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file.018 徳島に愛されてまちづくりをする新社会人

2015年08月24日

夫婦漫才

file.018 徳島に愛されてまちづくりをする新社会人

【連載】地方の若者たちの暮らし

file.018 徳島に愛されてまちづくりをする新社会人

健康的な笑顔で迎えてくれた室賀さん。大学生のころから地域と関わるさまざまな経験を積んでいる。

徳島で、まちの人に愛されながら暮らす、まちづくり会社で働く新卒社会人

最近なにかと注目の「若者の地方暮らし」。住宅事情を中心にその実体をリポートしていく。19回目は徳島県美波町にある地方を元気にする会社「あわえ」で今年働き出したばかりの室賀ゆり子さん(23)を紹介する。築100年以上の古民家と、その裏に比較的新しい民家が続けて建つ、2軒で1つの少し変わったお宅に訪問した。

建築から都市へ、都市から田舎へ、興味が移った。

美波町には日和佐港をはじめ良港が多く、漁業や回船で栄えた。また変化に富んだ海岸線は大変美しい。

兵庫県西宮で生まれた室賀さんは、中学高校の間、学校と水泳部、それに予備校に通う普通の高校生だった。大学進学を考える時に、まず建築に興味を持つ。

「でも本屋さんで建築の本を読んでいると、その隣に『都市』とか『街』とかの本があって、気がつくとドイツの本をはじめそういった本をどんどん読んで行くようになって、ああ自分は都市に興味があるのかなと思ったんですよ。」

具体的にはどういった本を読んでいたのだろう

「その時に読んでいたのは、例えばライトレールトランジット(欧州などで導入されている次世代型路面電車)のダイヤを街の皆で決めた街があって、その実証実験の経緯を記した本です。そうしたらちょうどそのころ、私が通っていた高校に鳥取大学の先生がお話に来られて、統計学で過疎地域のコミュニティバスやオンデマンドバスの運営を決めていく話を聞いて、面白そうだと思ったんです。それで鳥取大学に行こうと決めました。」

鳥取大学の社会開発システム工学科に進学。鳥取での暮らしが始まる。

「入学式の日にバイトの面接に行って回転寿司の店員に雇ってもらいました。あと他にも水泳の先生やいろいろと掛け持ちをしつつ、大学でもまちづくり関係の企画に参加しつつ、もちろん大学でも勉強しつつ、2年間通ったら、なんだか飽きてしまって。(笑)」

1年間休学し、大学在学中にインターンに行くことにする。主なインターン先は横浜のNPO法人「コミュニティデザインラボ」。

休学してのぞいた社会はどうだったのだろう。

「正直、大学の外に一歩出てみたら、まちづくりとか地域活性系の人たちは、さわやかでまじめ。あまりにも正論で。そんな人や団体が多くて私にとってみたら少ししんどいなと思う部分もあったんです(笑)。でもそのコミュニティデザインラボはカオスでぐちゃぐちゃしていて、めっちゃ面白いなぁと思って、会ったことないような人にたくさん出会って、人間味にあふれていて。こういう面白みのある人たちがやってるまちづくり系の現場もあるんだなと分かって、そしてこういう場所が自分に合うんだというのが分かって良かったです。」

1年の休学期間とインターン期間が終了するころ、鳥取市で、行政が主体となった住宅のリノベーションプランコンテストが開催され、室賀さんと友人の共同プランが採用され、一つの地域活性プロジェクトが動き出す。

「ちょうど休学期間が終了する前にプランの採用が決まって、休学期間中も休学期間を終えても鳥取と横浜を行ったり来たりしながら、いろいろな大人の人たちがたくさん手伝ってくれて本当に助かりました。」

きっと責任感をもって動く室賀さんに賛同して多くの人たちが関わってくれたのだろう。今も、そのスペースを用いたいろいろなプロジェクトが継続的に動き続けている。

ここにくるきっかけとなった今の会社と出会ったのはどういった経緯だったのだろうか。

「休学開けの夏休みに参加した、大学生向けに開かれた地域にかかわるアプリケーション開発合宿があって、そこで賞をいただいて、主催者側の関係者に居た、今の会社の社長にうちに来ないか?って誘われたのが最初ですね。それからことあるごとにここ(美波町)に呼んでもらって。でもその頃は一度都会に出ようと思っていたんですよね。でもいろいろ考えてやっぱり地方だなと、そしてここにこようと思った感じです。」
株式会社あわえは、今地方で注目されつつある企業の一つだ。「地域でのプレイヤーとなって日本に残る魅力の発信・継承と課題解決に取り組む」いわゆる“まちづくり会社”だが、ここで開発したソリューションを必要としてくれている地域外の人たちにも提供していくことを目指している。そこで室賀さんはどういった仕事をしているのか質問してみると、「美波町サテライトオフィス視察受付担当 、サテライトオフィス誘致事業 誘致推進担当 、インターン事業 企画運営担当 、古い写真のアーカイブシステム事業 現場担当 、参加型イベント 企画運営担当などです」という壮大な応えが帰ってきた。

大忙しだ。

「まだ起業2年目で、人出も足りていないこともあって、たくさんのことをやらなければいけません。特にいま、さまざまな人たちからたくさん注目されていて、来訪される方も多く、御案内させていただく回数も多いです。あとこの古い写真のアーカイブシステムの運用は私に任されている部分も多くて、今度隣町へ説明に行くことになっています。」

起業して間もない会社のために人数が少ないという理由だけで、新卒社会人に対して任せるにしては仕事の量も責任も多いといえるだろう。室賀さんが期待されていることの表れであろう。

「そうなんですかねー。うちの会社人出が足りないといいながら、オフィスの裏で魚釣りしよう! ってなったら仕事中断して社員ほぼ総出で魚釣りしてたりしますけどね。(笑)」

老人ホームに住んでいました。その後、今はシェアハウスに住んでいます。

こっちへ来て、すぐは社宅暮らしだったんですか?

「3月31日まで鳥取にいて、4月1日に引っ越して来て、1か月、老人ホームで暮らしていました(笑)。正確には、老人ホームだった施設を町が運営して、今はいくつかの会社も入居してて、それとは別に、町や我が社を視察に訪れた人たちが泊まる部屋が8部屋くらいあって、その一室で暮らしていました。その後、会社の同僚が暮らす駅前のシェアハウスに入らせてもらって、実はまだそこに住んでいて、あさって(7月はじめ)くらいから暮らしだそうと思っているんですよ。実はこの古民家はまだ借りたばかりで、片付けも掃除も、あまりできていなくて。」

4月に来て7月になるまで家探しに随分時間がかかりましたね。

「ずっと家を探していたんですけど、きちんと地域になじめるかも大事なことだと思うので、それも考慮して探すのでなかなか見つからなくて。見つかっても家賃が高かったり、他の部分で大家さんの都合と合わなかったりと。それで、つい最近この物件を見つけて、大家さんともうまく話が進んで借りられるようになったんです。」

田舎で家を探すのは大変だ。そもそも賃貸をしたことがない大家さんが多く、さまざまな理由で貸したがらないケースも多い。また田舎で古民家を借りようと思うと、昔の荷物がたくさん残っていたり、建物がいたんでいたりする場合も多いが、この建物は大変状態がよく、入居することが決まってから荷物もほとんど片付けてくれたとのこと。

「入居が決まって建物の草抜きまでしてくれたんですよ。後少し片付けて、掃除したら住めるようになります。そして移住定住のための住宅改装補助金が百万円規模で準備されているので、水回りなんかは住みながら直して行こうと思っています。」

少し変わった間取りですが、どういう風に使って行こうか、もうイメージはあるのだろうか。

「前半分、古民家の方を町の人とか友達、お遍路さんなどが立ち寄ってそれぞれが好きなことをできる拠点みないな場所にしたいです。そうすれば、自分にとっても町の人にとっても楽しいことが起こるきっかけになるだろうし、より豊かな暮らしになるだろうなと妄想しています。」

鳥取の田舎暮らしから、徳島県美波町の田舎暮らしになって違いはどうなのだろう。大変ではないのだろうないのだろうか。

前を行くタクシーの運転手さんがこちらに気付きパンを差入してくれた。


「今はバイクしかないので、雨の日の移動は大変ですけど、鳥取での暮らしとあまり変わらない感じで、問題も特にはないですね。海と山が近くて景色がきれいで晴れた日にバイクで走るのは気持ちいいですよ。出社時に海を見ながら走ってるとそのままどっか行きたくなっちゃいます(笑)。あとは、職人さんとかとの暮らしが近いのがすごくうれしいですね。大工さんや農家さんとか料理人さんもそうですけど、いろいろなプロの人と触れ合えるのはうれしいですね」

取材終わりに立寄ったおいしい中華料理屋さんでもお土産をもらう。



今を前向きに生きる。

「考えてみれば、将来どこで住むとか、どこで働くかとか、いままでもいつも瞬時の判断だったなぁと思っていて、いつかそんな瞬時の判断が来るまでここでお世話になると思っていて、正直先のことはあまり考えていません。」

このコーナーで取材させていただいている人たちの多くに共通すると思うことの一つに、先のことを考え過ぎず今を大事に行きている姿勢が挙げられると思う。つまり、自分たちの暮らしを手に入れている人たちの多くが、前向きに今を積み重ねて将来は将来でできることが増えれば次へ行く。 決して目標のために今を消費して生きているわけではないんだろうと。将来のことを考えて、将来のために備え過ぎて身動きがとれなくなるようなことがあれば、地方でたくましく生きる彼ら彼女らの暮らしを思い出して欲しいと思う。
(写真と文:森岡友樹、イラスト:上野麗子)

追記)
2016年6月27日:写真を一部削除しました
公開10カ月後、2016年6月に、大家さん側の都合により室内外の写真を削除しました。これは取材対象である室賀さんが今後も安定した生活を送れるように、最優先に考えた対処です。 読者のみなさまにはご迷惑をおかけして申し訳ございません。 これからも連載にご期待ください。森岡友樹

最終更新日:2018年08月31日

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