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マンション建替え要件 5分の4から3分の2へ引き下げ検討

2015年12月29日

平賀功一

マンション建替え要件 5分の4から3分の2へ引き下げ検討

平賀 功一の最旬コラムNo.67

マンション建替え要件 5分の4から3分の2へ引き下げ検討

都心の土地集約・高度利用化を目指し、都市再生特別措置法の改正を検討

2015年10月に発覚した横浜の「傾きマンション」を遠因に、政府がマンションの建て替え要件を緩和する方向で動き始めました。

「政府は大型マンションや団地の建て替えに必要な所有者の合意の数を、現在の5分の4以上から3分の2以上へと引き下げる。(中略)新年1月4日召集の通常国会に規制緩和策を盛り込んだ都市再生特別措置法の改正案を提出し、2016年早期の導入を目指す」―― このように12月27日付けの日本経済新聞が報じています。

記事によると「政府は都市再生法の改正で、市町村などの自治体が“再開発事業”と位置付けることを条件に、所有者の3分の2が合意すれば建て替えられるようにする。(中略)再開発でマンションを高層化(敷地を集約化)すれば、空いた土地を有効活用できる」。

さらに「敷地内(空いた土地)に介護施設、保育所、商業施設を併設することなどを想定している。1970年代に相次いで造成された大型団地では、住民の高齢化が課題だ。新制度の利用で建て替えが進み利便性が高まれば、若年層を呼び込む効果も見込める」と、政府は合理的かつ健全な土地の高度利用を通じた都市機能の向上を目指したい考えです。

都市再生特別措置法が施行されたのは、小泉政権下の2002年6月。策定された基本方針に基づき、緊急かつ重点的に整備する必要がある「都市再生緊急整備地域」内に「都市再生特別地区」が指定されると、用途地域ごとに規制されている容積率や高さ制限、建ぺい率、建築面積、さらに壁面の位置といった建築規制がすべて適用除外されます。つまり、既存の都市計画を白紙に戻し、自由な発想で再開発事業を立ち上げることができるのです。

そのうえ、特別措置法では民間事業者が都市計画を自治体に提案できる仕組みになっており、民間主導による再開発が可能になりました。現在、「都市再生緊急整備地域」は東京都心・臨海地域や大阪駅周辺など全国63カ所に及んでおり、2016年度の法改正によって指定地域はさらに増加。大型マンションや団地の建て替えが円滑化するものと予想されます。

全員の賛成を目指し、合意レベルを高める努力が不可欠

しかし、建て替え要件を「3分の2以上の賛成」へと引き下げることで、不安材料も浮上します。3分の1の人が反対しても建て替え決議は成立するわけですから、「賛成」「反対」両者の間に禍根を残す心配があります。

言うまでもなく、マンションの建て替えは“全員賛成”が理想です。無用な対立を生むことは有害無益に他なりません。にもかかわらず、3分の1の反対者の意見を押し切ってマンションが建て替えられるようになるわけですから、法改正には反対者が不利益を被らないようなサポート体制の導入が欠かせません。

2008年に内閣府と法務省、国土交通省が共同で行ったアンケート調査によると、管理組合で建て替えを検討した際、建て替えに反対した人の主な理由は以下の通りです。費用負担の問題は最大の障壁となり、また、3人に1人が仮住いについての不満を挙げています。多額の住宅ローンを抱えている人、加齢による身体機能の低下で引っ越しに負担感を覚える人など、各人が抱える懸念事項は様々です。

<建て替えを検討した際、建て替えに反対した人の理由>(複数回答)
・費用負担の問題………………………………………55.9%
・引っ越しを伴うことや仮移転先に対する不満……35.3%
・修繕や改修で十分だから……………………………27.9%
・建て替えで住環境が変化することへの不安………19.1%
・建て替え工事が成功するかどうかといった心配…17.6%
・建て替え計画に対する不満…………………………11.8%

それだけに、建て替え後の新築マンションで賛成者と反対者が互いに気持ちよく住めるよう、多様な価値観を持った区分所有者の合意形成には十分な時間を割く必要があります。拙速な意見集約は避けるべきです。反対者1人ひとりに耳を傾け、合意のレベルを着実に高める努力が欠かせません。

<建て替えを検討するようになったきっかけ>(複数回答)
・今後の修繕工事に要する費用を考えて……………61.8%
・地震や火災などに対する安全性への不安…………38.2%
・建物の居住性に対する不満…………………………38.2%
・建物の老朽化が激しいから…………………………30.9%
・他のマンションの建て替え事例・検討事例から…11.8%
・デベロッパーの働きかけ……………………………4.4%

上記は、前述したアンケート調査による「建て替えを検討するようになったきっかけ」ですが、どれも納得する答えです。国土交通省によると、築45年超の団地は現在、全国で291あるのですが、2025年には約5倍の約1500、35年には3000弱に達する見通しです。経済合理性や安全性、居住性など、高経年マンションには多くの課題が内在するだけに、建て替えが促進されることは歓迎すべきです。

ただ、多様な価値観が存在する以上、合意形成プロセスには慎重さが求められます。法改正に当たっては“弱者”への配慮を伴った議論をしてほしいと思います。単なる建て替え決議要件の引き下げだけで終わらないことを切に願います。

最終更新日:2015年12月29日


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