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「中銀カプセルタワービル」の生活は不便だらけ⁉ それでも人気...

2019年02月15日

夫婦漫才

「中銀カプセルタワービル」の生活は不便だらけ⁉ それでも人気物件なワケ

実録:中銀カプセルタワービル:上

「中銀カプセルタワービル」の生活は不便だらけ⁉ それでも人気物件なワケ

首都高速道路から見える銀座のランドマークタワー!

歴史的にも貴重な物件に住む人々 

銀座の端っこ、汐留のすぐそば。浜離宮や新橋から歩いてほど近い場所に、丸い窓の付いた四角い箱を積み上げたような、奇妙な形のビルが建っている。


建築家、黒川紀章が設計し、1972年に竣工した「中銀カプセルタワービル」。


メタボリズム(新陳代謝)の考えに基づき「古くなったら取り替えることができるカプセル型のマンション」というコンセプトで建設された、建築史的にも貴重な建物である。

 

アカデミックなウンチクは抜きにしても、ひとめ見たら忘れられない印象的すぎるフォルムのため、近年、映画やテレビCMなどでもたびたびロケ地として使われ、日本だけでなく、海外での知名度の方が高いかもしれない。


しかし、マンションであるため、建築史的に貴重とはいえ、いま現在そこに住んで生活している人もいる。そんな貴重な建物に住むというのはいったいどういうことなのか、住人の方に話をきいた。

窓からの風景で決めた 

今回、お話を伺ったのは、中銀カプセルタワービル住人の田中さんと前田さん。


右から、筆者、前田さん、田中さん


田中さんは、マンション入居歴、1年半ほど。なぜここに住みはじめたのか。

 

田中さん「通勤電車に乗るのが嫌で、引っ越しのさい、とにかく都心に近い物件を探していたんです、中央区で部屋を探してて、内見も済ませて決めてたところがあったんですが、たまたまそのタイミングで不動産屋からここが空いてるっていう連絡がきたんです」


──最初からここに住むつもりではなかった。

田中さん「ええ、家賃もさっき内見で決めたところとそんなに変わらないし、見るだけのつもりで内見に来たんです」


──今、話を伺ってるこの部屋ですね。

田中さん「はい、で、内見で室内に入って、この丸窓から外の景色を見たんですが、この眺めに一発でやられてしまって、さっき決めた部屋をキャンセルして、こっちに即決したんです、このAKIRAみたいなかっこいい景色が寝ながら見られるなんて最高だと思ったんです」


高速道路と緑が見下ろせる。広い空も。


──ネオトーキョーですよね。たしかにかっこいい眺めです。たしかにこの風景見ちゃうと一目ぼれする気持ちもわかります。中銀カプセルタワーは、空きを待ってる人がいるぐらいの人気物件だって聞いたんですが、よく入居できましたね。

田中さん「めちゃめちゃタイミング良かったんですよ」

コンビニが冷蔵庫代わり 

ところで、やはり気になるのは住み心地……である。このマンションに住んでみての、困りごとはないだろうか。


無印良品のラインナップを活用して快適空間を作る田中さん


部屋を見渡してみると、ベッドと机。そして、小さなユニットバスがあるのみの、とても狭い空間だ。


──キッチンはないんですよね。

田中さん「ないですね」


──食事はどうされてるんですか。

田中さん「ほぼ、外食か1階のコンビニで買ってきたお弁当ですね」


──いちおう、備え付けの冷蔵庫はあるんですよね。

田中さん「ありますが、作動しないので使ってないんです、消耗品入れに使ってます。ま、1階に降りればコンビニがありますから、コンビニが冷蔵庫です」


物置として使われている冷蔵庫


──「コンビニが冷蔵庫」……アーバンすぎるセリフですね……マンションのすぐ下の地下駐車場の中にある「帝里加」という中華料理店が気になってるんですが、そこに食べに行くことはないですか?

田中さん「たまに行きます。あそこもブレードランナーに出てきそうな雰囲気の店ですよね」


地下駐車場の中にある中華料理店『帝里加(デリカ)』


前田さん「帝里加は、このマンションの住人好きですよね。昔はカプセルの住人の飲み会っていうとあそこでやってたんですよ」


──眼の前ですもんね。

前田さん「だけど、さいきんは閉まるのが早くなったんで……飲み会やるときは、帝里加の料理を持ち帰りでやったりしてますね」


──キッチンの設備って、もともとないんですよね。

前田さん「ないです、ここはそもそもビジネスカプセルって売られ方をしているので、洗濯機置き場とキッチンがないんですね、だからイメージとしては普通のホテルと同じなんですね」


昔のパンフレットに載っている室内の様子


当時のパンフレットに載っていた周辺地図がかわいい。汐留はまだ貨物駅で、歌舞伎座も建て替え前、築地市場は移転前である

あえて不便を取りに行き、大自然と対話しながら暮らすということ

──洗濯物ってどうされてるんですか?

田中さん「コインランドリーです、築地の方とかに行ってますけれど」

前田さん「最近は袋に洗濯物をつめて朝出すと、洗濯されて夕方に戻ってくるサービスがあるんです、それを使っている住人が増えてる」


──ただ、一人暮らしなら、1週間分ぐらいは洗濯しなくてもなんとかなりそうですけれども。お風呂は、お湯出ないんですか?

田中さん「お風呂はお湯が出ないので、湯沸かし器使ってるんです」


──そういう工夫は面白いですね。


湯沸かし器でお湯を沸かして使っている


田中さん「電気湯沸かし器で沸かしたお湯を、吸ってシャワーにして使ってるわけです」


──楽しそうですね。

田中さん「自分でタンクも作りたいとか、まだ工夫の余地はあるなと」

前田さん「自前で電気給湯器をつけているカプセルの人もいますね」

田中さん「賃貸の場合部屋を改造しちゃうようなのはマズいんですよ」


──しかし、水回りはかなり苦労されてますね。

田中さん「あとは、雨漏りですね」


──雨漏り、ぼくも実家のボロ屋は雨漏りしてましたけど、カプセルも雨漏りするんですか。

田中さん「しますね、ちょっとずつですけど、壁が茶色くなってきているんです、雨が降ると、雨漏りの音で雨水がどのへんを伝ってるかわかるんですが、時と場合によって違うんですよ、おそらく風の向きで雨水の伝わるルートが変わってるんです。だから、雨の量は関係ない。めちゃめちゃ降ってるのにぜんぜん雨漏りしないときもあるし、ちょっとしか降ってないのに雨漏りすることもあるんです」


──もはや大自然との対話みたいな話になってますね。こんな都会の真ん中に住んでいるのに。

田中さん「でも、満員電車を毎日我慢するか、雨が降ったときに雨漏りを我慢するのか、どっちがいいかって言われたら、わたしは雨漏りの方を取りますね」


──究極の選択だ。まあ、雨漏りは毎日じゃないですしね。

住人たちのいちばんの要望は?

──家賃って、どれぐらいなんですか?

田中さん「7万円ちょっとですね」


──光熱費は?

田中さん「ここは水道代は管理費から大家さんが払っているので、電気代だけですね、ガスはないですし」


──オール電化ですね。炊飯器とか、電気コンロは使えるんですね。

田中さん「僕がもし料理に興味があれは、ここに素晴らしい台所を作る自信はあります」

前田さん「キッチンカプセルだ、いいねえ、作りたいなー」


──各カプセルでなにか得意な分野、料理ができるカプセル、洗濯機が使えるカプセルとかあれば、便利になりますね。

前田さん「去年、実際にランドリーカプセルは作ろうかという話はありましたね、みんなになにがほしいか聞くとやっぱりいちばんは洗濯機なんですよ」


──服は意外と洗うんですよね。

田中さん「住民の方で、洋服は収納に場所を取るけれど、着物は折りたたんでしまえるから場所を取らないことがわかって、それ以来ずーっと和服で暮らしている女性の方がいましたね」

建物に惹かれて集うクリエイティブな住人のコミュニティが機能する

このコンパクトスペースに必要なものが揃っている


──さきほどからお話を伺っていると、普通のマンション以上に横のつながりが太いというか、強いような気がします。住人同士の交流が盛んというのが珍しいですよね。

前田さん「そうですね、そもそも、この建物に住もうって考える人たちですから、趣味や嗜好が特殊で、似ていたりするんですよ。住民同士で、仕事をしたりとか、けっこうありますね」

田中さん「実際ものを作っている方もですが、それ以上に頭ん中がクリエイティブな人が多いです、面白いものや、もの好きな人が多くて価値観が合うんです」

前田さん「新しく入居した方の歓迎会とか、退去される方の送別会とかやりますしね」


──そのへんのシェアハウスなんかよりも、かなり密度の濃い交流ですね。

前田さん「例えば、昔、カプセル内に洗濯機を持っている方がいて、醤油じゃないですけど、洗濯機の貸し借りなんかもしていたことがあったんです」

田中さん「このマンション、バケツが必須なんですけど、引っ越した当初はそれ知らなくて、台風が来たときに雨水がドアのところから吹き込んできて、困ってたら、先輩住人の方がバケツ借してくれたりして、そういうやりとりは本当に多いです」


──この形のマンションだからこそ、そういう気が合う人が集まってくるわけですね。これがもし、建て替えして、ツルッとした普通のマンションになっちゃったら、もうそういう人たちが集まる素地がなくなってしまう。すごく重要な要素だと思います。


中銀カプセルタワービル、苦労は多いけれど、それ以上に面白い

雨が降れば雨漏りし、キッチンもないので外食か弁当を食べるしかなく、洗濯機も置けないので、コインランドリーに行かなければいけない。シャワーも温水が出ないので、自前で沸かしたり、共有部のシャワーブースを使わなけれならない。


とんでもなく不便で使いにくそうなカプセルだけれど、住民は少しでも快適に住めるよう、あれやこれやの工夫を重ねている。しかし、田中さんをはじめ、住民の人は、その工夫を苦労と思っておらず、ミッションのようにひとつずつ楽しんでクリアしているのが印象深い。そういった苦労も住民同士の横のつながりを強くしている要因のひとつかもしれない。


次回は、カプセルマンションを取り巻く現状について、聞いてみたい。


取材・文:西村まさゆき

最終更新日:2019年02月15日

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