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file.014 京都を拠点に個人で不動産業を営む20代女子...

2015年06月26日

夫婦漫才

file.014 京都を拠点に個人で不動産業を営む20代女子|岸本千佳

【連載】地方の若者たちの暮らし

file.014 京都を拠点に個人で不動産業を営む20代女子|岸本千佳

リノベーション後、まだ数年なのできれいでおしゃれ。そして廊下が広い。

移住先として人気の京都を拠点に、個人で不動産業を営む20代女子

「若者の地方暮らし」が注目だが、住宅事情を中心にその実態をリポートしていく連載。14回目は京都のリノベーションされた団地に住む岸本千佳さん(29)。移住先として人気の京都を拠点に、個人で活動する不動産のプロとして注目を集めている。

小学校5年生の時にサグラダファミリアを新聞で見て決めていた

川沿いに連続で建つ低層団地の一室に岸本さんは住んでいる。団地の1階は片袖のアーケード商店街になっている。

ずっとにこやかな岸本さん。不動産の話をしている時が一番うれしそう。


岸本さんは生まれも育ちも京都府。大学で建築を学ぶために滋賀で一人暮らしを始める。

「小学校5年生の時に新聞でサグラダファミリアを見たのがきっかけで、自分の進む道は建築だと思っていたんです。でも、高校まで文系で進んで思考も完全に文系的で(笑)、その当時の大学の建築学科には、理系科目なしで進学できるところが本当に少なくて、滋賀で見付けました」

しかし大学に入ってそうそう、建築家になることはあきらめたそう。

「建築学科の人は大体建築家になると思って入学します。でも入学してほんとすぐ位に建築家って10年に1人位の逸材でないと食べていけないという現実を突きつけられます。本当に設計が好きならそれでもと思うのでしょうが、そういうわけじゃないと大学の1年生の夏には思っていました」

早くから建築家になると決めていた人生だが、あきらめた時には落ち込まなかったのだろうか。

「それがそうでもなくて(笑)、それがちょうど大学1年生の夏ごろに東京R不動産の書籍が出て、それを手に取って、おお、こういう世界もあるのか、設計士じゃなくてもこういうことができるのかということを知っていったのもあって、あまり落ち込む感じではなかったですね。もともと建築家以外で建築に携わるほかの職能を知らないままに建築家を目指していました。それが大学2年の夏には、学生運営の講演プロジェクトに東京R不動産の馬場さんをお呼びしたり、だんだん不動産という選択肢が自分の中で大きくなっていきました」

生まれ育った京都という風土も価値観と進路に影響を与えた。

「もともと京都では町家カフェなどのリノベーションした有名なカフェがたくさんあって、新たに建てられたカフェより、そちらの方がスタンダードでした。古く使われている建物の値打ちがあるという価値観の中で育ったからか、3年時には、もうリノベーション関係の職に就こうと決めていました。応募したのは『新卒は採用していません』という東京の会社だったのですが、ダメもとで連絡して何とか採用してもらいました」


そうしてシェアハウスなどを手掛ける不動産ベンチャーに入社。そこから退社までの5年弱の間、社内で『DIY賃貸』を立ち上げるなど、さまざまな業務を経験した。

働き出して3年後から、今後の自分の成長曲線を想定して辞め時などを考え始め、今の住まいでもある京都の『堀川団地プロジェクト』への参加者募集を知り、応募して採用された。堀川団地をリノベーションに参加して、格安の家賃で堀川団地に住むことになった。

京都に帰るのに接点が多くないのはキツいのかなと思っていた。

玄関口からキッチンまではフラットなコンクリートの打ちっぱなし。


その時は京都に帰るというのは、選択の1つにすぎなかったのに、その気持ちを大きく変える後押しをしたのが、プロジェクトの参加メンバーのメンツだったとのこと。

「いつかは京都に帰って来るとしても、人のつながりで成り立っている京都で、接点を多く持っていないのはキツいだろうと思っていました。このプロジェクトには、京都の重鎮(?)な方々が参加されていて、こんなチャンスはないだろうと思って。ともかくここに住んで、仕事はあとから探そうと考えていました(笑)」

収入部分の確保より、住む場所、そして関わるプロジェクト、関わる人を優先で暮らしを決めたことになる。それが28歳のことだそう。

「京都に帰るのは漠然と、30歳過ぎかなぁと思っていたので、自分が思ったよりは早かったですね。けど、いろいろ『今かな』と思うことが重なって」そうしているうちに今の仕事にも目鼻が立ち、そして入居がスタートする。

むき出しにされた配管等も特徴的。キッチンの青いタイルがかわいい。

玄関から入ってすぐ左手の部屋。こことは別に事務所も借りているが、自宅でも仕事ができるようにしている。


個人で活動する不動産業のお仕事。

連なり間の隣室。広い道路と遊歩道が設けられた川に面しており、採光と開放感ともに抜群。

以前は配膳用だった小窓が残されているのがチャーミングなアクセントに。

シャワートイレ付2K物件。一間分の収納をライブラリースペースにした為収納は半間分のみ。


岸本さんは、個人で不動産業を営んでいる。主な仕事や活動について聞いた。

「通常の不動産屋さんのように、店舗を構えて飛び込みのお客さんを受け付けてはいません。ご相談希望のお客さんには、まずアポイントを入れてもらい、事務所でご相談に乗らせてもらったり、現地でお話させてもらったり。賃貸も売買も、投資も相続も不動産の総合的な相談のパートナーを目指していて、例えるなら、数年先のお話はもちろん、『数年前のあれどうなったっけ?』ということも相談できる不動産の担当医、かかりつけ医師さんのような存在です」

なるほど、そして現在は具体的にはどういうプロジェクトを行われているのでしょうか。

「『京都移住計画』という移住希望者を応援する団体がありますが、これに不動産担当として関わっています。これが京都での活動の柱の1つになるなと京都に帰って来る前から考えていろいろ準備していました。それが1つです」

まだあるのですね。

「それと、京都でいろいろ不動産の仕事をしていくうちに、普通にやっているだけでは厳しいなというのが見えてきて、これまで市場に出てこなかった空き家の物件の大家さんから、直接連絡が来る仕組みを作るために、東京で関わらせてもらっていた改装可能な物件だけを扱うDIYPというサイトのことを思い出して、去年の8月に京都で『DIYPKYOTO』を開始しました。これは一般的な不動産屋さんではなかなか立ち入ることができない建築の知識が必要になってくる領域なので、いままであまり表に出てこなかった物件も扱えるようになるかなと。まだぼちぼちなんですけど、情報感度の高い大家さんからはけっこうお問い合わせいただいています」

なるほど。幅広く仕事をしている。まだあるそうだ。

「あとは企画ものですね。例えばシェアハウス。これは投資目的にもなりますが、こちらから提案した物件を買うなり借りるなりしてもらい、企画、運営をして、借りる人(店子)を見付けるお手伝いをしています。投資から内装からコンサルタント的な業務から実務から全部です。さすがに施工はできませんが、もう少し設計領域もできるようになっていきたいなと思っています」

今後の方向性

企画参加しているからではあるものの、やはり京都でこの条件で家賃2万8千円は格安。


今後の展望も聞いた。

「重点は不動産ですけど、建築も分かっている不動産業っていうのが今の立ち位置で、今持っているのは宅地建物取引士の資格だけですけど、今後どういう風にシフトするかを考えていて、二級建築士を取るべきか、それともファイナンシャルプランナーの資格を取った方がいいのかなど、いろいろと考えます。そして不動産に想いを持って不動産を生かしてくれる大家さんや、投資家の人と仕事をしていきたいです。もちろん、地元のおばあちゃんともお付き合いをしていきたいですね。孫が帰ってくるかどうかでどうなるか分からないけど、という話も聞きながら長期的に」

コーヒーと小説が幸せ。

「最近、本を読む時間、それも小説を読みながらコーヒーを飲む時間が至福の時だと気付いたんです。何を見ても何を読んでも仕事と結び付けて考えてしまうクセがあって、全然関係のない小説だけは仕事を忘れられるんですよね。小説ってコストパフォーマンスがすごくよくないですか?(笑)この間もたくさん泣いて。この感情のうごめきを500円くらいで手に入れるっていう」

そう話す岸本さんは本当にうれしそうだった。単純に仕事が好きだというだけでなく、仕事から離れることさえも楽しんでいる。そんな感じだ。ある意味、本当のワーカホリックなのだろう。不動産業という仕事が心底好きなのだろう。

そんな岸本さんと不動産の話をしていると必ず「人」の話になる。これは不動産屋として当たり前のように思われるかもしれない。だが実はそうでもない。不動産屋の多くは「一般的な人々」を見ている場合が多い。

しかし岸本さんは建築物としての不動産だけを見ているのではなく、それぞれの不動産を通して人と人の暮らしも見ているのだろう。

岸本さんの物件案内に同行したいものだ。きっと誰よりも笑顔でうれしそうに物件の説明をし、楽しそうに未来の想像をし、お客さんと一喜一憂していることだろう。

不動産は買うのも借りるのも売るのも、比較的大きな売買である。その大きな売買について、愛情を持って一緒に真剣に考え、選んでくれるパートナーが岸本さんであったらきっと楽しく、そして勇気付けられ、満足度は高いだろうと思う。

(写真と文:森岡友樹、イラスト:上野麗子)

最終更新日:2018年09月27日

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