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file.016 尾道のシェアハウス+オフィスで暮らす

2015年08月11日

夫婦漫才

file.016 尾道のシェアハウス+オフィスで暮らす

【連載】地方の若者たちの暮らし

file.016 尾道のシェアハウス+オフィスで暮らす

仲の良いメンバーでシェアしているお宅の前で。この建物は元診療所とその母屋だそう。

なんでものめり込み過ぎる性格と、そこから大胆に舵を切る性格。

最近なにかと注目の「若者の地方暮らし」。住宅事情を中心にその実態をリポートしていく。16回目は尾道のシェアハウスに住み「ものふ」の屋号で、主に地域づくり団体へのWebデザインのサポート事業を営む岡村虹二さん(28歳)。シェアハウスに住みシェアオフィスで働いていて、職場も訪問した。

インタビューは、岡村さんが利用するシェアオフィス「ONOMICHISHARE」のおしゃれな会議室で。

元倉庫をリノベーションしたシェアオフィスは海に面しており、大きくとった開口部から海と船、向島が望める。


港町にある倉庫だった事を偲ばせる外観の建物。外階段を上がると、現代的なセキュリティに守られた扉。その扉の向こうには、アンティークの机椅子が余裕をもって配置され、海が眼前に広がるぜいたくで居心地の良い空間が広がっていた。

岡村さんが職場にしているこのシェアオフィスに併設された会議室で話を聞いた。

「もともとゲームがすごく好きで、小中学生のころは毎日ゲームばかりする引きこもり気味の暮らしをしていて、このままじゃいけないと思って、それで神奈川の実家を離れて島根の山奥にある全寮制の高校を探しました。ゲームもテレビもダメ。自給自足での暮らしはいままでと真反対で充実していました。ただ買い物に行くのが極端に不便で、まっすぐ山を下りる道は獣道しかなく、毎回生い茂る薮を鎌で切り開きながら40分かけて下山するんです。町では鎌をポケットにさし込んだ高校生の集団は目立つし浮きます。そこでヒッチハイクを学びました(笑)。これなら早いし、鎌がないから浮かない!(笑)。それで、旅が好きになって、さまざまな地方へ放浪するきっかけになりました。

引きこもり気味からアクティブなヒッチハイカーへ。そのころから大胆に舵を切る性格だったようだ。

その後、地域福祉を学ぶため東京都内の大学へ進み、卒業後は児童養護施設で働く。しかし、子どものケアだけが与えられた職務である児童養護施設では、根治療法的、包括的な対応がとれなかった。現状のシステムに対して、もっと直接的に地域の福祉に関わりたい理想とのギャップを感じていた。その頃、横浜の黄金町で行われていた地域に関わったアート&デザインイベントに参加する。その現場に関わることで、人を魅了し巻き込んで行く力を持つデザインの方が、今の自分以上に、直接的に地域福祉に貢献できているのではないか、と思いはじめる。

そして舵を切る。結局、1年で児童養護施設を辞め、デザインの専門学校に入るのだ。

「Webデザインは昔から好きで、趣味でデザインしてたんですけど、今度はそれを生業にし、ゆくゆくは地域福祉とデザインを結びつけていきたいと考えたので、がむしゃらに仕事をもらって、がむしゃらに働きました。」

しかし元来の極端にのめり込む性格によってデザイン業界にのめり込み過ぎ、地域福祉から離れ過ぎたところでデザインの仕事ばかりをしていることにはたと気づき、これではダメだと再び大きく舵を切り、地域福祉分野で総務大臣賞を受賞していた島根県飯南町の地域おこし協力隊に入ることになる。

「協力隊の仕事はとにかく大変で、あっとういう間の三年間でした。おかげで私も島根を中心とした人脈のようなものができました。そこで協力隊の期間3年間が終了後、そのまま島根の飯南町でWebデザインの会社を起業をしようと思ったんです。ところが、町のネット環境がインターネット関係の仕事にはぜいじゃく過ぎて諦めざるをえなかったんですよね。それでじゃぁどこで起業をしようかと考えて尾道に決めました。」

何度も大きく舵を切りながら右へ行き、左へ進み、を繰返し、今があるといった感じだ。

なぜ尾道なのか?尾道の暮らしは?

気をつけていないと見落としてしまいそうな路地。岡村さんが住むシェアハウスもこの路地の奥にある。


「尾道に決めた理由は3つほどあって。以前、旅で訪れた時に、いつかここで暮らしたいなぁと憧れがあったのが一つ、二つ目は立地。地方でホームページの作り方を教える仕事をしているので、尾道から島根県松江市を結ぶ“やまなみ街道”尾道から四国愛媛へつながる“しまなみ海道”、そして関西から九州までを結ぶ“山陽道”が交差する場所で、地方へのアクセスが容易であること。最後三つ目に、家賃とオフィス料がとてつもなく安い。他の場所も探したのですが、だいたい家賃とオフィス料それぞれの光熱水費で合計15万円くらいかかっちゃうんです。でも、ここだったら3万5千円で済むんです。」

シェアハウスが月額2万5千円、あのオフィスが、個人会員の場合は月額1万円で利用できるのだ。

奥側の建物が元診療所、手前側の建物が元母屋の住居部分。


「実際に住んでみて思うのは、尾道は時間の流れがちょうど良いですね。神奈川や東京なんかの都会に居るとせかせかしちゃうし、島根に居るとのんびりしすぎちゃう。尾道はそういう意味で都会過ぎず田舎過ぎず、ちょうどバランスがとれていていいです。あと、尾道の人は開けた人が多くて良いなぁと思います。居酒屋へ行くと隣に座った人に『このあといい店紹介するけん!』と連れて行かれて、どんどん人がつながっていくのでむちゃくちゃ面白いですね。あとはほっそい路地にいいお店が隠れていたりして。うろうろしてると、あれ?こんなところに路地なんてあったっけ?って昨日まで見つけられなかった路地を発見して、そこに入るとまたいいお店があったりして。楽しいですね。不便は全くないですね。幸せだなって思う瞬間が増えました。」

共用部分に昔ながらの佇まいを多く残しているのが気に入っている。


岡村さんは、大学生のころに一度東京でシェアハウス暮らしをしていたそうだ。今回もシェアハウスを選んだ理由を聞いた。

「まず値段ですね。とにかく安い。家賃2万5千円で、しかも光熱水費込みなんです。でも入ってみたら安さよりなによりシェアメイトとの交流が豊かで楽しいので、いまはそれがここに住む一番の理由ですね。」

キッチンも広く住人パーティもよく開かれるそう。水回りは全体的に新しくリフォームされていて、きれいで使いやすそう。


当番を示すボード。名前でなく似顔絵表記なのがかわいい。


では今後もしばらくここで暮らして行くのだろうか。

「そうですね。シェアハウスは落ち着いたら出るかもしれませんが、しばらく尾道で暮らすイメージです。」

毎日1時以降は放課後

自室でも引続きお話を聞いた


「仕事をしにいろいろなところに行き、尾道で仕事をするときは事務仕事の日で、そういう日は毎朝4時過ぎに起きて、5時にはもうシェアオフィスに行って午後1時まで仕事をしています。そうするとだいたい8時間くらい働いていることになるので、昼1時すぎたらご飯を食べてビールを飲んで、そこから放課後の自習時間なんです。

今日は英語だ!って思ったら英語の勉強して、国語だと例えば本を読んだり、情報だ!ってなったら新しいプログラムの勉強をして。そうやってインプットとアウトプットのバランスを取ってますね。夕方はシェアメイトとダイエットの部活をして、(その後、呑みに行ったりして)夜10時過ぎには寝ます。“放課後のある暮らし方”と個人的に呼んでいますが、ものすごくおすすめです。」

荷物は押入部分を収納にし、そこに収まり切る程度に少なく全体的にシンプルな部屋。エアコンはない。


地方に仕事はあるのか?

Webデザインのような、都会の方が有利に思える仕事にも、地方で需要はあるのだろうか。岡村さんの具体的な仕事について聞いてみた。

「地方ではまだまだWebサイトの制作やデザイン業務の仕事はあります。ちなみに私の今現在の主な仕事の相手は地域活性系の団体です。地方では今Webサイト制作は“21世紀のハコモノ”と揶揄されていたりもします。地域作りを行っている団体の多くが、助成金や補助金などの一時的な行政からの金銭的援助を使って、高価なホームページを作っているのですが、更新費のことをあまり考えられてなく、助成金や補助金などの財源がなくなると更新がプツリと止まってしまうケースも多いのです。更新されないホームページは逆効果になる場合さえあります。そこで、私は更新の仕組をレクチャーしたり、容易に更新できるシステムを教えるワークショプを開いて、それを仕事にしています。ただ、Web製作も、ツールがより簡単なものへと進化しているので、十数年もすれば都会でも地方でもWebクリエーターやWebデザイナーという職種は、それ単体では成立しなくなると思います。それまでに私も、地方の魅力を引き出すスキルも磨いていかなければならないと思っています。そのスキルが後に地域福祉とデザインを繋ぐ知識になると考えています」

シェアハウスの元診療所部分はまだ未使用のまま。将来的にお店や飲食店にとシェアメイトと話しているそう。


薬の袋等が当時のまま置かれている。社会的な記憶は公共の財産として保存したいと考えてる。


玄関に入ってすぐ右手に行くと診療所跡。間取り図でみると二階左側が岡村さんの居室。


オフィス使用料の1万円が追加されても合計8万円。



必要に合わせて暮らす場所を変えることへの抵抗感

話していて気付いた。彼は何かをやるために、その居場所を変えている。そしてそれに違和感をいささかも持っていない。場所にこだわっていないのではなくこだわってはいる。こだわってはいるけれど優先順位としては「やろうとしていることに対しての都合」の方が優先されているのだろう。

合理的な考え方だ。決して一大決心!という重い感じではなく、比較的気軽に新しい場所へ進む。きっと、もし住宅を持つようになったとしても、同じように動くのだろう。とくに最近の若者に多い感覚であると私は思う。
Uターン、Iターン、Jターンなど、さまざまな地方移住の話があるが、こんな彼らに「ここに骨を埋める気はあるのか?」と迫ることはきっとマイナス要素にしかならず、ただただ彼らに選ばれ続ける地域であることが重要なのだろう。そのために必要なのは「最初の補助金」だけでなく「どんどんつながっていく人とのつながり」であったり、「昨日見つけられなかった路地裏の名店を今日新しく発見できたり」というような毎日の積み重ねなのではないだろうか。そう考えると、地方の一つの答えがここ尾道にはあるような気がした。

(文と写真:森岡友樹、間取り図:上野麗子)

最終更新日:2018年08月30日

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