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東京と神奈川が領土交換? 町田が神奈川、相模原が東京に?

2017年07月17日

夫婦漫才

東京と神奈川が領土交換? 町田が神奈川、相模原が東京に?

西村まさゆきのちょっと気になる8

東京と神奈川が領土交換? 町田が神奈川、相模原が東京に?

町田市と相模原市が行っている、境川の飛地解消について聞いてきました。

プロローグ ~境界線にまつわる古今東西~

人類の歴史は、争いの歴史と言っても過言ではない。


特に、境界にまつわる争いごとは、古来より絶え間なく続いている。


近年で言えば、クリミア半島はロシアなのか、ウクライナなのか? 南シナ海はどこまでが中国の領海で、どこからがフィリピンの領海なのか? ハゲてる人はどこまでが額でどこからが頭皮なのか? 男女二人きりで会うのはどこまでが打ち合わせでどこからが不倫なのか?……などなど、枚挙にいとまがない。


そして、東京都町田市と神奈川県相模原市の間にも、深刻(?)な境界問題が横たわっていた。

東京都、神奈川県の町田・相模原領有問題

そもそも、町田市と相模原市は、どっちが東京都でどっちが神奈川県なのか、東京都民や神奈川県民においても曖昧に認識されているという問題がある。


ためしに”神奈川県町田市”と”東京都相模原市”で検索してみると、合わせて6万件近い検索結果が表示される。


どっちがどっち?


この混乱ぶりに乗じ、東京都民は、神奈川県が町田市を併合してしまわないか、また神奈川県民は、やっと政令指定都市になった虎の子の相模原市を東京に渡してなるものかと(たぶん)お互い警戒、牽制しあっているというありさまである。


そして、この町田市と相模原市には、境川の飛地問題という「領土問題」が、本当に存在している。


東京都町田市と、神奈川県相模原市の間には「境川」という川が流れている。その名のとおり、この川は古来より、武蔵国と相模国の境界とされ、武蔵国が東京都、相模国が神奈川県になっても、その境目は引き継がれた。


しかし、現在の地図を確認してみると、都県境(以降、県境と呼称)は境川に沿って引かれているわけでなく、川を飛び越え、両岸に食い込むように、うねりながら引かれている。


川の上にかいてある細い赤い線が県境©OpenStreetMap(OSM) 


つまり、同じ東京都や神奈川県に行くのに、いったん隣の県を経由しなければ、行くことができない実質的な飛地になっている箇所が、境川の両岸にいくつも点在しているのだ。


実はこの飛地群、町田市と相模原市の話し合いにより、少しずつだが解決されてきている。


2016年12月1日にも、行政境界の変更がなされ、一部の飛地が隣接の県や都に合併されて飛地が解消された。


そもそも、なぜこんな飛地が発生したのか? そして、行政境界変更に関わる苦労はないのか? 相模原市と町田市、双方の担当者に来ていただき、お話をうかがってみた。


左が町田市で右が相模原市の担当者。お二人はよくいっしょに仕事をしている間柄


相模原市からは、総務局総務部総務法制課のMさん(写真右)。町田市からは、総務部のIさん(写真左)に来ていただいた。(以降、相模原市さん、町田市さんと呼称)

                 

──そもそもの質問で申し訳ないのですが、この境川の都県境、いったいどうして飛地がこんなにあるんでしょうか?


相模原市さん「河川の改修工事が原因ですね」


──河川の改修とは?


町田市さん「増水したときに氾濫しないように、蛇行している川の流れをまっすぐにして、護岸工事などを行う工事ですね」


──それで、飛地が発生するんですか?


町田市さん「川は河川改修できても、都県境は昔のままなんですよ」


つまり、蛇行している川に沿って引かれていた都県境が、河川の改修工事で川の流れがまっすぐになっても、都県境だけ、蛇行したまま残った……と、いうことである。


昭和29年ごろの境川。水色の部分が川でかつ、都県境である。(時系列地形図閲覧サイト「今昔マップ on the web」((C)谷 謙二)より作図)

昭和58年ごろの境川。水色の境川がまっすぐになり、県境(赤色)の部分だけが残った。(時系列地形図閲覧サイト「今昔マップ on the web」((C)谷 謙二)より作図)

(著者作成)


──川の改修工事というのはいつごろから行われていたんですか?


相模原市さん「境川の河川改修自体は、昭和の中ごろ、40年代ごろから断続的に行われてますね」


──実質、飛地になっている箇所というのは何カ所ぐらいあるんでしょう?


相模原市さん「カウントの仕方によってちょっと誤差がでるんですが、実際としてはおおむね80カ所程度でしょうか」


──結構ありますね……その飛地を解消する行政境界の変更って、今までも何回か行われてきてるんですよね?


相模原市さん「今回の平成28年12月の変更で6回目になりますね、おおむね3年に一回のペースで行われています」


すでに6回も!


しかし、考えてみると、例えば東京都民だった住民が、明日から神奈川県民になる……ということが実際に起きるわけである。


ゴミの出し方から、通う学校、選挙の投票、税金の金額まで、何から何までガラッと変わると考えると、けっこう大変そうである。


中には「私は東京都民がいい」と、東京都に絶対の忠誠を誓う住民だっているかもしれないし「生まれ育った神奈川県民としてのアイデンティティーを捨てるわけにはいかない」と、住所の変更を認めない人だっているかもしれないのでは?


相模原市さん「それはですね、事前に住民や土地の所有者に意向確認のアンケートをさせていただいて、ひとりでも反対の方がいらっしゃる場合は、そのままに変更はしない、という判断をします」


──なるほど、どちらかというと「変更しない」という判断の方が尊重されるんですね。たとえば、税金が……どっちが高いとか安いとかはあるんでしょうか?


相模原市さん「それは、そうですね、今は県民税の分、相模原市の方が若干高いですね」


町田市さん「まあ、そのへんは、変更のアンケートのときに、どのようなことがどんなふうに変更になるのか? という資料はお渡しして、判断してもらうようになってます」


町田駅の南側にあるヨドバシカメラは、建物の中に県境がある(町田駅前の看板より)


──学校通ってる子供は途中で学校変わっちゃったりして大変そうですね。


町田市さん「子供の学校に関しては、就学途中で住所が変更になった場合は、そのまま元の住所の学校に通ってもいいし、新しい住所の学校に通ってもいいというふうに配慮されてますね」


──なるほど、住所が変わるから転校しろってのもなかなか大変な話だと思ったんですが、配慮はされてるんですね。高校もですか?


町田市さん「高校も受験する高校は選べます、もちろん公立高校ですが」


──話を聞いていると、住所の変更による不便さはあまり感じないんですが、やっぱり大変なこともあるんですよね。


町田市さん「そうですね、住所が変わるわけですから、住所変更の手続きが必要なものはすべて対応をしていただくことになるわけです。もちろん、住民票などの行政でなんとかなる部分に関してはいいんですが、免許証から銀行やカード会社への届け出など、そのへんはすべて自分でやることになるんですね。つまり、引っ越してないのに、引っ越しをしたようなものですね」


──そうか。たとえばネットのサービスで住所登録してるようなものは全部自分で変更しなければいけないのか……これは大変だ。


町田市さん「やはり、愛着というのもあるみたいですね」


──あ、やはり。愛着あるから、飛地のままでいいよ。と。そういう人も多いんですね。


町田市さん「そういう方もいます」


インドとバングラデシュの国境地帯にあるクチビハールには、国境を越えた飛地が無数にあったため、自らの畑に行くにもいちいち国境を越える手続きなどをしなければいけないといった不便さがあったというが、町田と相模原の場合、同じ日本なので、市役所行くのに若干遠回りするかな? 程度で、飛地だからこその不便さというのはあまりない気がしてきた。


──ところで、飛地の水道はどうやって引いてるんですか?


相模原市さん「水道に関しては、飛地の規模にもよるんですが、何世帯も住宅が密集しているような箇所は、橋の下に送水管を付けて水を送っている所もあります。ただ、小規模なところに関しては、場所によっては隣の自治体の水道を利用するかたちになってますね」


橋の下の水道の送水管(ペイレスイメージズ/アフロ)

町田市の市章の入ったマンホール

相模原市のマンホール


──水道はわざわざ隣から引いているんですか……ゴミの出し方もやっぱり違うわけですよね。


町田市さん「ゴミは、町田市はゴミ袋が有料の代わりに、燃やせるゴミと燃やせないゴミは個別に収集しています。」


家庭ゴミの収集(ペイレスイメージズ/アフロ)


──相模原市さんはどうですか?


相模原市さん「相模原市は、ゴミ袋は半透明のものであればいいんですが、その代わり、ゴミ集積場にまとめて出さないとダメなんです」


──ゴミの出し方でこれだけ違うんですね……。住所が変わって、いちばん身近な問題のような気がします。ゴミの出し方。


──あと、よく都県境を見に行ったりすると、ちょうど都県境のあたりで、道路の舗装が変わってたり、歩道の作りがガラッと変わってたりするんですが、こういったものもやはり県境を境目に管理が変わってるから、ということなんでしょうか?


相模原市さん「はい、基本的には境界で管理が変わっているからなんですが、中には入り組んだ道路などはお互いの自治体で協定を結んで、管理しているところがありますね」


──これ、都県境だから、相模原市さんと町田市さんだけの問題じゃないんですよね。


町田市さん「そうですね、住民だけじゃなくて、国や都県の承諾も必要になってきますからね」


──やはり国や都県も関わってくるんですね。


相模原市さん「最終的には総務省、国の判断が必要なんですが、手続き的には、まず町田市、相模原市両市議会での議案の提出、可決を経て今度は東京都、神奈川県の都議会、県議会での議案の提出、可決、そして最終的に総務大臣の処分ということになるんです」


──手続き、踏んでますね……。


町田市さん「実際には、市議会へ議案を提出する前に、測量や調査が行われますね、ですから、これ以上に時間はかかっています」


──測量からですか?


町田市さん「そうです、まず境界を確定させなければいけないんです。普段使っている地図に載っている境界。あれ、実はすこし不正確だったりするんです」


──そうなんですか!


町田市さん「実際は土地の登記におおよその境界しか載ってない場合は、ちゃんと測量して境界を確定する測量調査を行って、それからなんですね」


──地籍調査からか……。地籍調査はなかなか進まないということで、ニュースにもなってました。飛地の解消も境界の確定をしてからなのか。


──一連の手続きの最後に総務大臣が「ダメー」みたいなこと、言う可能性は……ないですよね。


相模原市さん「ほぼないですね。そうならないように段階的に手続きしてるわけですから」


──ですよね。ただ、境界をめぐって、紛争になっている場合は総務大臣の裁定がどうなるか分からない場合もあるわけですが、町田市と相模原市は別に紛争になっているわけではないですからね。


相模原市さん「基本的に、この飛地解消の件は、住民からの要望で行いますという話でもありますので、そこでひっくり返すということはまずないですね」

都県境の上で記念撮影

というわけで、せっかく町田市と相模原市の担当の方に来ていただいたので、県境の上で記念写真をとることにした。

ぼくの立っている場所がちょうど県境です。県境を挟んで今、両市の担当者が相まみえる!(ほんとうは普段から普通にやりとりしているそうです)


現在、境川の河川改修をおこなうとともに、これに伴って発生した飛地も解消すべく、都県を越えて町田市と相模原市は協力しあっている。


個人的には、変な形の県境が好きなので、そのまま残れば、おもしろいのにな……と、思いつつも、それは住民ではない外野の勝手な希望でしかないので、まずは、住んでいる人が望む形になればと思う。


(取材・文:西村まさゆき)


最終更新日:2017年07月17日


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