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日本初の民間分譲マンション「四谷コーポラス」建替えへ

2017年10月02日

中川 寛子

日本初の民間分譲マンション「四谷コーポラス」建替えへ

せっかくなので見納めに行ってみた

日本初の民間分譲マンション「四谷コーポラス」建替えへ

南北に細長い敷地に建つ「四谷コーポラス」。シャッターの中は2台分の駐車場

分譲マンションの先駆け「四谷コーポラス」

 JR四ツ谷駅から徒歩5分。新宿区本塩町の高台にある民間初の分譲マンション「四谷コーポラス」が建替えられることになりました。1956年の誕生から61年を経た古い建物ではありますが、そこにはさまざまな「日本初」があり、今の分譲マンションの先駆けともいえる存在です。 


旭化成不動産レジデンスのマンション建替え研究所・大木祐悟氏にお話を聞くとともに、実際に現地を見学してきました。

4階部分の廊下


玄関ドアの横にある小さな扉にはメーターボックスやクリーニングを依頼するためのカゴを置くようなスペースがあり、多目的に使われていました。また、右手の排水管のL字部分と手すりの間に隙間があることに注目です。元々は手すりが排水管として使われていたので、詰まりなどがあったため、切り離すことになり、排水管を新設した結果だそうです。

ほぼ竣工時のままと思われるキッチン


キッチンには、水栓の脇に蓋の付いた穴があり、そこからゴミを捨てると下に置かれた箱に落ち、それを廊下側から回収できる仕組みになっていたそうです。換気扇の登場は1958年のため、ガス台の上のフードは換気孔。また、収納部の扉の黒い部分には網が貼られており、湿気がこもらないようになっています。 

販売方法、管理にも日本初の試みが 

マンションの販売方法には、「日本初」の先進的な試みがあったそうです。 


「当時はまだ住宅ローンの仕組みがありませんでした。そこで、分譲に際しては期間1年・3年・5年・10年の『割賦販売方式』が採用されました。今から考えると短期ではありますが、現金で全額用意しなければならなかった時代に比べれば買いやすくなり、以降も買いやすくするための工夫が続けられた結果、現在の住宅ローンにつながっています」(大木氏)

販売時のパンフレット。生活をイメージしたイラストの中にはまだ珍しかったテレビが描かれている


また、管理に関しても、法律や制度のない時代の分譲でありながら、当初から管理規約を定めていたようです。 


「初期は売主が直接、その後は売主の子会社が管理に当たっており、管理組合総会もきちんと行われていたようです。築30年以降からの管理組合の総会議事録を確認すると、出席率も高く、修繕積立金も適切に積み立てられてきたことが分かります。こうした適切な管理が建替えに当たっての合意形成成功の大きな要因になったと思われます」(大木氏)

メゾネットタイプの広い部屋 要望に合わせた設計変更も 

玄関が階下にあり、上ってくるタイプのメゾネット。上階には和室が3室あり、トイレ、洗面所、浴室も。襖に外装と同じブルーが使われている


建物にも先進性があります。ひとつは広さ。この当時の集合住宅は公営住宅、公団住宅ともに12~13坪(39.6~42.9m2)が主流でしたが、四谷コーポラスは15.6坪(51.48 m2)と23.3坪(76.89 m2)と圧倒的に広いのです。全28戸のうち、24戸が広いタイプでもありました。

玄関から下るタイプのメゾネット。キッチンとリビングの間にはガラスの間仕切りがあり、人の通る部分にはカーテンが取り付けられるようになっていた


加えて、その24戸は上下二層のメゾネットです。これは間口が狭く、南北に長い敷地をできるだけ上手に広く使うための工夫。廊下が1階と4階にあり、1階から入って1・2階を、4階から入って3・4階を、同じく4階から入って4・5階を使う間取りになっていました。そのため、廊下がない2階と3階と5階では、そのスペースをバルコニーにできたのです。

こちらは純和風の和室。茶室の心得のある職人が手がけたのではなかろうかと思われるほど細部にも凝っている

同じ和室でもこちらは洋の趣もある和室。窓の下部にある格子は木で作られたもので外観のアクセントになっている

窓下部の格子部分を外から見たところ。全戸がこのデザインだった頃の姿を想像すると、どれだけ目を惹いたことか


トイレ、洗面所などの水回りを除いては入居者の要望を聞いて間取り変更などを行っていた点も先進的です。間取り自体は同じ3LDKだとしても、和室3室だったり、洋室2室に和室だったりするのはもちろん、各部屋の間に壁があったりなかったりと、住戸によって内部が異なるのです。

南北に配された和室2室の間に通り抜けできる押入れがある。奥行きがあり、使い勝手が良さそう


収納が豊富な点にも驚きました。見学に来た人が声を揃えて驚いたというのが和室2室の間に設けられた、仕切られていない押入れです。開けておけば風が通り、収納内部が湿っぽくならずに済むというもので、現在の暮らしにも欲しい工夫です。

こちらは無垢の板張りの洋室2室で壁面一杯に収納が作りつけられている。梁を隠すように奥行きの違う書棚が設置されており、収納量だけでなく見た目にもこだわっていたことが分かる

当時は各戸に浴室も珍しかった!

浴室内は改装されている。正面と左手の二方向に窓があり、左手の窓は洗濯機置き場、洗面所(配置は住戸によって異なる)に繋がる


設備も当時からすると最先端でした。今からするとびっくりですが、当時は各戸に浴室があること自体が珍しかったとか。さすがに現時点までオリジナルの浴室が残されている住戸はありませんが、2方向に窓があるのは今でも羨ましいタイプです。

洗面所。右にある窓は浴室に続いており、これによって風が抜けるようになっている。洗面所も外装に使われているのと同じブルーのタイルを使ったチェックになっている


1階と4階に設置されたダストシュート(ゴミを投げ込んで階下で回収する仕組み)や各住戸に配置された電話機、世帯ごとに建てていたアンテナを共同アンテナとして導入するなどの試みも一歩進んだものでした。

入口脇にある管理人室


今と違うのは共用施設がないことです。エントランスといえるほどの空間はなく、階段を上がるとすぐ外廊下になっています。集会室もなく、管理組合の総会などは近所の銀行その他の会議室を借りていたそうです。また、今よりも階段の傾斜が急なのも、古い物件ならではです。 


また、管理人による外出時の鍵の預かり、ゴミ集め、クリーニングの取次など、今でいうところのコンシェルジュサービスも行われていたそうで、あらゆる面からみて現在のマンションの原型だったことが分かります。

外廊下に面した庭。細長い敷地だけに設計には工夫を要したことが分かる。日影の制限が厳しいため、建替え後も建物は一部6階になるくらいでさほど大きくはならないそうだ


当然、価格もそれなりに高額でした。国税庁の民間給与実態統計調査によると1956年の給与所得者の平均年収は20万2400円でしたが、四谷コーポラスの販売価格は1戸233万円。年収の11倍以上です。2015年の同調査では平均年収は361万2000円ですから、今だと4000万円強というところでしょうか。35年ローンがなかったことを考えると、なかなか買える状況ではなかったはずです。 

建替え後は、区分所有者の9割が戻ってくる 

外装、扉、室内とあちこちにテーマカラーのブルーが使われ、印象的。文字や鍵その他のデザインもかわいらしく、多くの人が写真を撮った


建替え決議が成立したのは2017年3月。9月からの解体工事を前に見学会が開かれましたが、マスコミ向け見学会も含めた5日間の公開には550人以上が訪れたとか。

鍵のような小さなデザインもいちいち洒落ている


「1953年竣工の、東京都初の分譲マンション『宮益坂ビルディング』が建替え中の今、『四谷コーポラス』が現存するマンション黎明期最後の建物ということで、広く関心を集めたようです。部屋ごとに工夫のある設計、モダンで今も通用するデザインを長時間眺めていた方も多く、中には書棚が欲しいという方すらあったほどです」(大木氏)

こちらは現在建替え中の宮益坂の途中にある宮益坂ビルディング。オフィス、店舗なども入った建物で、住居は6畳の和室2室にキッチンで34.01m2。分譲当時は「天国の百万円アパート」と言われ、青い制服に白手袋のエレベーターガールがいたことでも有名。当時はこの広さのほうがスタンダードだった


立地・広さ・設備・その他条件が揃った住みやすい物件だったことから、相続を経て住み続けてきた人も多く、2019年の建替え完成後も区分所有者の9割が再取得、つまり戻ってくる予定といいます。どれだけ愛されてきた物件かがよく分かるというものです。 


マンション建替えは難しいと言われますが、四谷コーポラスの場合には都心近く、駅近くという立地条件に加え、管理組合がきちんと機能していたこと、住民同士の人間関係がうまくいっていたことが成功に至った要因だったとか。買う時に立地などを選ぶだけでなく、入居後に良い人間関係を築くことが建替えの可能性を高めるというわけです。


参考サイト 

最終更新日:2017年10月02日


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