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梨の美味しい街は人間にも住みやすい場所だった

2016年10月26日

中川 寛子

梨の美味しい街は人間にも住みやすい場所だった

植物と住みやすさの関係

梨の美味しい街は人間にも住みやすい場所だった

梨の一大産地は千葉県、しかも市川市

晩夏から秋にかけての果物と言えば梨である。二十世紀梨のイメージが強いためか、鳥取県の名産と思われがちだが、生産量でいうと日本一は千葉県。平成27年度の都道府県別収穫量割合で千葉県は13%となっており、鳥取県は8%。第二位は茨城県で11%と、実は梨は関東近郊での栽培量が多い。
ちなみに鳥取県の梨の主力商品である二十世紀梨も誕生したのは千葉県。1888(明治21)年に松戸市在住の、当時13歳だった松戸覚之助氏がゴミ捨て場で自然交配の苗木を発見し、移植したのが始まりだとか。千葉は梨の聖地なのである。

恵まれた環境で育つ市川の梨。地元の直売所での販売が多いのも特徴だ(写真提供・市川市農産物等PRイベント実行委員会)


千葉県の中でも市町村別産出額でトップクラスなのが市川市。江戸川を挟んで東京都と接する市川市は千葉県内でも人気の高い住宅街だが、その一方で梨を中心とした農業も盛んなエリア。2007年には特許庁の地域団体商標登録「市川の梨」として地域ブランドの認証を受けてもいる。

市川市で梨栽培が盛んなのにはいくつか理由がある。ひとつは三方を海に囲まれた温暖な気候。これは梨以外に千葉の名産として「びわ」があることからも分かる。びわは初冬に花をつけ、寒さの中で実を結ぶ。花はマイナス5度、実はマイナス3度で凍死する。そのため、冬でも暖かい場所でなければ栽培できず、房総半島がびわ栽培の北限となる。千葉に並ぶ名産地が長崎であることを考えると、千葉県の暖かさが分かるだろう。

土壌にも恵まれている。市川市で梨栽培が盛んな場所は高台の火山灰土壌の土地。火山灰土壌は肥料を保持する力が強く、排水性も良い。梨に限らず、果樹は湿っぽい低地では根腐れを起こしやすい。だから果樹園を見たら、そこは乾燥した高台と考えても良いのだ。同様に果樹園を作る際には周囲の植物の状況をチェックするともいう。樹勢のある巨木が生えている土地は、植物にはとても良い環境なのである。

一般にスーパーで売られている梨は3L、4Lというサイズが中心だが、市川市ではそれ以上に大きい梨も多く栽培されている。こちらはあまり市場には出回らない「あたご」という1キロ以上にもなる品種


また、市川市の梨農家さんの弁によると、市川市はゲリラ豪雨、台風、雹などの自然災害の影響を受けにくいとも。確かに近年の自然災害のニュースを考えてみても市川市近辺での被災はほとんど記憶にない。さらに江戸時代から続く長い栽培の歴史、大消費地である東京に近いという立地上のメリットも大きい。

低地、台地からなる市川市の地形

市川市が梨栽培にいかに向いているかを説明してきたが、ここで気づかないだろうか。梨栽培に好適という、暖かく、高台という条件はすべて人が住むのにも適した条件なのである。特にポイントになるのは高台という、地震に強い条件だ。

市川市の地形は「市川駅、本八幡駅以北の台地」と「江戸川以南と東京メトロ東西線沿いを中心とする南部の低地」に二大別できるが、梨栽培が行われているのはそのうちの台地上。市川市ホームページに掲出されている地盤情報に梨栽培が盛んに行われている大町エリアを示してみると、それがよく分かる。

市川市の断面図。色の濃い部分は沖積層が厚く堆積しており、液状化しやすい、揺れやすいなどの場所とされる。赤い星印周辺が大町エリア。実際にはもっと広いエリアだが、概況を記すために表示した。出典:市川市ホームページ「市川市の地盤情報」


さらにそれを市の地震時の震度予測の図で見てみると、台地と低地の違いが震度を分けていることが一目で分かる。台地上では震度6弱で済む揺れが、低地では震度6強になるというのである。

市川市ホームページ内にある震度分布図。前述の沖積層の厚さと震度の関係が読み取れる

安全性と利便性の天秤

地震優先で考えるなら台地上のほうが安心というわけだが、ここにひとつ、問題がある。梨を栽培するなら交通の利便性はさほど影響はないが、住むということになると利用できる鉄道路線や、買い物の利便性などが大きな意味を持つ。そして、梨栽培が行われているエリアは都心への通勤、日常の生活という意味では低地エリアに比べ、住環境は良いものの、いくぶん不便なのである。

市川駅前のアイ・リンクタウン展望台から国府台方面を見たところ。緑の濃い、高台になっている


歴史的に見ると台地上のほうが古くから発展してきており、市川駅から北にある高台、国府台(こうのだい)という地名は奈良時代に行政の中心・下総国府、仏教の中心・下総国分寺が置かれたことに由来するもの。大正時代以降の富商、文化人の別荘などの多くは高台にあった。今も、低層の高額マンションなどが立地しているが、忙しい毎日を送る人にはなかなか選択しにくい。安全、利便性のいずれを優先するか。本当はどちらもが理想だろうが、現実は難しい。

参考サイト

最終更新日:2018年08月30日

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