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存続の危機!「中銀カプセルタワービル」古くなったカプセルの交...

2019年02月19日

夫婦漫才

存続の危機!「中銀カプセルタワービル」古くなったカプセルの交換はできない⁉

実録:中銀カプセルタワービル:下

存続の危機!「中銀カプセルタワービル」古くなったカプセルの交換はできない⁉

中銀カプセルタワーの部屋からの景色

取り壊しの危機から中銀カプセルタワービルを救うには? 

メタボリズム建築の代表的な作品でもあり、現役のマンションとして今現在も住民が住んでいる、中銀カプセルタワービル。


その独特で近未来的なフォルムに惹かれるファンも多く、入居希望者はひきもきらない。とはいえ、竣工からすでに40年以上経過した建物であることには変わりなく、老朽化の現実に直面している。


数年前まで、取り壊しのうえ建て替えという話もあり、ニュースにもなったが、現状はどうなっているのだろうか。


実際に入居されている方に話を伺った。

いまや、超人気物件だが…… 

実際にマンションに住んでいる田中さん、複数のカプセルを所有している前田さんにお話を伺った。


右から筆者、前田さん、田中さん


──ちょっと気になっているのが、いまでもカプセルを買うことは可能なんですか?

前田さん「売りに出れば買えますが、いまはめったに出ないんじゃないかな」

──数年前に400万円ほどで買えるという話は伺ったことがあるんですが。

前田さん「今は値上がりしてて、1000万円でもすぐに売れちゃうんじゃないかな」


──うわ、前に話聞いたときは、なんとかお金かき集めれば買えない金額でもないなと思ったんですが……買っとけばよかった……。

前田さん「値上がり傾向ではあります。11年ほど前は、1カプセル100万、200万円だったんですよ、ただ、そのころは解体されるのか保存されるのか、どうなるかわからなかったですから」


──前田さんはカプセルを買ったのはいつだったんですか?

前田さん「2010年だったかな、ちょうど、このカプセルタワーの近くで『売りカプセル300万』って看板を見つけたんです。よく不動産のステ看板ってありますけど、あんなの見て買う人がいるのかなーなんて思ってましたけど」


──気軽にポンと出せる金額じゃないですからね。

前田さん「電話したら、将来建て替えされるかもしれないから、それまで1、2年使うんだったら、という感じで買っちゃったんですよ」


──400万ぐらいなら乗用車を1台買うのとそんなに変わらないですね……。

前田さん「バブルのころは、ここ1カプセル3000万円で、売ったときは300万、という人もいますからね」


──えぇーっ! 不動産の価値の乱高下っぷり……。ちなみに、完成した当時(1972年ごろ)はいくらぐらいで販売されてたんでしょう。

前田さん「380万~480万円台ぐらいでしたね、いまの価値に換算すると2000万円から2500万円ぐらいだそうです」


──けっこうしますね。

前田さん「でも、考えると、今この銀座のこの場所に新築のマンション一部屋が2000万~2500万円だったら、安いんですよ」


──そうか、そうですね。

前田さん「私は会社員で、DIYなんかまったくしなかったんですが、買ったカプセルを自分で補修するようになってハマってしまって、他のオーナーさんから『うちのも直してくれよ』なんて頼まれるようになったんですよ、会社に行く平日より土日のほうが早起きでしたよ」


──前田さんは、買って住んでるわけではないんですよね。

前田さん「家族がウンと言ってくれれば、本当は住みたいんですが……」

──たしかに、家族で住むとなるとなかなか難しいところはありますね。

古くなったカプセルの交換はできない?

「中銀カプセルタワービル」は、建築家・黒川紀章が、メタボリズムの思想を実現すべく、設計した。メタボリズムとは「新陳代謝」を意味し、都市の発展とともに古くなった部分をそっくり取り替えて対応する。……ザックリとした説明だがそういうことらしい。


つまり、カプセルの部分が古くなったら取り替えて「新陳代謝」させる。という、思想のもとに作られたわけである。


しかし、建築からすでに数十年、老朽化が目立ってきたため、2000年代中頃より、取り壊して建て替えをするという計画が明るみになった。一時は、具体的な建て替え案まで発表されたが、それはごく普通のマンションに建て替えるというものであった。


そのため、建築史的にも貴重な建築物でもあるマンションを取り壊しせずに保存しようという運動がおき、建て替え計画は、いちどは白紙の状態に戻った。


もともと、この建物はカプセルの交換を念頭に設計されたものであるため、カプセルの交換ができればそれに越したことはなく、老朽化などの問題は解決する。しかし、実際にカプセルが交換されたことは……ない。なぜ交換されないのか。じつは構造的な問題がひとつあった。


古くなったらカプセル部分を交換する……つもりだった


前田さん「カプセルって、横にすぽっと抜き差しできるような気がしますけど、実は、中の柱(コアシャフト)に下から順番に引っ掛けて取り付けてあるんです。だから、下の方のカプセル1個だけ取り替えるということはできなくて、上のカプセルから全部はずしていかないとダメなんです」


カプセル、上から外していく模式図


──なるほど……カプセルを交換するのは、大ごとですね。

前田さん「ただ、今までそういった構造的な難しさのほかにもさまざまな事情で、カプセルの交換はできない、という話を管理組合からは言われていたんですが、いろいろと調べてみると、耐震補強のためにカプセルを外すのは構わないのではないか、ということがわかったんです」


──カプセルを外して交換ができるのであれば、それに越したことはないですね。

前田さん「基本的に、建て替えはしないという方針ではあったんですが、最近、このマンションを建てた中銀グループが、所有している土地やカプセルなどをすべて売却したんです。なぜカプセルを売却したのかはわかりませんが……購入した会社は、取り壊して建て替えをしたいのかなということを想像してしまいます」


もともとこのマンションを建てた中銀グループが、持っていた16戸のカプセル、ビルの建っている土地(底地)、一階の店舗、事務所などを第三者の新所有者に売却した。底地を買った新所有者は、2018年の8月に「借地権の譲渡を承諾しない」とカプセル所有者に通達してきた。そのため、カプセル所有者はカプセルの売買ができなくなってしまったという。


もちろん、マンションの建て替えには、5分の4以上の住民の同意がなければできないため、今すぐ取り壊し、建て替え……という事態にはならないが、マンションの保存が決定したわけではないので、予断を許さない。

マンスリーマンションは倍率10倍

取り壊し、建て替えという建築物としての生命の危機が中銀カプセルタワービルには迫っている。


所有者の前田さんたちも手をこまねいているわけではない。昨年の夏には大規模修繕の可能性の検討なしに取り壊しを行わないよう、東京都に支援を要請する署名運動も行い、8000人を超える賛同者が集まった。


そして、昨年の秋からは、中銀カプセルタワービルに、実際に短期間だけ住んでみることができるプランがはじまった。


前田さん「以前はエアビーアンドビーで宿泊することができたんですが、今は禁止になってしまったんです、そこで『マンスリーカプセル』の取り組みがはじまりました。インテリアは無印良品に協力してもらって、1ヶ月単位でカプセルに住んでもらうというプランなんです。ひとりでも多くの方に実際に住んでもらって、この建物の価値を知ってほしいというねらいもあります」


1ヶ月12万円で、実際に住むことができるのだが、現在、予約は常にいっぱいで、2018年10月の予約受付開始時の倍率は10倍という人気プランらしい。


現在でも当時の備え付けの備品が残っているカプセルもわずかだがある

「登録有形文化財」に指定される築後50年という条件まであと数年

日本は「老朽化」や「耐震基準に満たない」といった理由で、古い建物はどんどん取り壊されていってしまうため、こういった近現代の建築物はなかなか残りにくい。


保存するとしても、外観のみを「ファサード保存」といった形で申し訳程度に残すぐらいで、内部の様子を含め、そのまままるごと残すということはなかなか行われない。


そんな中にあって、40年以上、建築当時の姿を変えずに建っている中銀カプセルタワービルはとても貴重な存在である。


文化庁の定める「登録有形文化財」の条件は、建築から50年以上経過した建築物,土木構造物及びその他の工作物のうち、次の条件の一つに該当するものが指定される。


  1. 国土の歴史的景観に寄与しているもの
  2. 造形の規範となっているもの
  3. 再現することが容易でないもの


中銀カプセルタワービルは、1、2、3いずれにも該当しているとも言えるが、特に2は、その後のカプセルホテルのモデルとなった貴重な建物なので、ぴったりではないだろうか。1972年竣工なので、あと3年ほどで築50年の基準に達する。

このビルだけではなく「その建物がその形でそこに存在する価値」について、もっと多くの人が、いまよりもうちょっとだけ真剣に考えることができるようになればとおもう。


取材・文:西村まさゆき

最終更新日:2019年02月19日

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