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file.005 ムダなモノがない瀬戸内海フェリー通勤

2015年03月17日

夫婦漫才

file.005 ムダなモノがない瀬戸内海フェリー通勤

【連載】地方の若者たちの暮らし

file.005 ムダなモノがない瀬戸内海フェリー通勤

建具が木製。クリアガラスの窓。この戸には雨戸も網戸もあるらしく上杉さんもお気に入り。

【経緯】「大都会暮らし」から、2週間で「瀬戸内暮らし」。

なにかと注目の「若者の地方暮らし」。住宅事情を中心に実態をリポートしていく。
5回目は瀬戸内海でフェリーで通勤する暮らしを選択したウェブクリエーターの上杉新さん(27歳)。瀬戸内海に浮かぶ女木島から高松まで毎日フェリーで行き来している。

女木島は瀬戸内海に浮かぶ島。小さなフェリーで高松港と結ばれている


女木島の港近くの景色。建物の周囲に高い石垣がある独特な雰囲気。


待ち合わせ場所である女木島港に現れた上杉さんは、いわゆる「田舎の島暮らし」というイメージからは少しかけ離れた、おしゃれなアウトドア系ファッションに身を包んでいた。どちらかというと瀬戸内にアート観光に来た若者の出で立ちに近い。そんな上杉さんは私を見つけるより先に、港に併設してある食堂のおかぁさんを見つけて「もう熱も下がったので大丈夫です。ありがとうございました」そう言って借りていたらしきプラスティック容器を返していた。彼はここへ引っ越して、まだわずかだというのに、すでに随分と地域に溶け込んでいるようだ。昨年3月半ば、上杉さんは東京の有名なウェブ系の会社で働いていたが、会社の先輩に誘われて数日後には現職の面接を受け、3月最終週の面接時に即採用が決まり「何とか数日後、新年度(翌週の4月1日)から働いてほしい」と言われる。転職の話が出てから転居が完了するまでわずか2週間だった。今は香川県にある政府の出先機関でウェブクリエーターとして働いている。

【住まい】せっかく田舎で暮らせるなら島暮らしがよいと思った。

広い庭のある4DKで家賃2万円。映っている軽トラも大家さんのもので「乗っていいよ」と許可を得ている。


「転職がバタバタだったので、家はいったん高松市内で借りたんですよ。家電とかがついてる、いわゆる家具付き物件です。でも、せっかく東京を離れて瀬戸内海に暮らすのなら島に住みたくて、高松市への通勤圏内のいろいろな島を回ってみたら、この島の空気が自分には一番合ってるなと感じて。この島の人々の距離感、ですかね。適度に近くて、適度に放っておいてくれる。心地よい距離感。でも困っているときには助けてくれるんです」

瀬戸内海にはたくさんの島があり、有人島も多い。そしてすべての島がそれぞれ異なった空気感がある。有人島の多くは定期航路で陸地と結ばれている。彼が新しく職場に選んだ高松の港からもいくつかの島への定期船が出ている。

「今の職場が高松港からも近く、残業がない仕事なので、毎日始発の船で島を出て、仕事をしてスーパーで買いものをして高松からの最終の船で帰って来ています」上杉さんの自宅は、女木島港から徒歩3分のところにある。

連なり間が3間と、納戸的な部屋が1間。写真は連なり間の真ん中の部屋。お気に入りの部屋だそう。

玄関からあがったところ。縁側がスッとのびていて「この廊下好きなんですよ」。

干しタコがつられていた。


「とにかくこの島に住みたくて、島のコミュニティセンターみたいな所に行って、家を貸してれませんか? と島のみなさんに直談判しました。島には不動産屋さんもないですし。そうしたら親切にしてくれる方とお会いすることができて、島内にあるいくつかの物件を見せてもらえました。それでいろいろ考えてここにしました。お風呂とトイレが改修されているので、家賃2万円と相場より少し家賃が高めですけど。ほかには、家賃3千円の物件もありましたよ」

問題なく2人暮らしができる居室の広さと収納の広さ。キッチン、お風呂、脱衣所もそれぞれ広い。


【暮らし】子供扱いされて、もらいまくる生活。

国に雇用されているので、給料ももちろん十分にもらっているはず。そう考えると暮らしに余裕があることが推察される


「家具家電はこれから買い集めるから、これから少しお金はかかるかもしれないですね」しかし食費に関しては島の人にずいぶん助けられているとのこと。「週に合計3回、バレーボールとゲートボールの練習があるんですよ。これがめちゃめちゃ面白いし、地域の人と仲良くなるきっかけになりました。僕より数年前から島に移住してきている同世代のカップルさんが居てくれているのも大きいと思います。そこで知り合うみんなからすると子供のような感覚だと思うのだけど、これ食べやあれ食べや、ってどんどんいただいてばかりいます(笑)。僕もたまに東京へ行ったときに、お土産を渡しますが、全然量も種類も回数も違います。もらってばかりです。笑」足らないものや嗜好品を仕事帰りに立ち寄る高松のスーパーで買う感じのよう。家賃補償はないけれど、交通費は支給されるそうで、船は定期券で通っている。「夜中にプリン食べたいっと思っても、コンビニエンスストアもないので、明日にするしかないです」と島の不便さを語りつつも、「自然と外食は減るし、少しは料理が上手になったかなって思います」と、料理の腕を上げている。

【将来】今の悩みは「恋人が来てくれるかどうか」

「この時間、この部屋は日が入っていい感じなんですよね。仕事終わりに帰ってくると暗くて寒くて厳しいですけど(笑)」

「東京も全然嫌いじゃなくて、友達もたくさんできたし大好きな町だったし。前職の職場でもまだまだこれからという時だったので考えたんですよ、数日。でもこの先も同じような話が来た時に動けないかもしれないと考えて。よし高松へ行こうと決心しました。その最後の最後に背中を押してくれたのが彼女だったんですよ」そんな彼女と3月にこれからのことを話される予定があると。「この家は水回りもきれいだし、部屋も広いし。この物件で彼女と一緒に暮らせたらなぁと考えています」なるほど、いろいろ考えた住宅選びの理由には、明確な理由があったということか。「島の人もみな、楽しみにしてるんで(笑)」

お風呂はかなり広い。脱衣所もかなり広い。トイレもきれいなものに改修されている。

ダイニングキッチンは広さも雰囲気も良さそう。「いろいろもう少し使い勝手を良くしたい」とのこと。


【選択】切り捨てざるを得ないから、切り捨てられる

「島暮らしをする上で、切り捨てざるを得ない部分がどうしても出てくるじゃないですか?逆にいうと、自然と切り捨てることができるようになるわけで」そう彼は言っていた。確かに都会には選択肢が多く、必然的に選択をせざるを得ない数も多い。しかし、1つの方向性にカジをきることを決めた人間にとって、余計な選択肢や選択回数は煩わしいだけで生産的ではない場合も多い。彼は島に住むという1つの選択をすることによって、自分自身の人生にとって「余計かもしれない選択肢」との出会いを回避することを選んだのだろう。いつまでいるイメージですか? と聞いた時、少し強めな口調で「少なくとも2~3年はここにいると思います」とはっきりと答えた。自分のことを「ゴニョゴニョ考えてしまいがちな人間だ」と表現していた彼が、少し強く言い切った背景には選択の手応えを感じていることがあるのだろう。一見すると不便に見える島こそが、今の彼にとってもっとも効率のよい場所なのではないかなと考え、会いにきて良かったとうれしくなった。

(文と写真:森岡友樹、イラスト:上野麗子)

最終更新日:2018年08月31日

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