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全国初、空き家対策特別措置法による強制撤去の現場とは

2015年10月28日

平野雅之

全国初、空き家対策特別措置法による強制撤去の現場とは

どのような状態で代執行の対象に?

全国初、空き家対策特別措置法による強制撤去の現場とは

強制撤去の対象となった家屋(2015年10月、解体工事着手の数日前に撮影)

強制撤去の対象物件はすでに崩落が進んで危険な状態だった

神奈川県横須賀市で10月26日、ある老朽空き家の解体工事が始まった。これは「空き家対策特別措置法」(空家等対策の推進に関する特別措置法)による強制撤去であり、同法が2015年5月26日に完全施行されてから全国で初めての適用事例になるという。

空き家対策特別措置法では、市町村の調査で「特定空き家」と認定されれば指導、勧告、撤去命令などの対象となり、所有者が撤去命令に従わない場合あるいは市町村が手を尽くしても所有者が分からない場合は行政代執行による解体(強制撤去)が認められる。今回の物件は、特措法の施行によって可能となった固定資産税情報の利用によっても所有者を特定することができず、やむなく市の費用負担による解体に踏み切ったようだ。

上の写真はその対象となった老朽空き家(解体工事着手前)である。京急「浦賀」駅から徒歩7分ほど、幹線道路から少し入ったところで、急傾斜地崩壊危険区域に指定された斜面地に建つ木造平屋建て住宅だ。築年数はよく分からないがかなり老朽化が進み、建築面積は約60平方メートルとされているものの、すでに建物の半分以上が崩落しているようである。草は伸び放題で小さな虫も多く飛んでいた。

敷地が接する道路は、横須賀市によれば「公道を含む法42条2項道路」(セットバックによって建築が認められる道路)だが、実際にはセットバックされておらずかなり狭い。建て替えなどが認められない「再建築不可」の敷地ではないものの、かなり以前から放置されていたのだろう。また、裏山へ登る道といった印象で道路敷には階段状部分を多く含んでいる。解体作業に重機を使うことはできないため、作業の完了は11月末が見込まれているようである。

下側から見るとそれほど荒廃しているようには見えないが……


前面道路には階段状部分があるため重機は使えず、解体は手作業が中心になる


市町村による行政代執行だけでは空き家対策を進めることができない

人口減少とそれに伴う空き家の増加に苦慮している横須賀市だが、市内には3万戸近い空き家が存在するとされ、「特定空き家」の指定も61件(2015年9月現在)にのぼるという。今回の行政代執行は深刻化する空き家問題の一端にすぎないが、同様の問題を抱える市町村は全国各地に存在しているはずだ。

空き家対策特別措置法による強制撤去の事例はこれから増えていくだろうが、大半のケースでは解体工事費用を回収することが難しいものと考えられるため、市町村の対応には限界がある。かなり危険性が高まった老朽空き家から、その優先度に応じて少しずつ解体に着手していくことになるだろう。

今回の解体工事が始まったのと同じ10月26日、国土交通省は一つの推計を明らかにした。全国の空き家の中から別荘などの二次的住宅や賃貸・売却用物件を除いた約320万戸のうち、有効活用が容易なものは約48万戸にとどまるとするものだ。この推計では、耐震性がないもの、腐朽・破損があるもの、最寄り鉄道駅から遠いものを除いて、残った物件を「簡易な手入れにより活用可能な空き家」としている。

逆にいえば、270万戸あまりは「活用困難」だということになる。もちろん、リノベーションなどで大きく手を加えることによって再生が可能な住宅はもっと多く存在するだろうが、そのコストに見合うニーズがなければそのまま放置される可能性は高くなるのだ。とくに、耐震性がないとされる約140万戸、耐震性はあっても腐朽・破損が認められる約80万戸の空き家は今後さらに問題が深刻になるだろう。

空き家対策特別措置法による強制撤去は最終的な手段であり、空き家問題の解決というよりも、周辺住民の安全確保や衛生上の問題除去を目的としたものだ。家屋を強制撤去した後の土地をどう管理していくのかといった問題も重くのしかかる。空き家問題を少しでも解消に近づけるためには、国民の一人ひとりがしっかりと考えていくことが欠かせない。

解体工事1日目(作業終了後)

最終更新日:2018年08月30日

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