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file.004棚田にある古民家を週末カフェにして暮らす

2015年03月10日

夫婦漫才

file.004棚田にある古民家を週末カフェにして暮らす

【連載】地方の若者たちの暮らし

file.004棚田にある古民家を週末カフェにして暮らす

岡山県の美作市で棚田再生に取り組む水柿大地さん。自力で改築した「いちょう庵」で週末カフェを営む。

棚田を再生するという途方もない仕事に従事する若者

なにかと注目の「若者の地方暮らし」。住宅事情を中心にその実態をリポートしていく。4回目は岡山県美作市上山集落で棚田再生を軸に活動を展開する水柿大地さん。彼はDIYで改築した「いちょう庵」の屋根裏部屋で暮らしている。

今はカフェの休業期間中。3月のリニューアルオープンに向けて再整備だ。


【動機】地域おこし協力隊として、大学を休学して美作へ。

水柿大地さん(25才)は東京生まれ東京育ち。東京の有名私大学で農山村の地域再生を学んでいた。1、2年生を座学に費やし、「このままではダメだ、現場に出なきゃまずいな」と思ったことから大学の教授に相談したところ、「地域おこし協力隊」の制度を教えてもらうことになり大学を休学して1年だけ「農業再生の現場を見る」という目的で赴任した。しかしどうして美作を選んだのか。「本当にただの消去法なんですよね。僕が地域おこし協力隊の赴任先を探し出したときが4月で、すでにほとんどの募集が終わって、おおかた隊員は赴任先で働き出してる時期なんですよね。その時まで残っていたのが北海道、秋田、岐阜、岡山で岡山以外の赴任先は漁村の再活性や商店街の再活性で、農山村の地域再生に携われそうなのは岡山の美作だけだったんです。最初、「美作(みまさか)」市の読み方も分らなかった。みつくるだと思っていました(笑)」そして知り合いが1人もいない現場へ飛び込んだ。

【住まい】月2万円の市営住宅に1年間

「引っ越してきて、最初はとにかく広い普通の1LDKの市営住宅でした。LDKが今住んでいる週末カフェのいちょう庵の土間と同じ位広くて、それに1部屋ついていたので、いちょう庵とあんまり変わらないような広さでしたね。そこに住んで、ひたすら草刈りしていました。課題は「棚田の再生」でした。そのために、ただ棚田を綺麗にするだけではすたれてしまうと考え、棚田と共に埋もれている(将来、いちょう庵になる)古民家を整備し、「普段から鍵がかかっていない、いつ行っても入れて誰かいる」そんなコミュニティスペースとして利用することで、棚田再生のためにも新しいコミュニティを構築しようということを考えたそう。「でも赴任3ヶ月で実際にやったのは延々と草刈り(笑)」このころ、当初の赴任予定期間である1年を延長しようと決めたという。「これは1年では到底古民家の再生や稼働まで手が回らないなと、折角埋もれていたものを取り出しても自分で運営に携われてないのは嫌じゃないですか? だからもう1年、もう1年と延ばして、協力隊としての雇用期限の3年まで関わりました」

【週末カフェ】いちょう庵始動

筆者がおじゃましていた数時間に、営業期間外にも関わらず、友人や地域のおじいちゃんが水柿さん訪ねてきた。


建物の外にパンを焼く石釜があったり、裏に2階建ての道具小屋を建築中で、納屋の部分をオンドルに改装中。

水柿さんのプライベート空間である屋根裏部屋。天井が低いが落ち着いたいい雰囲気のお部屋。


藪に埋もれていたこの空き家は、水柿さんが赴任する以前から「NPO法人英田上山棚田団」の方々が、あらかじめ所有者から事前に使用許可を取り準備しておいてくれた。そこを、移住者の仲間や棚田団とともに長い時間と労力をかけて薮を刈り払い、リノベーションを施し、「いちょう庵」と名付けた。週末はカフェの営業もするコミュニティスペースとして活用しはじめる。そして目標である「鍵がかかっていない、いつも誰かいるコミュニティスペース」とするため、それまで暮らしていた市営住宅を出て、水柿さん本人がいちょう庵の屋根裏部屋に引っ越すこととなる。「週末カフェは半年程お休みさせていただいていましたが、3月からまたやります」週末カフェの地域の入口としての機能を復活させて、地域の外から訪れてくれる人たちとの出会いを将来に活かしていく狙いだという。地域と本気でコミットしていく考えだ。

【地域】生活しやすく、都会にアクセスのよい田舎

この地域は車で10分走ればコンビニが3軒、スーパーマーケットやドラッグストアもホームセンターもそれぞれ2軒ずつあるということで、生活は非常に便利な地域だそう。ネット通販はどうなのだろう。

「もちろん使いますよ! あ、美作市は光ケーブルが全エリアをカバーしてるのに、住民のおじいちゃんおばぁちゃんがあんまりネットを使わないから、めちゃくちゃ速いんですよ(笑)」とのこと。

「車も電車も便利で、岡山市内や関西方面にもわりと気軽に行けて、都会に出やすい田舎だなと思います。都会で同世代の方々と呑んでいて、泊って帰ることもあります。最近はゲストハウスみたいに安い宿も増えてますし。逆に、幹線道路からこの地域に入って来る道は、少し入りづらくなっています。地域の方々は、だれが何の車に乗ってるかを知っているから、見たことない車が入ってきたら外の人が来たなと分かるし、いちょう庵のお客さんかな、ということになる」この治安の良さは、田舎ならではの話だろう。「後は、車で山を5分上がれば鳥取まで続く雲海が眺められる所まで行けたり、毎日のように近所の温泉に入れたり。お酒好きな地域の若い人やおじいちゃんと囲炉裏(いろり)を囲んでお酒を呑んだりと、便利で楽しい場所です。ご飯はもちろん、野菜や肉類の食べものも美味しいです。持寄りの呑み会だと、肉をどーんと10キロを料理するといった世界です(笑)。いただきものも多くてありがたいです」

一人暮らしとはいえ、食費が安くてうらやましい。


【仕事】生活を支える9つの仕事。

水柿さんは、元々は地域おこし協力隊の期間が済んだあとは、東京で就職するつもりだった。なので岡山で就職活動もしていない。ただ、「試してみたくなっちゃったんですよね。自分がここで楽しんで生きて行くことができれば、ほかの人ならもっと楽しめるよっていえるなと。だからまず自分がここで楽しく暮らそうと。今の生活は農林業が基本だけど、それだけでは食べていけないので、9つの仕事しています。春から夏はキャンプ場の運営管理を地域に移住してきた若者グループに任せてもらったり、草刈りのお手伝い、炭を作ったり。その自分で焼いた炭で魚を焼いたりするのはちょっとした贅沢ですね。本を出版させてもらったり、それ関係で記事を書かせてもらったり、講演も年間で20~30本あります。「みんなの孫プロジェクト」という地域の老人とのコミュニケーションプロジェクトの代表もしています。全部で9種類くらいの仕事してると思います。」大忙しですね。「収入のための仕事とは別に、地域にいれば、いろいろな役割が回ってきます。消防団のボランティアとか、水路掃除とか。いま、お宮の総代も任されてるんですよ、25歳で、移住者なのですが、地区に8人いる総代の1人となりました(笑)」

周囲の人達に協力を仰ぎながら商品開発をして、商品として販売している棚田酒と棚田コーヒー。

著書の『21歳男子、過疎の山村に住むことにしました』


【将来】『結婚せぇ結婚して連れて来い』ていわれています(笑)

自身の話をお願いしていても、「この地域がどう楽しいか」という話になってしまう根っからの広報大使体質の水柿さん


「遠距離恋愛で東京に5年ほど付き合っている彼女がいるんですけど、最近までこっちには来ないような感じだったんですけど、来てもいいというような感じになっています。彼女もまだ働き出して2年も経っていないので、せっかく就職した仕事だから、しばらくはきちんとやりたいだろうし、まだ少し先のことかもしれません。でも集落の人からは、『結婚せぇ結婚して連れて来い』ていわれています(笑)。仕事的にはいちょう庵をもう少し整備したり、いろいろとこの地域に関わりたいっていう人達を受け入れる窓口として、場所と人、人と人の出会いの場所として機能させたいなと。明日も女子大生が棚田の視察に来てくれるんですよ! そういう意味でもいちょう庵はもうめっちゃ出会いが多いと思います(笑)。あとは自分自身の力を上げることはもちろんですが、棚田をもっと開拓したいです。全部まだまだだと思うので、いろいろとやっていきたいです。」

視察に訪れた女子大生のみなさんと水柿さん(一番右)と、近所に住む梅谷さん(一番左)。みなで草刈りの図。


【集落】全部できるようになるのではなく、自分の範囲を少し広げる。

自分を実験台にいろいろとやっていっている。力をつけてできなかったことができるようになるのが楽しい。次、どんなことができるようになるのかなって」水柿さんもそういっていたように、自分に新しい技術を付けていくことで、逞しくなることが楽しくて仕方がない様子だった。

いちょう庵から見える棚田も半分近く薮に埋もれていたそうで、山の上の林のなかにも実はまだ棚田が隠れているそうだ。


なんでもプロに任さずにすべて自分でやってしまうというのではなく、できないことはプロに任せ、自分で手の届く範囲のことは自分でやることで日常で楽しむ。それがこの地域のいつもの日常だそうで、そういう暮らしに憧れた若い水柿さんが地域の人達からノウハウを学び、次にまた地域の要請に合わせて、力を発揮していく。

そういったサイクルを見ていると、水柿さんは集落という社会の中で働いているのだなと強く感じるとともに、人が備えるべき生活力の伝承がまっとうに行われている地域なのだなと感じた。いわゆる仕事場でできることを増やすだけでなく、生活の場でもできることを増やす、そんな「自分力」の向上を自分自身で実験しているのだろう。

(文と写真:森岡友樹、イラスト:上野麗子)

最終更新日:2018年08月30日

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