ページトップへ

Yahoo!不動産おうちマガジン は家探しのヒントが満載の情報サイトです!

>
>
長屋住人の暮らしはミニマリスト! 江戸時代の生活を覗き見して...

2017年05月29日

夫婦漫才

長屋住人の暮らしはミニマリスト! 江戸時代の生活を覗き見してきた

西村まさゆきのちょっと気になる6

長屋住人の暮らしはミニマリスト! 江戸時代の生活を覗き見してきた

完全再現

落語に出てくる小道具の実物を見たい

落語がメディアで取り上げられる機会も増え、落語がテーマになったドラマや映画も相次ぎ、寄席にもたくさんの人が訪れている。


落語ブームである。


この連載の担当をしてくれている、編集の河内さんも、このところ落語を聞きはじめたという。

ただ、落語には分からない言葉が多い。

ふだんあまり聞き慣れない道具の名前や言葉が多く登場し、建物や家具などの名称も、昔と今とでは呼び方が違うものがある。


落語の演目『へっつい幽霊』に登場する「へっつい」だとか、『壺算』の「いっかのかめ」「にかのかめ」。なんてのはとっさにイメージしずらい。


いったいどうすれば分かるのか?


実際に見に行けばいいのだ。うってつけの資料館が深川にあるんです。

江戸時代の長屋をほぼ完全再現

江東区にある清澄白河駅から徒歩5分


江戸時代や昔を原寸大で再現した博物館や資料館は東京都内にもいくつかあるけれど、江東区にある「深川江戸資料館」の充実具合はすごい。


完全に江戸の長屋が再現されているのだ。

原寸大の江戸時代の町。この頃は、ふすまに名前を書いて表札代わりにしていた。ちなみに、江戸時代の農民や町民(百姓)にも名字はあった。小林一茶、二宮金次郎などは農民出身だが名字がある。百姓は公的に名字を名乗る事はできなかったものの、お寺の過去帳や奉加帳を見ると普通に名字が書いてある

魚の油を売るお店


立派な建物の米屋さん


これ、ミニチュアとかじゃなくて、1分の1スケール。実物大である。

もちろん外観だけではなく、長屋や商家の中も細かく再現してある。

長屋の住人の家。厳選されたものしかない


小さな家にも立派な神棚がしつらえてある。奥の囲いは押し入れ代わりでふとんがしまってある


町単位の共用スペース。簡素な稲荷神社と共同トイレ、ゴミ捨て場、風呂釜があった。


東京は、昔の面影を残した町がとても少なく、まして江戸時代の雰囲気を残した場所は、皆無だ。


昔の町の様子が、体感して理解できるこういった場所の存在はとてもありがたいものがある。


一階の部屋はすべて入ってもよいし、置いてある家具や調度品は実際に触っても構わないのだ。

長屋の部屋ひとつずつに設定がある

深川江戸資料館の小張さん(左)と筆者(右)。ふたりが入っているのはコタツ


深川江戸資料館の小張さんにいろいろと解説をしてもらった。


──長屋の部屋ひとつづつの再現度が高くて、といっても本物は見たことないですけど。本当に人が住んでそうですね。


「ありがとうございます。長屋の部屋ひとつずつに、ちゃんとどんな人が住んでいるのか設定があるんです」


──設定があるんですか?


「今いるこの部屋は、親子三人でお父さんは米屋に勤めてる職人さん。子供はまだ2歳ぐらいの設定です」


──まさに「金坊」(※1)が出てくる落語の家族構成ですよね。落語の演目『初天神』(※2)とか『真田小僧』(※3)みたいな。


(※1)「金坊」

落語によく登場するキャラクター。5、6歳の子供はたいてい金坊。大体は、親顔負けの物知りだったり、妙に弁が立ったり、ずる賢かったりする。

(※2)『初天神』

初天神(1月25日に天満宮で行われる年初の祭り)に連れて行ってくれとせがむ子供・金坊に「何もせがまないなら連れて行ってもいい」と、しぶしぶ祭りに連れて行く親父だが、結局、飴や団子をせがまれて、凧まで買う羽目になる。

(※3)『真田小僧』

親父に小遣いをせびる金坊は、子供のくせに講談調の噺が妙に巧い。親父は金坊にそそのかされ、結局小遣いを子供にやってしまう。


──これ、こたつですよね?

炭を入れた囲いの上にふとんをしいているコタツ。小さいので、今の時代にもよさそう


「そうですね。櫓炬燵(やぐらごたつ)ですね。こたつというと、テーブル型のものをイメージしてしまいますが、昔はここに火の付いた炭団(炭の粉を丸く固めたもの)を入れて温まっていたんですね」


ふとんをめくるとこんな感じ。


──懐かしいな。これ、電気のやつですけど、実家で使ってました。『按摩の炬燵(あんまのこたつ)』(※4)という落語があるんですけど、あの噺は、今のテーブル型じゃなくて、櫓炬燵の方をイメージすると、しっくりくるんですよね。


(※4)『按摩の炬燵』

火の用心から、炭火を使う炬燵を使わない商家の番頭に、私にお酒を飲ませて体を温めさせてくれるのなら、「生炬燵」として足を温めて差し上げます。という酒好きの按摩。最初は上手くいっていた「生炬燵」だが、調子に乗った商家の小僧たちが我も我もと入ってくる。

生活のすべてがこのひと部屋で行われていた

──このついたての脇に何があるのかと思ったら、布団が畳んでありますね。

腰くらいの高さのついたての囲いの中にはふとんがしまってあった


「昔は、この長屋のひとつの部屋で、寝室、ダイニング、リビング、すべて兼ねてましたから、押し入れのない長屋は、布団を朝畳んでこうやって脇にしまうとつい立てで隠しとくんですね」


──確かに、こうやってつい立てで区切れば、整理整頓されてる感じはしますね。

「昔は着るものもそんなに持ってませんでしたから、荷物が少ないんです」

天井の見せる収納スタイル。なるほど、いい方法。


──子供のおもちゃも屋根の隙間に挟んであるでんでん太鼓と風車ぐらいですね。昔は大火も多かったから、身一つでサッと逃げられるように荷物が少ないんですねえ。


──隣の部屋はまたさらに簡素ですね。

貝のむき身を行商していた商人の家


「この部屋は、むき身売り(貝のむき身を行商していた商人)の一人暮らしという設定ですね」


──部屋も、板張りでむしろ(藁などの草で編んだ敷物)を敷いてますね。現代だと、フローリングでこっちの方が主流ですけども。逆に、お向かいのお宅は畳敷きで、ちょっと暮らし向きがよさげですね。

三味線の先生をしている、35歳の未亡人、おしづさんの家


「ここは、唄のお師匠さんの住まいですね」


──なるほど、だから三味線やら、唄の本ですかね? 置いてあるんだ。鏡があるから、女性のお宅ですね。

四つ並んだ杵の絵は、長唄三味線方の屋号によくある「杵屋」にちなむ


──扉に名前が書いてありますね「於し津」ってのは「おしづ」ですかね? 落語だと『湯屋番』(※5)で若旦那が妄想するお師匠が住んでいるのはこんなところかな。


「江戸時代の町人は、けっこう習い事が好きで、こういった先生ってのは色んな所に住んでいたみたいですね。江戸時代の人の習い事好きは『あくび指南』(※6)なんて噺を聞くとよく分かりますよね」


※5『湯屋番』

吉原通いが親にバレてしまい、勘当されてしまった商家の若旦那。出入りの大工職人である熊五郎の家に転がり込むものの、まったく働こうとしない。見かねた熊五郎に、働くことを勧められ、銭湯の番台の仕事を見つけてくる。しかし、番台の上で妄想癖が爆発する。

※6『あくび指南』

八五郎は友人・熊五郎に「あくびの稽古に行かないか」と誘われる。「あくびの稽古?」といぶかしがりながらも、物珍しさについていく。あくびの師匠は、八五郎に「夏のあくび」を指南する。


「ここのお師匠さんは猫が好きで、猫を飼っているという設定ですね」

猫の家。かわいい


──あ、これは猫の家なのか。猫ちぐらっていうのかな。


「屋根の上にも猫がいまして、名前は実助っていうんです」

屋根の上の猫


──設定こまけぇ!

気になるあの言葉は?

──落語に『へっつい幽霊』(※7)ってあるんですけども、「へっつい」がなんなのかよく分からないんですが、実際にへっついってありますか?


(※7)『へっつい幽霊』

ある男にへっついを三円で売った古道具屋。しかし、明くる日、男がへっついから幽霊が出てきたとへっついを返品しにきた。決まりどおり、半額の一円五十銭で引取り、店頭に並べるとまた売れるのだが、幽霊が出てきたとまた返品に来た。品物がなくならず一円五十銭ずつ儲かるので、喜んでいたら、逆に幽霊の出る道具を売る店という噂がたち、商品がぱったり売れなくなってしまうが……。


「へっつい、こちらですね」

狭い台所。必要なものしかない


──かまど(写真左)ですね。


「そうですね、かまどです」


──落語では、へっついを古道具屋で買うわけですが、これは取り外し可能なんですか?


「これは取り外し可能です。自分持ちの家財道具のため、持ち運びできました」


──しかし台所、狭いですねー。

「昔は冷蔵庫がなかったのでこれぐらいのスペースでも充分だったんですね」


──そう、冷蔵庫なかったんですよね。つまり、その日買ってきた食材をその日に全部食べきっちゃう。宵越しの銭は持たないじゃないですけど、宵越しの食材は持たなかったんです。その代わり『かぼちゃ屋』(※8)みたいに、わざわざ路地まで食材を持ってきて売ってくれる行商人がいっぱいいたんですよね。


(※8)『かぼちゃ屋』

二十歳になってもぶらぶら遊んでる、頭がちょっと弱い与太郎に、なんとか仕事をさせようと、叔父さんは与太郎にかぼちゃの行商をやるように言い聞かせる。しかし、人よりちょっと間が抜けている与太郎、すんなりと商売をすることができない。


──あと、もうひとつ疑問に思っていることがあって『壺算』(※9)という噺で「いっかのかめ、にかのかめ」ってのが出てくるんですね。かめは「瓶」だろうなと分かるんですけれど、そのまえの「いっか」「にか」というのはなんなんでしょう?


(※9)『壺算』

少し間の抜けた男が、かみさんに二荷の水瓶を買ってきておくれと頼まれた。しかし、一人じゃ持てないし、間が抜けているから、兄貴に手伝ってもらうことに。兄貴は、瀬戸物屋につくと、一荷の瓶を値切って買ってしまう。しかし、これは計略で、買い間違えたと言って一荷の瓶を返品するときに瀬戸物屋を言いくるめ、二荷の瓶を一荷の瓶の値段で持っていこうとする。


「瓶がこれ(下写真左)ですね」

水を保存する瓶(左)と水をくんでくるための手桶(右)


「いっか、にかというのは、一荷、二荷と書きますね、これは、瓶に入る水の単位です」


この手桶の単位が0.5荷


「この手桶が0.5荷。つまり、天秤棒で前後に手桶をぶら下げて、ひとりで運べる状態のものが一荷。二荷は2人いないと運べない量ですね。この手桶4つ分ということです」


──なるほど。じゃあ、二荷の瓶ってけっこうデカイのかな?


「一荷二桶十六貫といいますから、一荷で十六貫、いまの単位で60キログラムですかね」


──ということは水60リットル。2リットルのペットボトル30本分ですか。台所の水瓶に備蓄しておく水の量としてけっこうリアルな感じですね。


……というわけで「へっつい」と、「一荷、二荷」の謎は解明された。やはり、実物を見ると理解が早い。


次回は、深川江戸資料館で落語の謎を探る第2弾、ミニマリストの江戸っ子と消えた商売についてです。お楽しみに。


(取材・文:西村まさゆき)


取材協力

最終更新日:2018年08月31日

キーワードを入力してください

キーワードから探す


本文はここまでです このページの先頭へ

Yahoo!不動産 おうちマガジンとは?

不動産にまつわるマジメな記事からおもしろ記事まで、家さがしが楽しくなる情報をお届け!新しい暮らしのヒントが満載のマガジンです。