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新国立競技場の建築家・隈研吾の「負ける建築」とは?

2017年09月13日

lefthands

新国立競技場の建築家・隈研吾の「負ける建築」とは?

和紙の洞窟に学ぶ「負ける」の意味

新国立競技場の建築家・隈研吾の「負ける建築」とは?

屋根のひさしと竹林の間を歩く根津美術館の入り口は、東京の表参道エリアに位置しているとは思えない、自然な心地よさが漂う。Photo Credit NEZUMUSEUM (c)Mitsumasa Fujitsuka

そもそも隈研吾ってどんな人?

2020年まであと3年。東京オリンピックに関するニュースも多く、なかでも、メインスタジアムとなる新国立競技場は何かと話題に上がり、注目されています。再度のコンペの結果、大成建設と梓設計、隈研吾氏との共同提案が新国立競技場の設計に採用されましたが、この建築家「隈研吾」氏をご存知でしょうか? 名前や代表する建築物は知っていても、その作家性や意図まで語れる人は少ないのではないでしょうか?


建設真っ最中の新国立競技場。その全貌を実際に目にできるのはまだ先です。


先述の新国立競技場に加えて、渋谷駅の再開発に品川新駅と、東京の大改革に軒並み関わっている隈研吾氏。他にも、歌舞伎座(第五期歌舞伎座)、根津美術館、サントリー美術館、浅草文化観光センター、銀座松竹スクエア(旧:ADK松竹スクエア)、ONE 表参道など、あげればきりがないほど隈氏の設計した建築物が東京に溢れています。それらの建築物に共通する特徴は、木材や伝統的な建材を要所に用いることで、その土地の環境や文化に溶け込み、訪れるあらゆる人を受け入れてくれるような空間を生み出している点です。


木を用い、荘厳ながら、訪れる人を暖かく迎えてくれるような空間を演出している銀座松竹スクエアのエントランスホールも隈氏によるもの。

「負ける」=「勝負に負ける」という意味ではない

東京など、都会に林立する「勝つ建築」群。(写真:アフロ)


隈氏による建築物は伝統が重視されており、確かに街と一体化しているのに、新鮮さや個性をしっかりと感じます。この見事なバランス感覚を表現したのが「負ける建築」という言葉なのです。


「負ける建築」という言葉は、隈氏自身が2004年に著した同名の『負ける建築』という著書で名付けました。都心にニョキニョキと立ち並び、存在感を誇示するような建築を「勝つ建築」とし、その構造的な強さに人々は、もはや疲れてしまったので、もっと柔らかに多様性を受け入れるような「負ける建築」を建てるべきだ、と同著で述べられています。


隈氏がこうした考え方をするようになったのには、1990年代半ばから約10年間、東京ではなく地方での建築案件に多数関わり、伝統を継承する職人や自然由来のさまざまな素材に出会ったという背景があるようです。


そうして隈氏は、多様性を受容し、その土地の環境や文化に馴染むような、柔軟な建築を目指すようになっていきました。


近代的なビル群の中にあって、和風の様相ながら、賑やかな夜の銀座の街によく馴染んでいる歌舞伎座の姿も「負ける建築」を表しています。

「負ける建築」が体感できる、心地よい「和紙の洞窟」

隈研吾監修「高知県梼原町の和紙職人 ロギール・アウテンボーガルト × 建築家 隈研吾」展。銀座・京橋エリアに、和紙の洞窟が現れた。

洞窟といえば、じめじめとして陰鬱な空間。しかし、なぜだかこの和紙の洞窟は心地よく、ずっとそこにいたくなる。


隈氏が高知県での仕事の際に出会ったのが、ロギール・アウテンボーガルトというオランダ出身で高知県梼原町(ゆすはらちょう)在住の和紙職人です。


そのアウテンボーガルト氏と隈氏とのコラボレーションによって生まれた「洞窟」が、東京の京橋に展示されています。一般的に自然界にある洞窟は、どこか不気味で、落ち着きを感じると同時に不安も感じてしまいますよね。この「和紙の洞窟」を構成する和紙は、単に伝統的な技法のみで作られたわけではありません。オランダで昔から作られてきたコットンペーパーとミックスした和紙が使われたり、梼原町で採れる赤土や蛇紋岩を混ぜ込むことで、各所に配された和紙ごとに表情が出るよう工夫が施されています。単に日本の伝統的な和紙を全面に配して落ち着いた空間を演出するのではなく、異なる国の文化と日本の伝統を融合させることで、目新しさからくる程よい高揚感と、古き良きもの特有の心地よさを同時に感じられます。つまり、長い時間を過ごしても退屈しないうえに、リラックスもできる、過ごしやすい空間なのです。空間を構成している和紙のほとんどが地産のものでできているためか、昔からそこに住んでいたかのような親近感まで感じてしまいます。


藍で染めた木綿を織りまぜた部分。木綿やリネンなどの天然繊維からできた原料を使うヨーロッパの伝統的なコットンペーパーから着想を得て作られた。

弁柄を混ぜ、赤みを加えた和紙によって構成された壁面。自然由来の色味が目に優しい。

高知県産の蛇紋岩や桑の皮などを流し込んだ天井部の和紙。空間にニュアンスを添えている。


アウテンボーガルト氏はこの展示の制作にあたって、次のように語っています。

「なぜ和紙はこれほど美しいのか」「なぜ多くの人は和紙をやさしく温かく癒しを与えるものと感じるのか」(中略)文化と伝統に根ざした結びつきが安心感を与えます。(中略)和紙はほとんど、繊維や木、竹、草など天然の素材だけで作られます。

※ロギール・アウテンボーガルト × 隈研吾 アートニュースより


日本人はかつて衣服や内装用に、紙を日常的に使っていました。だから、この自然由来のもの独特の質感や色調の「和紙の洞窟」に、我々は胎内にいるような安心感をおぼえるのでしょう。異素材との融合といった先進性と、土地の素材を用いるといった順応性を一つの空間に混在させることで、時代にあった新鮮さや存在としての色を持ちつつも、訪れる人を受け入れてくれるように優しい、自然な建築が生まれるのだと、この和紙の洞窟で時を過ごすことで感じました。

こうした精神性が、隈研吾氏の標榜する「負ける建築」を読み解く鍵なのではないでしょうか。


隈研吾氏監修の「高知県梼原町の和紙職人 ロギール・アウテンボーガルト × 建築家 隈研吾」は2017年9月26日(火)まで、東京・京橋のLIXILギャラリーにて開催されています。コンクリートジャングルの中に現れた「和紙の洞窟」で、ぜひ自分なりの「負ける建築」を感じてみてください。

詳しくは下記の公式ホームページをご参照ください。


(写真・構成・文 稲生 遼/レフトハンズ)


最終更新日:2017年09月13日


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