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タワーマンション課税の見直し 誤解されがちな4つの盲点

2017年03月24日

平賀功一

タワーマンション課税の見直し 誤解されがちな4つの盲点

平賀功一の最旬コラムNo.108

タワーマンション課税の見直し 誤解されがちな4つの盲点

(写真:アフロ)

映画「マルサの女」を想起させるタワーマンション課税の見直し

昨年12月22日、2017年度の税制改正大綱が閣議決定されました。

マスコミは安倍政権の「働き方改革」を受け、もっぱら配偶者控除の見直しを注視していましたが、負けず劣らずタワーマンション課税の見直しも関心の高さがうかがえます。あくまで私の個人的な印象ですが、伊丹十三監督の映画「マルサの女」に登場する女査察官のごとく、何としてでも税金を徴収してやろうという強固な決意が感じられます。

今回、その矛先(ほこさき)を向けられたのが、高さが60メートルを超える居住用の高層建築物、いわゆる「タワーマンション」です。ついに“聖域”に踏み込んできました。どうやら、税務当局はタワーマンションを租税回避のための道具として利用する行為に歯止めを掛けたいようです。税負担の公平性とは何なのか?―― 納税者一人ひとりに訴えかけています。

ここで、改めて税制改正大綱の内容を再確認しておきましょう。

2017年度の大綱には、タワーマンションの固定資産税に関する課税方法の変更が盛り込まれました。現在、分譲マンションの固定資産税は、まず初めに管轄する市区町村の調査担当者が現地調査を行い、1棟全体としての固定資産税評価額を独自に算定します。

続いて、算定された固定資産税評価額に規定の税率を掛け、固定資産税の総額(総戸数分)を計算。その総額を各住戸の床面積(専有面積)比で按分(あんぶん)し、ようやく各住戸の固定資産税額が確定します。建物の仕様や設備が豪華であればあるほど、固定資産としての評価が上がり、課税される固定資産税も高くなる仕組みです。

「階層別効用比」を加味し、税額は1階と40階で約10%の差になる

(ペイレスイメージズ/アフロ)


今回、その仕組みに「階層別効用比」という概念を取り入れたのが2017年度税制改正大綱の特徴です。タワーマンションの高層階は低層階に比べ、眺望や日照といった景観上の優位性に加え、他者にもあこがれられる高いステータス性も兼ね備えています。そして、こうした階層別の資産価値(=効用)の差(=比)が値付けにも反映され、現状、高層階と低層階では分譲価格に大きな差が生じています。

そこで、現行では床面積が同じであれば、階数に関係なく同額になる仕組みを見直し、「階層別効用比」=「階数による分譲価格の差」を課税の計算方法に反映させることとしました。所得に応じた公平な税負担の実現に動き出したのです。

具体的に、税制改正大綱には「固定資産税額を各区分所有者に按分する際に用いる専有部分の床面積を、住戸の所在する階層の差違による床面積あたりの取引単価の変化の傾向を反映するための補正率により補正する」とし、「タワーマンションの1階を100とし、階が一を増すごとに10を39で除した数を加えた数値とする」と記載されています。

10を39で除した数値(10÷39)は約0.256となり、これが補正率となります。40階建てのタワーマンションでシミュレーションしてみると、次のようになります。

【1階を基準として試算した各階の補正後の数値】
※補正後の数値は概算値で表しています(小数点第3位以下切り捨て)

  • 1階:100とすると
  • 2階:100.25(100+0.256)
  • 3階:100.51(100.256+0.256)

  • 19階:104.61(104.359+0.256)
  • 20階:104.87(104.615+0.256)
  • 21階:105.12(104.872+0.256)

  • 38階:109.48(109.231+0.256)
  • 39階:109.74(109.487+0.256)
  • 40階:110.00(109.744+0.256)

たとえば、1階住戸の固定資産税(年額)をちょうど10万円とすると、20階は10万4870円、40階は11万円になります。担税力に応じて課税負担を調整する必要があるという理由から、上階ほど課税負担を強化しようというのです。今国会での可決・成立は間違いないでしょうから、階数差が40階の場合、固定資産税の税額は1階と比べて約10%の差が生じる計算になります。

これまで通り、相続税対策としての有効性は変わらない

税制改正大綱の大枠が理解できたところで、ここからは誤解されがちな盲点について、独自の解説を加えたいと思います。

2017年度大綱の改正は「固定資産税」の計算方法に関する見直しに過ぎず、「固定資産税評価額」そのものの見直しではありません。そのため、固定資産税評価額を計算の基礎とする「相続税評価額」も変わることはなく、これまで通りタワーマンションには相続税対策としての有効性が確保されます。この点、誤解のないよう注意してください。

次に、固定資産税の見直しに当たりタワーマンション1棟の課税総額自体は変えないため、高層階は「増税」になる一方、低層階は「減税」になります。上記のシミュレーションにより階数差が40階の場合、固定資産税額は約10%の差が生じることが判明しました。中間の20階を100とすると、階数ベースで1階は約95、40階は約105となります。つまり、40階は約5%の増税、1階は約5%の減税になる計算です。
ちなみに、大綱には「天井の高さ、付帯設備の程度などについて著しい差違がある場合には、その差違に応じた補正を行う」とも記載されています。最上階のペントハウスを想定しているのでしょう。該当する場合は5%以上の増税を覚悟する必要がありそうです。

天井の高いペイントハウス。(写真:アフロ)

「敷地部分」に関する固定資産税の見直しは、どうなるのか?

2017年度税制改正大綱には「敷地部分」に関する固定資産税の見直しについて、具体的な表現が見当たりません。「居住用高層建築物にかかる固定資産税額を……」としか記載がなく、その敷地にかかる固定資産税額も見直されるのかどうか不明です。ご存じ、固定資産税は「建物」と「土地」の両方に課税されます。タワーマンションの敷地部分がどう取り扱われるのか、具体的な説明が待ち望まれます。

最後に、今回の見直しは2018年度から新たに課税されることとなる新築のタワーマンションが対象となります。今年(2017年)4月1日前に売買契約が締結された住戸を含むものを除くとされており、「階数差」による税負担の不公平感が解消される一方、新たに「竣工年数」による税負担の不公平が生じます。何とも皮肉な結果です。

冒頭でも触れましたが、税負担の公平性とは何なのか?―― 正解を見つけるのは容易ではなさそうです。税務当局はタワーマンションを租税回避のための道具として利用する行為に歯止めを掛けたがっています。相続税対策の封じ込めも時間の問題でしょう。マルサの女は映画の中だけではなく、実在すると心得るべきでしょう。

最終更新日:2017年03月24日


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