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浅草の古物件をセルフリノベ。“住居兼カフェ”を作る

2017年05月17日

夫婦漫才

浅草の古物件をセルフリノベ。“住居兼カフェ”を作る

おうち開業ストーリーvol.11

浅草の古物件をセルフリノベ。“住居兼カフェ”を作る

ガーリーな雰囲気で美味しいコーヒーが味わえるカフェ店内

期間1年、経費500万円かけて壮大なDIYをやりきったカフェオーナーに聞く

「おうち開業ストーリー」第11回目は、浅草の古物件を自らの手でリノベーションし、自宅とカフェ「チョコレイト・ジーザス」の併設を手がけた平野千穂さんにお話を伺いました。以前暮らしていた賃貸物件で、キッチンの使いづらさから大家さんにリノベーションを提案するも断られたのがきっかけで、7年前に立石で中古マンションを1370万円で購入、リノベーションし、そして現在の浅草の賃貸物件に移ったそうです。


──最初にリノベーションした時のことを詳しく教えてもらえますか。


以前住んでいた賃貸物件で、家の中を好きなようにいじれないことがすごく嫌だったので、思い切りました。7年前はまだ今ほどリノベーションが社会に浸透していなくて、専門の会社に頼むと少し高額になりそうだったので、建築士さんを見つけて一緒にデザインを考えて、工務店とも相談しながら進めていきました。

まずすべての壁を壊したのですが、壁がなくなるとマンションって「箱」の状態になるんですよね。そこから作ってもらって、全部で800万円くらいかけました。


リノベーションした立石のマンション


──購入して作り上げた部屋を手放すのは、なかなか勇気のいることだったと思いますが、現在の店舗兼住宅に移ろうと思い立つきっかけはあったのでしょうか?


ものが好きな割に執着がない私の性格もひとつの要因ですが、もともとカフェをやりたいとは思っていました。カフェって、コーヒーだけじゃなくて、空間を提供する場所なので、いつか、そういう空間ごとデザインをしたいと考えていました。


カフェの心地の良い空間


空間映像作家の夫の手伝いで、アートディレクションをしたり、私は美術セットを作ったりしているのですが、その頃大掛かりなセットを製作することが増えて、家の中が木材だらけになっていって。それで「もうここで暮らすのは無理だ」と思ったので、すごく言いづらかったのですが夫に店舗兼住宅を探して引っ越ししてはどうだろうと相談を持ちかけてみました。すると夫も同じように思っていたようで、やってみよう、と意外にも快諾してくれました。


はじめはそのときに住んでいた立石エリアで探したり、他のエリアも探したりもしたのですが、そのうちに、わたしたちの好きな浅草にいい物件がないかと探し始めました。でも台東区も高くて、なにより「住める・店が出せる・夫の仕事ができる場所」となると、なかなか見つからず……。探し始めて1年ほど経ったある雨の日、その日もいい物件に出会えず、心が折れかけて、もうこれで最後にしようと決めて入った不動産屋で、運命の出会いがありました。


──ドラマみたいですね(笑)。


そうなのです(笑)。すごく親切な不動産屋さんで、お店に入ると、おばさまがゆっくりと私の話を聞いてくれました。ひととおり話し終えた後に、「実はね……売ろうか、建て替えてマンションにしようか、どうしようか困っている物件があるのよ」と、紹介されたのがこの物件でした。そのまま、その日に現地を見せてもらえて、外観の「フルタ靴店」の看板を見ただけで家の中を見てないというのに、もう決めてしまいました。即決でしたね。ちょうど、それまでのザァザァ降りの雨が止みました。


昔は靴屋さんだった浅草の古物件。こんなに華奢な千穂さんだが、この物件のリノベ作業のほとんどが彼女によるもの。


そのあと大家さんと家賃やリノベーションの件の交渉をしたのですが、大家さんもこの建物を残したい気持ちがあったようで、建物がぱたりと横に倒れなければ何をしてもいいよ、とおっしゃってくれました。そして、先日このお店になった家を見にいらっしゃった時は、あまりの変貌ぶりに驚きつつも、とても喜んでくれていました。


──そしていよいよリノベーションが始まるのですね。

リノベ作業を始めた頃(1階・カフェ部分)


はい。2階住居部分は職人である友人主導で行いました。そこで見学したノウハウを1階のお店部分のリノベーションにさっそく活かして、1階は全部自分でやりました。どうしてこんな大変なことをしようと思ったのか、その理由を考えてみると、立石のマンションのリノベーション時に、自分では作らず見ていただけなのですが、見ていたら「自分でもできるんじゃないかな」という気になってしまったのが原因です(笑)。耐震補強も含めて費用は500万円ほどかけました。廃材を捨てるにもお金がかかるので、再利用することもあって費用を抑えられました。前回のマンションのリノベーション同様、ここでも最初に壁や天井を壊して大きな箱にしたのですが、低い天井の上から大きい梁(はり)が出てきた時にはテンションが上がりましたね。


現れた立派な梁(はり)は生かして洋服掛けに(2階・住居部分)

梁から吊した洋服たちのシルエット(2階・住居部分)


一番大変だったのは、もともとある建物の外壁の中に新しい内壁を作る作業でした。


外壁の中に、内側の壁を作っている(2階・住居部分)


土台を作って、そこに木の枠組みを作って骨組みを立てて、板をはめて、石膏を塗るという一連の作業を、木工職人の友達の指示を仰ぎながらほとんど1人でやりました。これからしていく作業を考えると膨大すぎてさすがにだんだん不安になって、1時間に1回くらい「もう無理なんじゃないだろうか」と弱気になる時期もありましたけど、幸い夫が楽観的で根拠もなく「できるよ」と言ってくれる人なので、とても救われました(笑)。


キッチンもお手製です(2階・住居部分)


いま立派に見えているお店の入り口の通路も、元々は何もなかったところを、壁を作って車庫と分けて作ったものです。その頃木材などを調達していた南千住にあるロイヤルホームセンターはトラックを2時間貸してくれるので、その便利さから通いすぎてカードがゴールドになりそうです。わたし、かなりの上客だと思いますよ。


──壁を作るという発想がすごいですね。他に、作っていて特にこだわったところはありますか?


作業していて自分でも初めて気付いたのですが、私、ドアが好きみたいで。


もともと映像制作の美術セットを作っている影響で、いろいろなものの仕組みを見る癖があるのですが、ドアは特に面白いですよ。ホームセンターによく、飾りのついた細長い木材が売られていますよね? 私も以前は、何に使うのだろうってずっと不思議に思っていたのですが、ドアの表面などに装飾する「モールディング」という名前が付いています。それをドア本体となる板と組み合わせて、取手を選んで取り付けて、初めてドアがドアらしくなるんです。


アンティークショップで手に入れたドアもありますが、いろんなドアを観察して、見よう見まねで自分で作ったドアもいくつかあります。ドアのデザインを考えるのはとても楽しいですよ。


あとは、寝室がお気に入りです。寝室の一角にあるお風呂に入っている時に「なんていい家なのだろう」としみじみ感動しています(笑)。


手作りのドア(1階・カフェ部分)

上部分の小窓は、アンティークのドアに合わせて職人の友達に作ってもらった(2階・住居部分)

寝室に猫足のバスタブ(2階・住居部分)

洗面台も手作り(2階・住居部分)


──ドアが好きって、千穂さんらしくてとても素敵ですね。お店の方のインテリアでこだわったところはありますか?


まず、床ですね。これ、木材をひし形に切り出して3色に塗ったのをパズルみたいにはめ込んであるだけで、接着していないのです。あと、本当はアンティークのカウンターを置きたかったのですが、死ぬほど高いので手作りしました。ここにもドアを貼っています。


錯視のようなデザインでおしゃれな床(1階・カフェ部分)

ドアで装飾した手作りのカウンター(1階・カフェ部分)


インテリアを参考にしたお店は、お手本にしたいインテリアNo.1の、アムステルダムの元パン屋さんが経営するカフェ「De Bakkaersswinkel(ダ・バッカーズウィンケル)」と、ブルックリンの「BAKERI(バケリ)」です。大きいテーブルを部屋の真ん中にひとつ置くアイデアは、BAKERIからいただきました。食器や雑貨、装飾品などはアンティークかジャンク品、または手作りものがほとんどで、とにかくガーリーなものを選んでいます。「コーヒー好きの女の子が遊びに来てティーパーティーをするお部屋」というイメージがコンセプトにあるので。


映像作品のために製作したというツノウサギのオブジェ(1階・カフェ部分)

棚などもすべて手作り(1階・カフェ部分)

美味しいコーヒーが淹れられるカフェのキッチン(1階・カフェ部分)


──店内どこを見ても本当に可愛いですよね。壁の色もピンクと水色ですが、派手すぎないので空間としても落ち着きます。ぜひ女性のお客さんに来て欲しいですね。


壁のペンキの色にはこだわりました。イギリスとアメリカのメーカーを扱っているカラーワークスというペンキ屋さんによく行きましたが、その場で調色してくれるし、アドバイスをくれたり、すごく悩ませてくれるお店でとてもおすすめです。コーヒーというと男性的なイメージがありますが、ここは女性が気軽に遊びに来られるようなお店にしたいです。私自身、昔はコーヒーが苦手だったのですが、駒込の百塔珈琲で飲んだときに初めて美味しいと感じて以来コーヒーにハマったので、このお店もそんなお店になれるといいなと思っています。


コーヒー豆は百塔珈琲から仕入れている(1階・カフェ部分)


──さいごに、今後千穂さんのようにリノベーションしたいと思っている方々にアドバイスをお願いします。


このお店の店名「チョコレイト・ジーザス」は、トム・ウェイツの曲名からとっています。「日曜に教会なんか行くんじゃねぇ、自分の中の神様が見守っていてくれているから」という内容の歌詞をトム・ウェイツがくだを巻いて歌っていて、とても好きな曲です。


この歌詞じゃないですけど、私は行動を起こす時、自分の中にある衝動や思いだけを大事にしています。なので、アドバイスをするとしたらひと言、「人の言うことを聞かない」ですかね(笑)。周りがなんと言おうと関係なく、自分がどうしたいのか、自分の内面ととことん向き合って、はじめて納得いくものができるのです。自分の“やりたい”という思いを信じることが一番の力になります。


それと、辛かった過程は忘れて、出来上がった結果を楽しまないとやっていけないです(笑)。最後は執念でやりきるしかなかったです。


浅草のこのあたりは、お店もたくさんありますが未開拓の場所も多く残っています。近所の人やお店とも丁度良い距離感で、とてもお店を出しやすい環境なので、若い人もやってみると楽しいと思いますよ!


ここのリノベーションを始めて1年経ちますが、まだ全体の構想の半分くらいしか完成してません。住居とお店は何とか形になりましたが、1階奥を映像製作のアトリエ、2階の半分はゲストルームにしようと思っているんです。靴屋だった当時も貸し間にしていたみたいで、ここに住んでいたことがあるという方が先日いらっしゃいましたよ。


あとは、照明も好きなので手作りしていこうと考えています。こうやってちょっとずつ手を加えていけるのも、住居兼店舗をリノベーションする上での楽しみのひとつかもしれませんね。浅草という立地を生かして、ゲストルームが完成したら外国の方々にもぜひ遊びに来て欲しいです。


トイレの照明(1階・カフェ部分)

住居の照明(2階・住居部分)


リノベーションを進めながら、お店も落ち着いて経営していきたいとおっしゃっていた千穂さん。自分のしたいことと真っ直ぐ向き合うその生き方ゆえなのか、ほんわかと優しい人柄の奥にみなぎるフレッシュで力強い生命力を感じました。そして「チョコレイト・ジーザス」は、そんな千穂さんのものづくりパワーがゆったりと漂う、特別な空間です。


美味しいコーヒーや手作りスイーツの香りに包まれて、ほっと一息。浅草へ遊びにいらした際は、ぜひ足をお運びください。


(取材・文:中澤綾香)


取材協力

最終更新日:2017年05月17日


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