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file.019 帰るのがもったいなくて、金物屋に同居。

2015年09月30日

夫婦漫才

file.019 帰るのがもったいなくて、金物屋に同居。

【連載】地方の若者たちの暮らし

file.019 帰るのがもったいなくて、金物屋に同居。

金物店を営まれていた大家さんから譲り受けた、祭り用の「新貝金物店」と書かれた法被で迎えてくれました。

友達と共同生活。ただいま、5年経過。

最近なにかと注目の「若者の地方暮らし」。住宅事情を中心にその実態をリポートしていく。20回目は長野県長野市に建つ元金物屋を改装して暮らす小林隆史さん(25)。お友達と物件を探し2か月足らずで改装。共同生活で5年を過ごした現在をレポートします。

町はすでにウェルカムな状態だった。

玄関土間にて。朝一の取材で缶コーヒー持参で伺ったのですが、コーヒーを準備してくれていました。

20代半ばと思えない落ち着いた雰囲気の小林さん。


当時、信州大学の学生だった小林さんは、共にこの家を借りることになる白石さんと大学で出会い意気投合。大学で学び、遊び、好きな音楽等を話す毎日を過ごす中で「それぞれの家に帰って『また明日!』ってなるより、一緒に住んでしまえばいいんじゃないか?」と思い始める。そのころ、小林さんは実家暮らし、白石さんはアパート暮らしだったそう。

「もともと、白石が空間に興味があったり、もの作りが好きだったりして、『物件探して改装して2人で住むかー!』という話が出て。この地域で月に1回開催されている【空家巡り】に1月に参加しました。2月3月は大学が休みなので、その2か月で改装して住む計画で。そのはじめての空家巡りで物件を見つけないと間に合わない状態で……。その空家巡りで巡った空家が7軒。土蔵とかいろんなところを回ったんですけど、最後7軒目がここ、『新貝金物店=シンカイ』だったって感じです」

お店だった土間部分をはじめ「キメきらないようにして、決めない部分も残している。」とのこと。

遊びで作ったバーカウンターもありますが、「お店ではなく、家です(笑)」とのこと。


──当時のこの建物はどんな感じでした?

「金物屋だったんで、金物もいっぱい並んでいて、けっこう汚れた状態だったんですけど、間取り的にこれは面白いぞとなって。上も2部屋あるし、下もこういう感じで(広くて)みんなで集まってご飯とか食べられるし面白い、ここしかない!ってなって借りました」

──その空家巡りは地域活性系の団体が行っているのですか?

「もともと始めたのがナノグラフィカという編集をしたり企画をしたり喫茶店を運営している人たちなんですけど、その中には僕たちの大学の先輩たちもいて、もう10数年くらい活動をやっているんですよ。その人たちが、この町の空家などに明かりが灯ったらいいな、そうしたら町が元気になるだろうと思って空家巡りツアーっていうのが始まったそうなんです」

──10数年って長いですね!

「長いですよね。その人たちが学生だったころに、今のナノグラフィカになってる場所や、空家を改装して住んでたりとか、住みながらライブハウスやってたりとか、面白い活動をやっていたんですよね。それから10数年だそうで、当時はいろいろな誤解や偏見があったそうです。でも10数年続けてきてくれたからこそ、それが土台になって、ここにも僕たちがスッと入れるようになっていたわけです。それこそまさにウエルカムな状態で」

大学卒業後、安曇野へ。

あくまで家ということだが有名ミュージシャンもライブを行うことがあるそう。小上がりにも古いソファーがいくつか。

小上がりの一角には書斎が。左にかかったギターに、ランプにパソコンなど、趣味が色濃く反映されたスペース。


──大学を卒業された後はどうされたのですか?

「僕はそもそも教員になりたくて大学に通っていて、幸いにも安曇野で教員に採用されて、当初はシンカイから安曇野へ通おうと考えていたんですけど、教員採用1年目に毎日安曇野と往復は現実的ではないなと考え直して、いったんシンカイを出ました。でもその間には白石が『シンカイフリーマーケット』というイベントをはじめたり雑誌の取材時に呼んでくれたり、いい感じに巻き込んでくれていたので、通っていましたね」

──それがどういったタイミングで今のような形に?

「英語教員として採用されていたんですけど、毎朝中学生にグッモーニングエブリワン! ってあいさつしてて、でも実は外国に行ったこともなければ外国人と話したこともなかったんですよね。職員室で隣の席だった外国人教師にカタコトの英語で話したのがはじめての外国人との会話でした。そんな状態で中学生に英語を教えるってのがすごく違和感で、恥ずかしくて。個人的に納得できないなーという感じでした。もともとアメリカへ行ってみたいなーと思っていたのもあり、1年たって教員を辞めて、半年バイトしてお金をためてアメリカへ行って、帰って来て洋服の販売員をやりつつシンカイでの生活を再開しました。そのころ白石とか同級生のみんなは大学院生であと1年で卒業だねってタイミングでしたね。途中でゴンちゃんっていう後輩が共に生活してたりしつつ、白石は愛媛が地元で、地元でも面白いことをやりたいと言っていて、就職してここを離れるって感じで結果今は1人で生活しています。生活は共にしていなくとも、離れていても通じることがあったりして、今でもいろいろと話していますね」

改装作業

急な階段を上がって2階へ。広い居室が広がっている。雑然としつつも統一感を感じる。

2階のベッドと反対方向。ソファとロッキングチェアそしてベランダ。「夏に外でタバコ吸うと気持ちいいんですよ」


──改装は2人で始めたのですか?

「そうですね……。他にも友達が遊びに来てくれて手伝ってくれたりとか、高校の後輩が遊びに来てくれたりとか、隣の家の小学生の子どもが遊びに来てくれたりとか。隣の家の子どもが当時小6だったんですけど、今高校2年生なんですよ(笑)。僕が大学を卒業して一時期教員をやっていて、そのときに教えていた子どもたちと同じ年なんですよね。先日も夜、僕が1人で居た時に『シンカイは今後どうなったら面白くなるかなぁ』とパソコンに向かって考え事をしていたらやって来て、そこの古いソファに座ってなんかイイコト言い出すんですよ。『ここにくる大人は僕が思ってた大人とちょっと違った。みんなやりたいことを持っていてすげー頑張ってて、そういう人を見ていてなんかうれしいし、僕もこういう場所を大学へ行って作れるなら作りたい。』っていうようなことを言ってくれて。一番身近にいてくれるやつがこんなことを言ってくれてうれしいなぁと思って。それだ!って(笑)そういうことを身近で言ってくれる人、次につなげていってくれる人が出て来るようなことをやっていくのが『シンカイの面白い今後』なんだろうなぁって。僕が教員を辞めてでも、やりたかったことなんじゃないかなって気付いたんです」

学生ノリのシンカイから、社会人ノリのシンカイへ

朝の時間、シンカイの前は通勤通学のための人通りがたくさん。


「シンカイはあくまでもシンカイで、『家』というのが基本で、でもイベントやライブもありつつみんなの開かれた居間みたいな感じなんです。現在は僕が洋服屋で朝から晩まで結構がっつり働いてるし、土日休みじゃないので、学生ノリで集まってワイワイっていう感じではないですけど、それはそれで社会人ノリという感じでよいかなと思っています。

ここはあくまでも僕の家のリビングなわけで、友達の家に集まる為に時間を作ってわざわざ来るという感じに。そんな感じでよいと思うんですよね。ここを拠点に地域活性をしよう!とか、そういうんじゃないので」

──人通りの多いこの立地と魅力的な建物を活かしてもう一歩前へ進められることはないのでしょうか?

「うーん、今は僕たち20代の生活リズムに近い人だけが寄ってこれる状態ですけど、そもそもこの家の前が交差点で毎朝沢山の人が行き交っていて、例えばここで学生向けに30分勉強してっていいよって言ったり、コーヒーのめたりとか、ハムエッグとトーストで300円で出したりとか、朝開けたりとか、昼間、おじいちゃんおばぁちゃんが寄っていける場所にしたりとか世代を越えていろいろな人が寄っていける場所には将来的にはしたいなと。幸い、信州大学の学生がいるので、そういう子たちとワークショップを開催したりとか、そういうことを考えたりすることはありますね」

すぐに動くことはないようだが、環境が許すならより開かれた面白い場所にもなりそうな気配を感じた。

土地のカタチが生かされてる間取り。


【経費】
▽支出内訳 

シンプルな生活費。うらやましい。



大変なことは1つもありませんでしたね。

朝の慌ただしい人の波を見つめる小林さん。「この建物なんだろう? ってのぞいてくれる人もいますねー。」


「ここまでくることに大変なことはひとつもなく、すべて自分で選んでやっていることなので」と小林さん。自分で決めて進められることが、ひとつひとつにある大変さを凌駕していたのでしょう。

そんな小林さんとしばらくお話をしていて非常に印象的だったのは、「決めきらない」スタンスを常に崩さないこと。そういう部分を常に残して、そこからつながる可能性を楽しむ姿勢。そして生活を表現だと認識しているところ。

「これだけ窓がオープンな状態で暮らしていると、自分のチョイスしたものが表現になるわけですよね。クロスの貼り方にしろ、椅子の配置にしろ、食器の置き方にしろ。全部自分の表現になるわけで、もちろん、自分の中で満足していない部分もあって、ああキッチンをもっときれいにしたいなだとか。でもそういうのも含めてこの建物にいいね!って興味を持って見に来てくれる人がいるんですよね。自分がやってみたいなと思うことを楽しみにしてくれる人、楽しみを持った人がまた人を呼んで、『やってみたい!』が連鎖していく状態が(起っていく状態が)いいなぁと思うんですよ。

メイちゃんって仲間がいて、もともと料理が好きで、作る料理が本当に美味しくって、シンカイにみんなが集まったときに料理を作ってくれるようになったんですね。それで、シンカイで料理を作ってみんなで食べるようになって、で、『メイちゃんの料理』ってみんなの認識がひとつできて、それからメイちゃんがする料理も含めていろいろなことを好きな人が来るようになって、類は友を呼ぶじゃないけど、そういう連鎖がいいなって。そういうのって普通のアパートに住んでてもなかなか体感できない部分かなと。」

そういう、「ここはどういう場所」「何何に使う場所」「誰が使う場所」ってイメージを決めきらないで次に湧いてくるイメージを楽しむのが好きなんですよね、といっていた小林さん。

それこそまさにクリエイティブな思考だと思うし、まさに表現なんだと、シンカイは小林さんなりの町とのコミュニケーションツールでもあるんだろうと思った。

住むための家、ではなく、町に暮らすための家。シンカイの更なる変化を楽しみにしています。

(文と写真:森岡友樹、間取りイラスト:上野麗子)

最終更新日:2018年08月30日

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