ページトップへ

Yahoo!不動産おうちマガジン は家探しのヒントが満載の情報サイトです!

>
>
長崎の夜景が変わる!?「坂の街」が持つ深刻な課題とは

2018年02月02日

コージー林田

長崎の夜景が変わる!?「坂の街」が持つ深刻な課題とは

高齢化で斜面地に住めなくなる

長崎の夜景が変わる!?「坂の街」が持つ深刻な課題とは

世界新三大夜景にも選ばれた夜景。立体感を持った独特の美しさは、一見の価値がある。

長崎の坂の角度は、坂の街のなかでも別格の厳しさ

「坂の街」と聞いて、どこを思い浮かべるだろうか。函館、神戸、尾道などが有名だが、ほかにも全国津々浦々、坂が急な街はたくさんある。しかし、そのなかでも、長崎はある意味、別格だ。私は学生時代を長崎市の中心部で過ごした。今は仕事柄、さまざまな街を訪れており、前述した坂が有名な街も全て足を運んでいる。その上で、やはり長崎は桁違いに坂がえげつないと感じるのだ。

【えげつない理由 その1】とにかく山だらけ!

長崎は三方を山に囲まれたすり鉢状の地形。普通は平地に住宅が集中するが、平地が少ない長崎では山の斜面に住宅地を造成。全国でも珍しい山に市街地が広がる都市となった。土木学会の論文「全国斜面都市の比較分析」によると、長崎市の斜面市街地(10度以上の傾斜度)は市街地全体の43%(長崎市のホームページでは約7割とされている。これは、10度以下の坂も含めたものと考えられる)といわれており、県庁所在地では群を抜いた数字。坂の街として有名な尾道市でも20%台なので、そのえげつなさが分かるだろう。通学や通勤で一度山を下り、また山を登るといった行為は珍しくない。

 

長崎市は平坦地が非常に少ない。平坦地には早い時期から事業所や行政施設などが作られており、住宅が足りなくなった高度経済成長期には必然的に斜面地が居住の場となった

【えげつない理由 その2】マジ、坂が急すぎる!

全国的に有名なオランダ坂の先には、「元祖オランダ坂」がある。その勾配は20%。つまり、水平距離で100m進むと垂直距離で20m登ることになる。しかも、これは生活道路なのだ。ちなみに、私が通っていた高校のそばには「地獄坂」と呼ばれる坂があった。これは勾配25%。これが通学路なのだからたまらない。東京では、20%を超えると急坂として名を馳せるが、長崎では日常の風景である。


地獄坂を登るクルマを横から見たところ。


地獄坂の勾配は25%。斜度にすると、14度ほどだ。ちなみに、クルマが走れる勾配の上限は道路構造令によると12%。しかし、長崎市では基準値を遵守することは困難なので、新設道路では20km/hに限定し、上限値を17%としている


なかでも、「変電所の坂」と呼ばれる坂はもっとも有名で、某テレビ番組では、電動自転車vs.長崎の坂という企画で紹介されていた。それもそのはず、この坂の最大勾配は30%とも35%ともいわれている。「全国斜面都市の比較分析」によると、長崎市の市街地の平均斜度は9.6度(勾配に直すと約17%)。全国では熱海に次いで急な角度で、県庁所在地としてはダントツの数字である。

【えげつない理由 その3】坂の距離が長すぎる!

坂と表現しているが、結局のところ山を登っているわけなので、とにかく坂の距離が長い。観光名所であるグラバー園の近くには、地域住民と観光客のための斜行エレベーター「グラバースカイロード」が設置されているほどだ。

 

奥に見えるのが斜行エレベーター。全長は160mで高低差は50m。れっきとした市道である


もうひとつ、坂の長さの一例を挙げよう。長崎市中部は平地で路面電車が走っている。私が通っていた高校までは、最寄りの路面電車の電停から約2.5kmなのだが、そのほとんどが坂だった。もはや、ちょっとした登山ハイキングだ。

 

NAVITIMEで検索すると、高低差はこんな感じだ


さすがに、この2.5kmの坂を毎日歩くのは無理。そこで、斜面市街地の主な公共交通機関はバスとなるのだが、山を登っていくので道は曲がりくねり、幅も狭い。そこを華麗に切り抜ける長崎バスの運転手は、全国屈指の技術を持っていると、未だに確信している。

 

長崎市では一般的な道。特別狭いわけではないので、大型バスが走っている

【えげつない理由 その4】斜面移送システム整備事業なるものが存在する!

長崎の坂は、生活道路としての車道整備がなかなか進んでいない。家が密集しており用地買収が困難でもあることが一因だが、そもそも、生活道路は勾配が急で狭く、概ね幅員1~2m程度の階段が多いので、ここに重機を持ち込み、道路を整備するのは至難の技だ。そういったことから、高齢者を中心とした交通弱者が斜面道路を安全かつ快適に移動できる機器が設置されている。


写真は長崎市公式ホームページより。「水鳥号」と呼ばれるこのゴンドラは定員2人の懸垂型。15メートル/分で坂を登っていく

平地への人口集中によって、傾斜地の空き家問題が深刻化

ここまで、少々面白おかしく長崎の坂の凄さを紹介してきたが、実は、その坂が深刻な問題に直面している。


これまでも、クルマが入れずに登ったり降りたりする移動が大変だったり、狭い坂に消防車が入れずに消火活動が困難だったり、ゴミの収集にクルマが入れずに同規模の都市よりも予算がかかったり、下水道の普及が遅れたりとさまざまな課題を抱えていた。しかし、高齢化が進むことで、より問題が顕在化してきている状況だ。


移動に関していえば、若かったころには問題なかった坂も年齢を重ねると歩いて登ることが厳しくなる。後期高齢者となる団塊世代には、階段があることで外出が思うようにできず、買い物難民になったり地域から孤立したりしてしまう危険もある。


また、高齢者が亡くなった場合、空き家となる家も少なくない。そもそも、坂の途中に家を建てようとすると建築費が高くなる。また、新築しようとした場合は接道などの条件に対応できないことが多いので、住宅の更新が進まないのだ。


結果として、平地にマンションが数多く建設され、数が減っている若者世代はそちらに移り住む。坂には老朽化した木造家屋が多く残ることになる。長崎の夜景は山の上まで家があることで生まれた独特の美しさもあるが、その存続を危惧する声も聞かれている。

 

筆者が住んでいた30年前に比べると、平地の市街地にマンションが増えている


長崎市でも、若年層の定住促進や生活道路網の形成、住環境の改善など、傾斜地の街づくりを推進しているが、容易ではないだろう。そして、これは全国の坂の街が抱える共通した課題でもある。


「坂の街」と聞けば、風情があって旅情に誘われるかもしれないが、実際に住んでみると大変なことも多い。なにより、少子高齢化によりコンパクトシティ政策が進むこれからは、全国各地の坂の街が消えていく恐れもある。これから10年・20年で、全国にある「坂の街」の様子が大きく変わってしまうかもしれない。


【参考サイト】

最終更新日:2018年08月30日

キーワードを入力してください

キーワードから探す


本文はここまでです このページの先頭へ

Yahoo!不動産 おうちマガジンとは?

不動産にまつわるマジメな記事からおもしろ記事まで、家さがしが楽しくなる情報をお届け!新しい暮らしのヒントが満載のマガジンです。