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file.020 大山の雄大な裾野で農業をする25歳夫婦

2016年02月08日

夫婦漫才

file.020 大山の雄大な裾野で農業をする25歳夫婦

【連載】地方の若者たちの暮らし

いま住んでいる大山町営団地の前で

いま住んでいる大山町営団地の前で

大山の雄大な裾野で農業を始めるために移住した國吉さん

注目の「若者の地方暮らし」。住宅事情を中心にその実態をリポートしていく。連載17回「雄大な山裾に広がる大山町の古民家を買う」で訪問した大山界隈で若者の動きがあるらしい。そこで、短い期間ながら、大山町の城付シェアオフィス兼シェアハウスの「のまど間」に滞在し、大山のさまざまな若者に話を聞いた。まず1件目は鳥取県大山町の町営住宅に夫婦で暮らしている國吉さん夫妻(ともに25歳)。夫は地域おこし協力隊として農業の研修を受けつつ、妻も働きながら、自分たちが根を張る予定の土地や住宅を探している。

DKを囲うように3つの部屋がある。日当りはよい。

DKを囲うように3つの部屋がある。日当りはよい。

大好きな鳥取に帰りたい、という想いから始まった

DKには多くの野菜や果物が。買うことは少なく、ここにあるものは、ほとんどが作ったもの、もらったものだ。

DKには多くの野菜や果物が。買うことは少なく、ここにあるものは、ほとんどが作ったもの、もらったものだ。

普段は使っていないという四畳半間は来客時などに活用。

普段は使っていないという四畳半間は来客時などに活用。


同い年の2人。岡山県岡山市で生まれ育った夫と、鳥取県鳥取市で生まれ育った妻は鳥取の自動車教習所で出会い、遠距離恋愛の末、結婚。

夫は高専から神戸大学農学部への編入をし、妻は栄養学を学んできたという。

「高専で技術とか科学の勉強をしていたのですが、そのころもう車も売れなくなっていたり大量生産大量消費という風潮でもなくなってきていたり、ちょうど、リーマンショックの流れもあり大手企業さんの派遣切りとかが問題にもなっていて、そういう時期に高専を卒業するタイミングだったのですが、この先、進む方向を考えた時に。人間にとって大切なものはなんだろうと考えていたところ、自然、農業、教育などに興味を持ち出して、その中でも食べて行く基本は農業だろうと考えて、神戸大学農学部に3年次に編入しました。

神戸大学在学中も1年間、休学して海外の農業を知るためにアフリカへ行ったり、沖縄で働いたりと自然を通した体験を重ねてきました。23歳で大学を卒業をして、兵庫県西宮にある自然体験や農体験を行う農業系のNPO法人で2年間ほど働いていました」

妻も結婚まで食品関係の仕事をし、結婚を期に夫のいる兵庫へ。2人で兵庫県宝塚での団地暮らしを経て、大山へJターン。

「嫁さんが地元が好きで、鳥取に帰りたいというのはずっとありました。ある時、テレビ番組で地域おこし協力隊を取り上げていたので、興味を持ち、調べてみたらちょうど鳥取の大山町で就農を行う協力隊員の募集を見つけました。僕自身も将来は農業をして自然に寄り添いながら生活したいと思っていたので、これだ!と、即応募しました」

バタバタと家探しをする間もなく町営団地へ

大山町のほとんどは大山の広大な裾野にあたるので、水も農地も本当にたくさんある。

大山町のほとんどは大山の広大な裾野にあたるので、水も農地も本当にたくさんある。


「家が決まったのがもうギリギリで。採用が決まったのが2月末。4月1日からの仕事開始に間に合うように3月中に引越を完了しなければいけなかったので、すぐ家探しとなったのですが、大山町には不動産屋もなく、また県外ということもありなかなか大山に足を運ぶこともできず。時間もないので、役場の方にピックアップしていただいた中から選ばせてもらいました。本当は一軒家に憧れていたのですが、それは後々自分たちで足を運んで探すことにしようかと。まさに現在も家探し真っ最中ですね(笑)」

「家に関してはこっちに来てすぐ空家バンクに登録したり知人に紹介してもらったりして、出物を見にいっています。私達の場合は農業に適しているというのが一番の条件で、作業小屋や農地がついているか、もしくは家の近くにそれらを借りれる場所があるかという点が重要になってきてしまいます。そうすると、なかなか見つからなくて。農業を始めるためには初期投資がかかるので、なるべく住宅に関しても費用を抑えたいと思っているので更にハードルが上がってしまうんです」

大山町には不動産屋がなく、行政主体の空き家バンクが頼みの綱。近隣の米子市にある不動産屋さん経由でも、やはり数が少なく、補修して貸出し可能にされているのでで高額な賃料になっていたり、農作業に向いていない物件だったりと希望に合う物件とは出会えていないという。

「それでも最近またちょこちょこよさそうな物件を教えてもらえているので、縁かなと思って頑張って探します」

農作業や酪農に向く肥沃な土地で。

大山を車で走っていると見かける芝生畑。広大。

大山を車で走っていると見かける芝生畑。広大。

大山の裾野の裾が海沿いまで広がり、町民の多くはその辺りに住んでいる。農家向きの住宅は少ないエリア。

大山の裾野の裾が海沿いまで広がり、町民の多くはその辺りに住んでいる。農家向きの住宅は少ないエリア。


大山町は中国地方では1、2を争う程に農業の生産力が高く、また米だけなくネギ、キャベツ、ブロッコリーなどさまざまな野菜や梨やブルーベリーやメロンやスイカなどの果樹、クリや山菜なども多く採れる。酪農も行われていて、珍しいところでいうと芝生栽培も盛んだ。豊富な山水、肥沃な大地、そして美しい海が大山には広がっている。一次産業にはもってこいの場所だ。この土地で野菜が好きな國吉さんは何を育てるのだろう。

「うーん、お世話になっている農家さんがメインで白ネギを作っていらっしゃるので、自分も白ネギは作りたいと思っているのですが、住む場所によってそこの土にあった作物を作ることになりますから、まだ何とも」

なるほど、実はまだここにも住宅探しの心理的なハードルは存在しているようだ。

大山町は、いわゆる平成の大合併で旧三町が合併してできた町で、とても広く、その中に標高1729mの中国地方最高峰の大山がそびえ、海が広がる場所だ。同じ町内といっても環境が極端に違う。

求める環境を探して、家探しはまだしばらく続きそうだ。

田舎の良さとそうでないところ。

キッチンと和室6畳の境目が後付けのようになっていて、ひょっとしたら元は2LDKだったのかもな間取り。

キッチンと和室6畳の境目が後付けのようになっていて、ひょっとしたら元は2LDKだったのかもな間取り。

2人で働いていてこの支出で済むなら田舎暮らしがいかに金銭的余裕があるかが分かる。

2人で働いていてこの支出で済むなら田舎暮らしがいかに金銭的余裕があるかが分かる。


大山町に暮らしてみてどうなのだろう。大変なこととか、都会と違うことは? 今後も暮らしていけそうでのだろうか?

「町の人にはよく見られていると感じますね。地域おこし協力隊ということもあって、なおさらかもしれません。おかえり、ただいまと声をかけあったり、隣近所の距離感は都会に比べて近く感じます。うわさもあっという間に広がりますよ。ただ、困ってるといううわさも広がるので、そういう時は集落内でみんなで協力したり、田舎ならではの良さだと思います。ただ、干渉されるのが苦手な方には少し窮屈に感じてしまうこともあるかもしれません」とのこと。

妻も「外から帰って来て、自分たちの部屋に入ったらすぐに玄関バーンって開いて『そろそろ帰って来ると思いよったわぁ』ってたずねて来たり(笑)。見られてるんだなぁとは思います」

「あと、噂がすぐ広がります。笑 それ以外にも良くも悪くも情報の伝たちは早いですよね」

飲み屋や飲食店が少ないのは若い2人にとってどうなのだろう。

「飲み屋さんは少ないですけど、飲み会は多いので。笑 農業関係の人だけでなく、漁業関係の人と海っぺりで飲んだりとかも多いので楽しいですし、飲食店とかが少ないのは気にならないですね」

「あぁでも一つだけ、酒が回ると人の悪口がぽろっと出てきちゃう方もたまにいらっしゃって、こそだけはちょっと苦手だなと思いますかね」

しかしそれは全国的に見てもたいして変わらないだろうが、おそらくこれまで、そういうことにあまり出会って来なかったのだろうなと思わされるほどの2人のポジティブオーラを感じた。

移住マッチングが成功するか否かには、住宅、住まいが大きく関わる

いつも顔を見合わせて話し、笑い合う2人。

いつも顔を見合わせて話し、笑い合う2人。


「國吉さん夫妻は本当に良い夫婦なんですよ!」取材の前後に、こうした地元の方たちの声が多かった。

実際話を聞いて、本当に良い夫婦だなと思ったのと同時に、過疎が進む中山間農業地域にとっては宝物のようなこの2人が、ひょっとして、住宅や農地の都合が付かなければ、招いたはずの大山町で就農できない可能性がある、ということに思い当たった。

もちろん地域おこし協力隊という制度にも賛否両論があると思うが、現実問題として既に就農、移住定住を目前に控えている念願の農業後継者がいるというのにも関わらず、田舎型の空家問題の解決にほど遠いというのは、大事なところで宝の持ち腐れとなってしまっているのではないか。

町営住宅は大山町に限らず地方では人気の住宅だ。この住宅に入りつつ、自分たちが別に持つ自宅は自宅として手放さない。もちろん、そこにもそれぞれの思いや事情があるだろうが、結果として、地元そのものが、若い人たちの移住ニーズに対してハードルをあげてしまっている。

最適な物件や過度に安価な物件をあてがってほしいといっているわけでなく、適正な競争や選択がしやすい環境を作ることは地域が担う社会的責任ではないだろうか。

願わくば、彼らのように志を持ち、笑顔でチャレンジする若者たちが動きやすい田舎が、どうやったら作っていけるのかを、田舎だけでなく都会の人も身を切る構えで真剣に考えてほしい。「関係ない」や「田舎だからなかなか変わらない」や「頑張ってるつもり」と思って思考を停止してしまう前に。

(文と写真:森岡友樹、イラスト:上野麗子)

最終更新日:2016年02月10日


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