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file.013 広島に本屋をオープンしに帰ってきた

2015年06月08日

夫婦漫才

file.013 広島に本屋をオープンしに帰ってきた

【連載】地方の若者たちの暮らし

file.013 広島に本屋をオープンしに帰ってきた

広島出身で、広島の大学に進学し、広島の企業に就職。転勤で行った先の東京で本屋になろうと決める。

「28歳くらいまで流れで生きてきた気がします」という清政さんが、地元広島への憤りで開業。

最近なにかと注目の「若者の地方暮らし」。住宅事情を中心にその実態をリポートしていく。13回目は
東京の本屋で2年間修行し、広島で本屋をオープンした清政光博さんを取り上げる。

安定した職から一転、本屋での修行を経て本屋を開業した経緯を落ち着いた口調で話す清政さん。

リフォーム済みのシンプルで落ち着いた室内に配置されているのは東京時代から使ってきた家具。

ダイニングキッチン。水回りなど所々に古いニュアンスはあるが、暮らしやすそうだ。

一人暮らしには十分な広さの1DK。市内の中心地にもお店にもほど近く、周囲に高い建物も少なく明るい室内。

「高校も大学も、自分の中でなんとなくという選択でした。誰かが勧めてくれるようなところに流されて行く、という感じでした。就職も同じで、大学で勉強した分野ではないですが、なんとなくデザインをしようと思って、経験がなくても雇ってくれるというDTPデザインの会社に入りました」

そして28歳の時、転機が訪れる。転勤で東京へ行くことになったのだ。

「このころまで、ほんとうに流れで生きてきた感じでした。それが刺激の多い東京で、3年目を迎えた30歳になった年に転職を考え始めました。このままでいいのか、ともやもやしはじめたときに311の大震災が起きました。でも、そのときもまだ自分のやりたいこと、やるべきことが見えないまま過ごしていたのですが、その年の10月に地元のリブロ広島店という書店が閉店するというニュースを知りました。もともと広島ってカルチャー寄りの本屋さんがほとんどない地域で、そんな広島でリブロは数少ないカルチャー方面に強い本屋さんだったのです。でもそこが閉店すると聞いて、悲しくなって、広島のことを考えたらなんだかイライラして(笑)。もともと、そんなに地元が大好きで地元に戻りたいっていうような気持ちはこれっぽっちもなくて、ただ生まれ育った広島がしょぼいって思うのが嫌でした。そういった怒りの気持ちから『だったら自分でやろうか』とスイッチが入って、やりたいことやるべきことがはっきりしてきました。」

【修行】2年は東京を楽しみ東京で修行しよう。

2012年の4月に退職し、まず2年東京の本屋のバイトで働こうと思い、それまで住んでいた池袋から西荻窪へ引っ越す。

「それまではやはり仕事中心でしたから。その2年は修行でもあり東京を楽しむ2年にもしたいと思っていたので、知らない東京を楽しめた感じがしました」

西荻窪は文化に興味関心がある人が多く住む街という側面がある。自分への投資としての引越、最適な場所へ住むという選択が正解だったのだろう。

バイト探しには苦労する。

「30歳で書店員経験なしで、アルバイトだと、なかなか雇ってくれなくて」

そんな中、2軒の本屋さんで働くことになる。

「1つ目はB&Bっていう下北沢にある本屋さんでインターン募集があって、ちょうど店舗立上げの本当に最初の時期で、店舗のペンキ塗り参加できるってことでこれはちょうど良いなと応募して、それはわりとすぐ決まったのですけど、次がなかなか決まらなくて。品川駅の中にある書店で面接が通って働きました。」

そうやって修行して2014年の2月に物件の契約をして6月にオープンをさせたそう。

【起業】手元にお金がなかったらやってないと思います。

店名はREADAN DEAT (リーダンディート)。READ(本) AND EAT(器)からもじっただけに、ロゴにも本と器が。

1年かけて集めた古本、リトルプレスなどの本がたくさん並ぶ本棚。一般書店にはない品揃えだ。

もう1つの主役となる器たちとともにカトラリーも並ぶ。現代作家の器や、定期的に民藝の器の展示販売も行う。

生活雑貨や文房具、食品、Tシャツなども厳選され置かれている。カルチャーショップといった感じだ。

雑貨とは一線を画すように、アートピースかと見まがうようなコンセプチュアルな商品も置かれている。

今後、少しずつ力を入れて取り扱いたいと思っている写真集は別の棚に置かれている。

木枠で区切ったスペースはギャラリーとしてさまざまなイベント用途に使われている。


「前の会社で働いていた貯金があったので助かりました。こういう用途に向けて貯めたわけではなかったですが。逆に、手元にお金がなかったらお店をやってないと思います。借金して始める勇気はありませんでした。失敗してゼロになってもくらいだったのでできたことでしょうね」

やはり元手があるのは心理的にも強いということか。

「お金の面でいうと、大手の取次業者さんと契約するためには多額の保証金が必要です。一般的な書店を目指していたのなら難しかったと思いますが、そもそも僕が主に取り扱いたいと思っていたのが、個人制作の写真集やリトルプレスで、そういう本の多くが大手の取次を通さずに入手できるものです。古本は東京に居た間に古書店を巡って集めました。本の面白い入手方法でいうと、この前、バックパックに自分が作ったリトルプレスを詰め込んだ23歳の若い人が、青春18きっぷで旅をしながら飛び込み営業で手売りしにきました」

書店の運営の方法も、お金がないならば、ないなりのやり方がいろいろあるのだ。

【生活】交際費がかかってはいるが。

少し食費と交際費が高いかなという印象。


清政さんのアパートは広島市内の中心地から5km圏内と程近い立地。リフォームされて、きれいになっているといえども、築年数はある程度経過していて、家賃も比較的安い。

「自転車がメインの移動手段です。程よい感じです。僕の地元は三原市っていうところで、市内に住むのは初めてですが、地元より暮らしやすいです。人が多い東京にいたときは、電車移動がメインでしたから。広島市はどことなくのんびりしているし、だいたいの場所は自転車で行けるコンパクトな街で便利です。ただ、僕は温泉が好きで車があれば広島県北部の温泉に行けるのでしょうが、今は車がないですから温泉に行くことができないのは残念です」

広島市街地の地図を見れば分かるが、そのほとんどが沖積平野なので市街地は平坦(へいたん)だが、中心部を外れると途端に山間部に入る。中心市街地だけの移動であれば、自転車で不便はあまりない。家計を見せてもらうと、食費と交際費がやや多いように見えるが。

「食費はそうですね、料理もしますが、まだ全然です。できあいを買うことも多いですし、自宅で第3のビールも飲むので(笑)」「今は特に、交際費がかさみます。いろんな人を紹介してもらったり、お酒に誘われたりしています。それは楽しみの時間でもありうれしいのですが、お金が掛かってます」

どうも嗜好(しこう)的な部分でもあるようで、全体的にお酒がらみに多少お金がかかっているようだ。


【将来】自分でも自分のお店がどう変わって行くかが分からないです。

清政さんのお宅に通じるお店の雰囲気。


目標としている本屋さんとかは?「名古屋にON READINGって本屋さんがあるのですが、ああいう幅広いカルチャーを紹介できるような本屋にしたいなとは思っています。でも、いままで広島になかったようなお店をいきなり始めたとしても、商売として厳しいだろうなと思います。だから理想はありますが、比較的手に取りやすい古本を置きつつ、リトルプレスも充実させていき、本屋さんと認知してもらってファンになってくれる人を増やして、そういう人と一緒にお店を育てていくイメージです。なので、将来、自分でも自分のお店がどう変わって行くかハッキリとは分かりません。本を売って利益を出していくのは難しいのですが、リアルな場で文化を楽しめる場所を作りたいので、例えばトークショーのようなイベントだったり、ギャラリーを使った何かだったりを発信していけるような、本屋さん以上の面白い場所として運営できればと思っています」

【有言】本屋をやりたいのですと積極的に言うようにしました。

清政さんの、本屋の修行をしている人向けのアドバイスになる話が印象的だった。「修行中に『本屋をやろうと思っています!』と口に出すのが一番良かったですね。最初は恥ずかしくって言えなかったんですが、言っていった方がいいとアドバイスをもらって、周りの人に本屋をやりたいと伝えるようにしました。すると、「へー、いいじゃん」と、わりと軽い感じで周囲の人も肯定してくれました。それだけでも嬉しかったのですが、その話を聞いた周りの人が、いろいろと人を紹介してくれました。だからできるだけ言葉にするようにしました。あと、言っちゃったしな、という自分へのプレッシャーも大きかったと思います。他のことに流されたり諦めたりしない根拠にもなりました」まさに有言実行。今まで取材してきた人たちに共通していることの1つにこれがある。今は多くの人が多様な生き方を楽しむ時代だ。みな、積極的に自分の方向性を発言して、周りの人に支えられることで、自分の生活を実現していっている。巻き込み力、巻き込まれ力の成せる技だ。清政さんのREADAN DEATも多くの人に支えられて、本屋の枠を超え、より魅力的な面白い場所になって行くのだろう。再訪できる日が楽しみだ。

(文・写真:森岡友樹、イラスト:上野麗子)

最終更新日:2018年08月31日

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