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住宅販売の営業スタイルに変化―「ドミナント戦略」の時代へ

2017年09月12日

平賀功一

住宅販売の営業スタイルに変化―「ドミナント戦略」の時代へ

平賀功一の最旬コラムNo.121

住宅販売の営業スタイルに変化―「ドミナント戦略」の時代へ

(写真:アフロ)

砂丘で有名な鳥取県 しかし、2014年までスタバもセブン-イレブンもなかった

2015年5月23日、スターバックスコーヒー(以下、スタバ)が鳥取県に「スターバックスコーヒー シャミネ鳥取店」をオープンさせました。テレビのワイドショーなどでも取り上げられましたので、スタバのファンはもとより、多くの人が記憶にあると思います。


一体なぜ、多くのメディアが話題にしたかというと、スタバにとって鳥取県は47都道府県の中で唯一の未出店エリアでした。いまや国内に1288店舗(2017年6月30日現在)を構えるコーヒーチェーンにまで発展しながら、当時、鳥取県だけが空白地帯でした。その鳥取県に初進出したことで、スタバは念願の全国制覇を達成。話題性の高さから、マスコミでも大きく取り上げられました。


実は、同じ話題がコンビニエンスストア業界でも持ち上がっています。国内最大手のセブン-イレブンが鳥取県に初出店したのは2015年10月でした。スタバ同様、それまで同県にセブン-イレブンは1店もありませんでした。ようやく製造と物流の両インフラが整備されたことで、鳥取県への出店が実現。2020年度までに約50店を新規出店する計画です。


加えて、2019年には沖縄県へ初出店することも今年6月に発表しています。すでにファミリーマートとローソンは進出を果たしていますが、セブン-イレブンは出遅れていました。47都道府県中、現在、沖縄県だけが空白地帯になっています。

すでにファミマとローソンはあるのに、なぜ、セブン-イレブンは1店もないのか?

(写真:アフロ)


ここで気になるのが、ファミリーマートやローソンは沖縄に進出しているのに、なぜ、セブン-イレブンは全国制覇に慎重姿勢なのか?―― エリア出店を厳選するには理由がありました。キーワードとなるのが「ドミナント戦略」です。


ドミナント戦略とは、小売業者が店舗展開する際に用いる出店戦略の1方式です。同社は「高密度集中出店方式」と表現しており、狭い商圏に多店舗を集中的に出店させることで、認知度の向上や配送の効率化を図ります。特定エリアのシェア独占によってネームバリューが高まり、集客効果にもプラス作用をもたらします。「広く浅く」ではなく「狭く深く」出店攻勢をかけるわけです。


その甲斐あってか、セブン-イレブンはコンビニ業界の“勝ち組”と評価されるまでに成長しました。国内の総店舗数は1万9638店(2017年7月末時点)に達し、ファミリーマートやローソンの追随を許しません。私事になりますが、わが家の最寄り駅にはセブン-イレブンが西口改札側に1店舗、東口改札側に2店舗と、合計3店舗あります。顧客を奪い合うどころか共栄しており、地域に根ざしたコンビニエンスストアとなっています。


同社は出店計画の立案にあたり、ドミナント戦略が活かせる環境整備にメドが立たないと計画を進行させないのです。今年6月の発表は、ようやく沖縄進出への基盤が整った証左と解されます。年内をメドに現地法人を設立し、5年間で約250店の沖縄出店を目指します。

広域集客が難航するなか、「ドミナント戦略」は住宅販売にも応用が可能

私はセブン-イレブンの広報でも広告塔でもないことを付言しておき、ここから本題に入ります。今般、このドミナント戦略が住宅業界に浸透し始めているのです。


そもそも、マイホーム販売は地域密着の営業が基本です。「子供の転校は避けたい」「かかりつけの病院から遠くなるのは困る」「両親のそばに住み続けたい(近居ニーズの高まり)」など、マイホーム選びにおいて、大方の人は住環境が変わることを避けたがります。地縁も土地勘もないエリアを選好する割合は決して高くありません。「住めば都」とは、よく言ったものです。


視点を変えて、こうした顧客心理を営業サイドから読み解くと、「マンション分譲において、広域での集客は難しい」という答えが導かれます。最近のテレビコマーシャルを思い浮かべてみてください。個別の物件を宣伝するCMを目にする機会はなくなりました。テレビは媒体の特性上、視聴者が広範囲かつ不特定多数となるため、特定地域の分譲マンションを宣伝しても、高額な広告費に見合った結果は望みにくいのです。


そのため、今日では企業のイメージ広告が主流になっています。いまやテレビで有名タレントや海外のハリウッドスターをイメージキャラクターに起用したマンション販売のCMは減っています。


総戸数が500戸を超えるような東京都心部の大規模あるいは高層の分譲マンションは例外として、広域での集客は難しくなっています。そうしたなか、不動産各社は狭域での顧客掘り起しへと営業方針を転換しています。ドミナント戦略を取り入れた販売手法に着手し始めています。


販売物件の周辺を高密度かつ集中的に営業することで、物件認知度が高まり、見込み客の取りこぼしを減らせます。現地のエリア特性や地域ニーズを的確に把握し、その地域に適した販売戦略を練ることで、物件の早期完売に結びつけます。地域密着営業へと原点回帰する背景には、ドミナント戦略の存在がありました。


該当エリアの特性や地域ニーズを把握する(ペイレスイメージズ/アフロ)

ストックビジネスにおいて、「顧客の深掘り」は収益機会の拡大に不可欠

わが国の住宅政策が、新築販売中心の「フロービジネス」から既存住宅のリノベ再販やリフォーム・物件管理といった「ストックビジネス」へ軸足を移し始めていることもあり、ドミナント戦略への傾倒はさらに加速が予想されます。


マイホームの供給サイドから収益機会を見た場合、フロービジネスは物件の引き渡し時に代金を受け取って完結します。買い主との関係は、この時点で途切れます。売れなければ利益は一銭も手に入りません。


他方、ストックビジネスは買い主との接点が長期間に渡ります。マンション管理を例に取れば、本来、マンション管理会社は共用部分の維持管理や管理組合の運営サポート、会計業務の代行などが主な仕事(基幹事務)です。数年単位での付き合い(管理委託契約)となります。


そうしたなか、今般では「専有部サービス」に力を入れており、時間効果(接点の長期化)を上手に利用しながらマンション居住者との“高密度化”に本腰を入れています。「基幹事務」に「専有部サービス」を追加し、居住者を深掘りすることで、マンション管理会社は収益機会の拡大を目指します。高齢化・単身化するマンション居住者にとっても、専有部サービスはあれば便利なサービスです。狭く深く顧客を囲い込むドミナント戦略は、「ストックビジネス」というビジネスモデルとの相性がいいのです。


【専有部サービスの主な内容】

  • 緊急駆け付けサービス
    緊急駆け付けサービス鍵の紛失やガラスの破損、水回りや電気トラブルなど、緊急性の高い問題が発生した際、専門スタッフが駆け付けるサービス

  • 生活相談
    年金や税金、出産、育児、介護、医療、食生活、ペット飼育などに関する生活相談を専門スタッフが電話などで受け付ける。

  • ライフサポート
    ベビーシッターやハウスクリーニングといった家事代行サービスから、大型家具の移動、電球交換、不用品回収、さらに自宅のリフォームや売却・賃貸などの不動産相談にも応じる。


潮目は変わり、「物件を建てたら、黙っていても売れる」時代は過去のものとなりました。販売不振の打開策、収益機会の拡大期待から、ドミナント戦略へ視線がさらに集まるのに時間はかからないでしょう。

最終更新日:2017年09月12日


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