(幼稚園から大学までの一貫校)の出身なんですよね。自由学園では“デンマーク体操”というものを運動としてやるのですが、デンマーク体操を中心とした体育教師になるため、18歳で留学したんです。ところが留学中再起不能なほど膝を故障してしまいまして、帰国後語学を活かせる企業を探したら、デンマーク家具の会社に出会いました。」
外資系の会社でインターンから仕事を始め、20代半ばにはマネージャー職に。世はリーマンショック前でデザインブームが到来、家具業界は好景気に沸き立っていました。
「場所も青山とか銀座ですし、毎日飲み歩いたりパーティーに出かけたりするような生活を送ってたんです。もう子どももいたのに家族を顧みない生活を続けていたんですよね。」

デンマークの家具や小物でまとめられた店内

家具店勤務時代に培ったセンスが活きた食堂店内

このままいけばどこかで破綻するという予感を持っていた山下さん。ある出来事をきっかけに家具業界での仕事を辞め、隠遁者のような生活に。そこで立ち止まりながらも1年以上とことん考え、「家族ともっと過ごす時間を増やすこと、地に足を着けて生きること、そして人のために生きること」を人生の中心に据える決意をしたのだとか。
「何をしようか、と真剣に考えた時に浮かんできたのがパン職人だったんです。というのも、人は生きるために食べる。パンは日々の糧です。自分の小さな子どもを見ても、とにかく何かしら食べて生きているんですよね。それと、家具業界時代から自分でモノを作れないもどかしさを感じていたので、職人になりたいと思っていました。」

二宮町には以前母校・自由学園創始者の別荘があり、中学生の頃訪れたことがあったのだとか。
「浮かれた生活を捨てた僕にはそういう“縁”がとても大切に思えて。それと、一番は子どもです。小学校で1学年3クラスくらいの規模の町がいいなと。二宮には大きな商業施設がないのですが、これはつまり“消費を中心に回っていない世界”なんですよね。そこが逆にとても魅力的に感じます。都市には企業が自社の利益のために僕達の消費意欲を掻き立てるための誘惑がたくさんあります。そしてそれが生活の中心になりがちですから。」

何かモノを選ぶ時、デンマーク製を意識して選ぶようにしているとか。

テーブルやトレー・食器は友人がこの食堂のために製作してくれたもの。棚の上に飾っている絵はお祖父様の書斎にあったものだそう。カフェの店名の通り、まさに「山下家の食卓」に来た気分に。

大事なものを守る時に長いものに巻かれないこと

パンの仕込みが終わったあとの朝焼け。吾妻山があるこの景色で移住を決めたのだとか。


「人に喜んでもらえるためにパンを作っていますし、人に喜んでもらえるような場所を提供したいといつも思っています」
3人入れば満員になるミニマルな“パン小屋”、ゆったり時間が過ごせる食堂からも、山下さんのそんなメッセージが伝わってくるようです。
山下さんの成功を見て、ゆくゆくは脱サラして職人になりたい、移住して店を出したいなど、ビジネスの相談を受けることもあるそうですが、山下さんは言います。

「僕はすべて直感で決めています(笑)。この店の場所に出会ったのも、ジョギングをしていて通り過ぎるときに、あ、改装したら店にできるかも、と思ったからだし。すべてはタイミングです。それより、自分にとって本当に大事なものは何なのかを見極めること。そして、大事なものを守る時に長いものに巻かれないということ。この2つが大切なんじゃないかと思うんです」

スタッフの皆さんも笑顔が絶えない。真ん中が奥様


(構成・文 山祥ショウコ/レフトハンズ 写真・ブーランジェリー・ヤマシタ)

最終更新日:2018年08月30日

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