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ビルでよく見るあの模様の天井。舐めても食べても大丈夫な吉野石...

2015年12月09日

夫婦漫才

ビルでよく見るあの模様の天井。舐めても食べても大丈夫な吉野石膏のジプトーン

西村まさゆきのちょっと気になる1

ビルでよく見るあの模様の天井。舐めても食べても大丈夫な吉野石膏のジプトーン

こういう模様の天井、気になっているんです。

実は食べても大丈夫!? 天井の模様は一体何なのか聞きに行く

これ、食べても大丈夫……なの?


いま、人類は、果てのない憎しみ合いの連鎖に陥っている。

悲しみに満ちた世界……。

そんな世界を思うとき、ぼくは悲しくなってくる。そうだ、涙がこぼれないよう、上を向いてあるこう。

そう、上をむ……天井、穴あいてんな。っていうか、なんで天井はみんなこんな模様なの?

ジプトーンというらしい

建築士の友人に聞いてみると、天井のあの模様は「ジプトーン」というもので、吉野石膏の商品であることまで教えてくれた。

というわけで「ジプトーン」の秘密を探るべく、吉野石膏さんにお話を伺いにやってきた。

吉野石膏の島崎さんにお話をうかがいました


吉野石膏といえば……タイガーボード。愛らしい虎のキャラクターが登場するテレビCMはご存知の方も多いと思う。

テレビでみるやつや!


──吉野石膏さんといえば、虎のキャラクターのタイガーボードが有名ですが……。

島崎さん(以降カギカッコは島崎さん)「あれ、なんで虎がキャラクターかご存知ですか?」

──え、なんでしょう? ……さっぱり分からないです。

耐火(たいか)ボードからきてるんです。タイカボード、タイガーボード……

──えーっ! ダジャレ!

「まあ、そういうことになりますね(笑) 当時(大正10年)は製品に強い野獣の名前を付けるのが流行だったことと、耐火ボードをもじったんですね」

タイガーボード。まさかのダジャレ由来である。ちなみに「えーっ! ダジャレ!」といったとき、本当に椅子から3センチぐらいは飛び上がった。

吉野石膏は、1901年、山形県の吉野村の吉野鉱山で産出される石膏を採掘したのが始まりである。社名の「吉野」は、地名由来であるが、商品のタイガーボードはダジャレ由来である。

現在、吉野石膏の石膏ボードの国内シェアは8割を占めており、日本で建てられるほとんどの建物の壁や天井は吉野石膏の製品であるといっても過言ではない。

──1901年といえば、明治時代ですよね。

「石膏ボードは、1901年にアメリカ人のオーガスチン・サケットさんが発明したんですが、日本では1921年(大正10年)に私どもが『タイガーボード』の名前で発売したのです」

ここで「タイガーボード」のダジャレが大正時代のものであることが判明した。さすがの大正デモクラシー。これぐらいの茶目っ気があってこその民主主義、自由主義である。

あの建築にも使われている

──明治大正の昔から建材として使われているんですね。となると、石膏ボードが使われたいちばん古い建物は何ですか。

「いちばん古い建物は、旧帝国ホテル。あそこに私どもが石膏ボード納めて、使われていました。愛知県の明治村に移設されて、いまだに使われてますね」

──明治村の旧帝国ホテルの建物って文化財(登録有形文化財)じゃないですか! 文化財のタイガーボード……すごい。

フランク・ロイド・ライトが設計した。旧帝国ホテル。残念ながら1964年に取り壊され、玄関部分だけ愛知県犬山市の明治村に移設されたが、そこにもタイガーボードは使われていたのだ。

この模様をつけた意味

──今日はジプトーンのことを伺おうと思って来たんですが、そもそもあの天井の模様はいったい何なのか? というところなんですが……。

「ジプトーンというのは、天井に使う石膏ボードの商品名、商標名ですね。あの模様自体は、大理石の『トラバーチン模様』を模したものなんです」

これが本物(大理石)のトラバーチン模様


で、これがジプトーン、これ見たことあるでしょう?


たしかに、大理石の模様に似ている。ところどころ細長い穴があいている感じなどを見ると「なるほど模してるな」と、あごひげを撫でながらいいたくなる。

──この模様は、パターンになっているんですか?

「そうです、ですから何枚か見比べて見ていただければ、同じ模様が出てくると思います。あと、作ってる工場によって模様のパターンがちょっと違うんですよ。だから、地域によって天井の模様のパターンはちょっと違ってくると思います」

──えっ! ホントですか! 今すぐ飛び出して東京と大阪で模様のパターン調べて確認したくなりますね……。

「『ジプトーン』は、1968年(昭和43年)に開発されたんですが、この虫が這ったような細長い穴とドットになっている穴。この模様が何のために付いているか……分かりますか?」

──うーん、なぜでしょう?

「これは、天井に貼り付けるとき、下地にとめるためのビスの跡や、釘頭(くぎとう)をごまかすために付いているんです」

──ははー、なるほど……。

「設計士の先生方は、本当は白いきれいなのを使いたいかもしれないけれど、ビスや釘頭が見えるよりこっちの方がいい、というわけでずーっと売れ続けて、ロングセラーになってるわけです」

──なるほど、お値段はおいくらですか?

「安いですよぉ……1平方メートルでだいたい2000円から3000円ぐらいです。必要であればホームセンターで購入できます

ジプトーン、安い上に、入手しやすい。かといって買う必要は普通あまりないのだが。

そうそうそう! これこれこれ! 天井触れるなんて幸せだー!

石膏は食べても大丈夫

──そもそも石膏って何なのか? というところも気になりますが……。

「石膏って、地球上のどこにでもほぼ無尽蔵にあるんですよ。ただし、日本だけ産出しない。それこそ山形の吉野鉱山で少し採れたんですが、今はほぼ100パーセント輸入に頼ってます」

石膏は、古い地層に無尽蔵にあるんです


──日本で産出しないんですか?

「ようするに、古い地層でないと採れないんです、大昔の海が干上がって、貝殻のカルシウムと硫酸が反応して、堆積する。そしてその上に塩分が積もって岩塩になる。ですから、岩塩を掘り尽くした後は石膏が採れるんです」

──日本でも山口県の秋吉台あたりにいっぱいありそうな気がしますが。

「あれは石灰なんです。石膏と石灰は違うものです。化学式でいうと石膏は硫酸カルシウム、CaSO4、石灰は酸化カルシウム(生石灰)でCaO3、別物です。」

──別物だったんですね……石灰は校庭のライン引きでよく使った記憶があります。

「生石灰は水を加えると発熱して危ないです。水と反応した生石灰は水酸化カルシウム、Ca(OH)2になって強いアルカリになります。すると手がかぶれたりしますから、いま校庭のライン引きは炭酸カルシウム(CaCO3)を使ったりしてますね」

──石膏はどうですか?

「石膏はそんなことありません。石膏のコウは、軟膏や絆創膏の「膏」の字を書きます。これは薬という意味で、漢方薬では解熱剤や整腸剤などで使うぐらいです」

──え! そうなんですか? じゃあ、熱があるときに天井や壁をべろべろ舐めると熱が下がるかもしれない?

「いや、さすがにそれは……ないです。石膏ボードの石膏と薬の石膏はちょっと違いますから。ただ、石膏ボードは口に入ったとしても、害はありません。」

──石灰に比べて安心すぎますね。

「そもそも、石膏はお豆腐を固めるための凝固剤、ビールの醸造のときにもpHを調整するための調整剤や澄まし粉として使われています。だから、冷奴でビール飲むときは石膏を食べてるようなもんですよ(笑)」

──へぇー、石膏なしではビアガーデンが成立しないんですね……。

「石膏は他にもテレビドラマで「ゲソコン」なんていって犯人の靴跡の型をとったりしますよね? あれも石膏です。ものすごく身近な材料なんです」

──あぁー、あの白いやつ、そうか石膏だ!

「骨折した時に、包帯に白い粉をつけて水を加えて固めますよね。あれギプスっていいますけど、ギプス(Gips)はドイツ語で石膏っていうんです」

──あぁー、ギプス! 石膏のドイツ語だったんですね。

「さらに言うと、石膏は英語でジプサム(Gypsum)です。ジプトーンの『ジプ』はこれですね」

──へえー、語源はそこだったんですか。

「石膏は自然界に存在する状態で『結晶水』という状態の水分を21パーセント含んでいるんです。つまりジプトーン1枚(455ミリメートル×910ミリメートル)が500ミリリットルのペットボトルをぶら下げてるようなものなんです。だからボードがいくら火で熱されても結晶水が蒸気となって熱を逃がすので、火の当たってる裏側は水の沸点100℃以上にならないんです。木の発火温度は260℃、だから燃えないんです。それが耐火性能の秘密です」

畳み掛けられる納得のトリビアに、先ほどから間抜けな相槌しか打てていない。ものを知る快感に腰砕けになっている。それにしても「石膏」ってなんて奥深いんだ!

奥深すぎるぞ! 石膏の世界。島崎さんと町に繰り出して、天井について教えてもらいたいです

鉄筋の代わりに紙

──そもそも石膏ボードってどうやって作ってるんでしょう?

「工場では、ドロドロにした石膏を2つ並べた紙の間に流し込んで固めるんです」

──紙ですか?

「そう、紙です。石膏は圧縮には強いんですが、曲げる力には弱いんです。そこを補うために紙を使うんです。コンクリートは中に鉄筋入れますよね? あれは押す力には強いけれど、引っ張る力には弱いから鉄筋入れるんですが、石膏ボードは鉄筋の代わりに紙で覆うんです」

──確かに、石膏ボードの表裏みてみると紙みたいなのが張り付いてますね。

「石膏は固まるときに針状の結晶で固まります、その針状の結晶が紙の繊維にガッチリ突き刺さって、固まるんです。ですから糊を一切使わない。つまり石膏と紙以外使ってないんですよ。だから、リサイクルもしやすい。有機物のノリを使わないんで防腐剤(ホルマリン)も使わない安全な商品なのです。」

超高層ビルができるのは石膏ボードのおかげ

──石膏ボードはどれぐらい作られてるんでしょう?

「26年の国内実績で年間で約5億6千万平米ですね」

──5億……ちょっと想像つかないですけど。

「面積に直すと、東京23区の東側三区、墨田区、荒川区、江東区をのぞいた部分とほぼ同じ面積ですね」

──日本国内でそれほど、使われてるということですね……。

「石膏ボードはコンクリートより非常に軽いんです。コンクリートは比重が2.3、石膏ボードは0.67、だから水に浮きます(※比重が1より大きいと水に沈み、1より小さいと水に浮く)。軽くて、丈夫で、耐火性能に優れて、遮音性もある。石膏ボードがあるから、超高層ビルなどが可能になるんです」

──そうか! 確かに高層ビルの壁や床を全部RC(鉄筋コンクリート)で作るとそんなの重くて話にならないですね。超高層ビルは石膏ボードの技術があってこそのものなのか……。

奥が深すぎる……石膏ボードの世界……

ほんの軽い気持ちだった。「天井のあの模様はいったい何なのか?」

メーカーに直接ききに行ったら、奥が深すぎる石膏の世界を垣間見てしまった……。

身近すぎてその価値に気付かないものってたくさんあるけれど、石膏ボードも意外とそうだった。

石膏があるからこそ豆腐も食べられるしビールも飲めて、骨折も直せる。しかも雨風しのげるだけじゃなくて、火にも強い。

こんなに恩恵を被むっているにもかかわらず私たちが石膏について何も知らないのは罪深い。

せめてもの罪滅ぼしに、この記事を読んだ後、刑事ドラマで石膏で足型を撮るシーンをみたときに「あ、硫酸カルシウムだ」ぐらいは思い出してほしい。

取材協力
吉野石膏展示室
〒105-0003 東京都港区西新橋2-13-10吉野石膏虎ノ門ビル
03-5156-0068(吉野石膏虎ノ門ビル受付)

西村まさゆき(にしむらまさゆき)フリーライター。鳥取県生まれ。東京都在住。好きな食べ物は海苔。好きな元素はガリウム。趣味、切手集め。路線図集め。尊敬する人はワシントン(正直だから)。Twitter:tokyo26(https://twitter.com/tokyo26)

最終更新日:2018年09月26日

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