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東京から石垣島へ期間限定の移住 魚を描く画家の生活

2017年06月23日

夫婦漫才

東京から石垣島へ期間限定の移住 魚を描く画家の生活

地方の若者たちの暮らし(23)

東京から石垣島へ期間限定の移住 魚を描く画家の生活

海に漂うクラゲを描く長嶋さん

自分と石垣島をつなぐ、黒潮と魚たち

青い海と自然豊かな緑に囲まれた石垣島


美しい海に囲まれる石垣島。昨年、石垣島に魚の絵を描くために移住した、画家の長嶋祐成さん(34歳)。


パネル張りされた紙の中を泳ぐシイラとアマゴ

魚たちがくれた、石垣島移住へのきっかけ

石垣島への移住のきっかけは、岩波書店の「カニのつぶやき」という書籍で、長嶋さんの絵が採用されたことでした。その書籍の中で著者の小菅さんは、海洋生物の研究者でありながらも、まるで文学者のように海の生き物たちの生態や人との関わり方を描いています。この仕事をきっかけに小菅さんと長嶋さんは仲良くなり、しばらくして、小菅さんが海外に滞在している間に、石垣島にある家に住んでみないかと提案されました。


表紙や版面を彩る長嶋さんの魚たち


「サバやアジ、イワシみたいな食用魚が好きなんです」と、南の魚にあまり興味がなかった長嶋さん。世界の多くの海を調査・研究してきた小菅さんに、目の前に広がる青い海、緑の山、夜になると満天の星空を堪能できる島で、魚の種類も多い、そんな石垣島の魅力を紹介されて、少しずつ気持ちが動きました。


東シナ海から日本列島の南側に沿って、房総半島の東に流れる暖かい海流、黒潮。東京近郊で出会う魚の中にも、石垣島を通るこの海流に乗って、長い旅をしてきた魚がいます。「生命力にあふれた南国の海で泳ぐ魚と、これまで東京になれ親しんだ魚はつながっている」、そう考えると魚と触れ合いたい気持ちが強くなったんです、と長嶋さんは話してくれました。

退路を断ち、覚悟を決めて石垣島へ

石垣島に移住する前は、魚譜画家として活動する傍ら、WEB系企業の会社員として働いていた長嶋さん。会社の待遇に不満があるわけではありませんでしたが、石垣島への移住を期に退職することを考えていました。


仕事の量や関わり方を調整しながら、会社に席だけでも残してはどうかと、会社側からの提案もありました。安定的な収入や福利厚生のありがたさを理解している長嶋さんでしたが、その提案に感謝しつつも、画家としての創作活動に専念し、言い訳できない環境に自分を追いやるために、会社を辞めて石垣島へ発つことを決断。


白い紙の隅に描かれたイカ

潮の満ち引きに合わせて、日々を暮らす

石垣島での暮らし方について質問すると、長嶋さんは「カッコつけて言うと、潮の満ち干きに合わせて生活するのが理想ですね」と少し照れながら答えてくれました。取材の日はちょうど大潮で、最も水位が高くなる満潮が朝と夕方に2回、最も水位が低くなる干潮が昼と夜に2回ありました。大潮の日は、通常より魚の活動も活発で、観察できる魚も多くなります。朝夕の1日に2回ほど川や海辺で魚を釣って撮影、昼と夜は遠浅で生き物を観察し、絵を描いています。


どんな顔つきをした魚なのか、身体はどんな感触をしているのか、どのように泳ぐのか、どのように暴れるのか。長嶋さんは、その魚の表情や体形、身体の動きから受けた印象を描くことを一番大切にしています。仮に、写真をそのままトレースするように描いても、思うような絵にはなりません。自分の心の中にある生き生きとした姿を、紙の上でいかに表現できるかをいつも考えているそうです。


生活費については、家賃以外の生活費は東京とあまり変化がありません。2~3か月に1度程度、東京に戻るので、1か月あたりで計算すると2万円ほどの交通費を支払っています、と長嶋さんは説明してくれました。


【生活費】

  • 家賃:1万円 
  • 光熱費:約2万円
  • 通信費:約0.5万円
  • 年金・保険:約5万円
  • 食費:約2万円
  • 交通費(航空券など):約2万円

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 合計 約12.5万円 


海の生き物をじっくり観察できる、透明度の高い海岸


カメラに照れ笑いする長嶋さん

人と自然の境界線は、自分で決める

石垣島の家は、長嶋さんが住みはじめる前に誰も住んでいない期間がしばらくありました。そのため移住してきた当初は、我らが主人と言わんばかりでクモ・ムカデ・ヤモリが住んでいました。


「自然を大切に」東京に住んでいるときは、何の疑いもなくそれが当然だと思っていました。でも、そう思えるのは、自分自身が人と自然の境界線にいなかったからだと、今の生活を経験して思うようになりました。ちょっと目を離せば、庭は雑草だらけになり家の中は虫だらけに、さらにカビも生えてきます。ここで生きていくためには、自分の領域を決めて、自然がその領域を侵食してきたら押し返す、それを繰り返していくしかないのです。共存しつつも、自然と人間がせめぎあっている様子が想像できます。


家の外観。人と自然は、その境界線を常に探っているという。


贅沢なつくりの2階建て


東京の一等地でも、人と自然の境界線はあります。石垣島と大きく違う点は、その境界線を意識せざるを得ない人の割合が少ない点だと思います。少なくとも僕は、その境界線をこれまで意識していませんでした。公園の芝生や花壇が美しいのは、自分以外の誰かが自然と対峙して、その境界線を維持しているからなのだと気づきました。


自分と自然の領域の境界線は、都度、自分の頭で考えていくしかないのです。この気づきは、石垣島の暮らしが与えてくれた大切な贈り物かもしれませんね、と長嶋さんは話してくれました。

できることは今やる、後回しにする時間はもうない

本州の海とはまるで異なる石垣島の海。そこで泳ぐ見慣れない魚たちとうまく付き合えるのか、期待や不安が入り混じった心持ちだった長嶋さん。実際に石垣島での生活が始まると、目の前に迫る自然の力強さに気圧されて萎縮してしまい、あまり自分らしくいられなかった時期もありました。そんなとき、港で釣り餌を分けてくれた高校生や、秘蔵のスポットへ案内してくれる島でできた友人らに助けられ、石垣島の魚と少しずつ向き合う時間が増えていきました。


石垣島でしばらくして、長嶋さんの頭に「小菅さんが石垣島に戻るタイミングで、島を出る」という選択肢が頭をよぎったそうです。今のこの環境がいつまで続くかはわかりません、そう思うと石垣島での限られた時間を大切に惜しむ気持ちが強くなり、後回しにしている暇はないと気づきました。今できることは全てやろうと決めました、そう長嶋さんは話してくれました。


今年からは、水中に入るときに着用する長靴が付いた「ウェーダー」というウェアやゴムカヤックを使って、今まで行けなかったようなエリアも積極的に攻めていくそうです。


性格が出るんですよね、と紹介された絵の具パレット

黒潮を辿りながら移住するか、それとも海外に出るか

観光スポットとして有名な川平湾


仕事の機会や、人との出会いに恵まれた東京。自然と向き合う時間、魚との出会いに恵まれた石垣島。それぞれ180度違うからこそ、二つの場所で生きることの最大のシナジーを得られたのかもしれません。


これからの予定を聞くと、石垣島から房総半島にかけて、それこそ魚が泳ぐように高知や和歌山に移住して魚を観察していくプランや、海外へ移住するプランを考えている、と話してくれました。いずれにしても、「画家として一本で食べていけるくらいになりたい」と力強く語ってくれました。


長嶋さんの描く魚は、海を飛び出してどんなところで泳ぐのでしょうか。石垣島の鮮やかでまぶしい魚たちの絵を、例えば海外の子どもたちが見たとき、どう思うのでしょうか。長嶋さんが子供のころに魅せられた魚たちのきらめきが、国を超え伝わっていくなんて、とても素敵ですね。


(写真と文 青山航)


取材協力

最終更新日:2017年07月03日

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