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夫が他界 残された妻の住まいと生活資金を確保すべく「配偶者居...

2018年05月17日

平賀功一

夫が他界 残された妻の住まいと生活資金を確保すべく「配偶者居住権」創設へ

平賀功一の最旬コラムNo.131

夫が他界 残された妻の住まいと生活資金を確保すべく「配偶者居住権」創設へ

(写真:アフロ)

「アクティブシニア」と「下流老人」が混在する“人生100年時代”

近頃、見聞きする機会が増えた「人生100年時代」―― アクティブシニアの台頭が、生涯現役の一翼を担います。総務省の統計によると、高齢者(65歳以上)の就業者数は13年連続で増加しており、2016年は約770万人と過去最高を記録しました。


高齢者の就業率を国際比較した同省の統計では、18.6%のアメリカ(第2位)、13.1%のカナダ(第3位)、10.6%のイギリス(第4位)、6.6%のドイツ(第5位)を抜いて、日本は主要国で第1位(22.3%)となっています。気力・体力、そして能力があれば、わが国は年齢に縛られず再就職や起業が可能な社会になっています。


しかし、その一方で「下流老人」や「介護難民」といった言葉が散見されるように、経済面・健康面で不安を抱える人は少なくありません。高齢社会では単に長生きするだけではなく、いかに健康で幸せな生活が送れるかが重要になります。天寿をまっとうするには「長生きリスク」への備えが欠かせません。貧困クライシスに陥らないよう、社会全体で生活弱者を下支えする仕組みの構築が求められます。 

遺産の配分決定には「遺言」「遺産分割協議」「法定相続分」がある

そこで、昨年(2017年)10月に「改正住宅セーフティネット法」が施行されました。高齢者や低額所得者、子育て世帯、障害者、さらに被災者といった住宅の確保に配慮を要する人々が住生活の安定を維持できるよう、賃貸借契約において家主に入居を拒否させない仕組みが法制化されました。


また、夫に先立たれた妻の生活支援を目的に「配偶者居住権」(後述)という相続発生に伴う遺産分割の新しい考え方が法務省によって議論され始めています。


(写真:アフロ)


ここで、相続についての基本知識をおさらいしておくと、相続とは被相続人の死亡により被相続人の財産が遺族(相続人)に継承されることです。資産の世代間移転が主目的ですが、内助の功に対する謝意や遺族の生活保障といった意義も相続にはあり、民法によって相続人になることができる人の範囲が具体的に定められています。


配偶者(ただし、内縁関係は不可)は常に相続人となり、子供がいる場合は配偶者と同順位で相続人になります。その子供の性別や実子か養子かの違い、さらに嫡出子・非嫡出子の別も問われません。嫡出子(ちゃくしゅつし)とは、法律上の婚姻関係にある夫婦の間で生まれた子供、非嫡出子とは婚姻関係にない男女の子供をいいます。


また、相続される財産の範囲は被相続人に属した一切の権利義務が対象になります。金融資産や不動産はもとより、借地権や借家権といった無形の権利、借金や保証人の地位(保証債務)といったマイナスの財産(義務)も含まれます。


そして、こうした財産を相続人全員で引き継ぐわけですが、相続人が複数いる場合、それぞれが財産をどのような割合で相続するかが問題となります。その割合のことを「相続分」といいますが、相続発生時の相続財産は相続人全員の共有となるため、相続人は各自が自由に相続財産を処分できず、不便を強いられます。


そこで、一定のルールに従って配分割合を詰めていくのですが、遺言があればその内容に従って配分し、遺言がなければ話し合いで決めます。この話し合いを「遺産分割協議」といいますが、相続を“争続”にしないよう相続人全員の合意があって初めて遺産分割協議は成立します。公平・不公平が生じないよう、各相続人の希望を可能な限り反映させようという狙いです。


同時に、相続分の決定に当たっては「法定相続分」という法律に則した決定方法もあり、民法では次のように定めています。 


【民法に定める法定相続分】

《配偶者と子供が相続人の場合》

  • 配偶者:2分の1
  • 子供:2分の1


《配偶者と父母あるいは祖父母が相続人の場合(子供はいない)》 

  • 配偶者:3分の2
  • 父母あるいは祖父母:3分の1


《配偶者と兄弟姉妹が相続人の場合(子供はいない)》

  • 配偶者:4分の3
  • 兄弟姉妹:4分の1


分かりやすいよう簡単な例で説明しましょう。夫が死亡し、妻と子供1人の2人が法定相続人であるとすると、法定相続分は妻が2分の1、子供も同じく2分の1となります。


夫の相続財産が以下だったとします。

  • 現預金:3000万円
  • 株式などの金融資産:2000万円
  • 自宅の評価額:3000万円(住宅ローンの残高が1000万円 ※団信加入は考慮せず)


すると、総額は以下の計算で7000万円。

現預金3000万円+金融資産2000万円+自宅3000万円-住宅ローン1000万円=7000万円


これを法定相続分で配分すると、妻は3500万円(2分の1相当)、子供も3500万円(2分の1相当)となります。


法定相続分は相続税額を計算するための便宜的な配分割合に過ぎないため、実際の配分は遺言あるいは遺産分割協議によって独自に確定させて構いません。従って、自宅を換価処分(売却)して相続財産をすべて現金化すれば、極端な話、1円単位で自由な遺産分割が可能になります。


しかし、愛着ある自宅の売却には抵抗感を感じる人がいます。特に未亡人となった妻が自宅を失うと、喪失感を増幅させる恐れがあります。新たな住い探しも、とても面倒です。そのため得てして売却せず、妻が相続する(名義変更して住み続ける)ことになるわけですが、そうすると上記の例では相続する現金が500万円(法定相続分3500万円-自宅3000万円)しか残らず、生活資金の先細りが懸念されます。 

妻の住宅の安定、将来資金の確保が「配偶者居住権」の目的

そこで、考え出されたのが「配偶者居住権」です。配偶者居住権とは、夫と生活を一にしていた住宅に、夫の死後も妻が住み続けられる権利です。法務省の要綱案には「配偶者の居住権を長期的に保護するための方策」と記されており(文末のリンク参照)、配偶者居住権を取得した妻は引き続き無償で一生涯、住宅に住み続けられるようになります。


その際、住宅には「所有権」と「配偶者居住権」が混在することになるため、権利関係を明確化すべく、所有権者(新たな住宅の所有者)は配偶者に対して配偶者居住権の登記を備えさせる義務を負います。第三者への対抗要件として、誰かが配偶者居住権の権利を侵害しようとしても、登記によって対抗(妻が権利を主張=侵害の阻止)できるようにするためです。配偶者を保護しようという狙いがあります。 


(写真:アフロ)


法務省による配偶者居住権を創設する目的は次の2つです。


  1. 妻の住宅の安定確保
  2. 相続財産に占める妻への現金の配分割合を増やす 


妻が亡き夫から住宅を相続(所有権を取得)すれば、妻が住む場所は確保されます。しかし、前段で例示したように、住宅の評価額が高いほど相続財産に占める妻への現金の配分割合は少なくなり、特に高齢の場合、将来の生活資金不足が心配されます。


要綱案によると、配偶者居住権には「使用」ならびに「収益」が認められる一方、「処分」は禁止されています。所有権には「使用」「収益」「処分」すべてが認められているのに対し、配偶者居住権には「処分」が認められていません。


そのため、権利に対する評価額が相対的に低くなり、結果的に現金の配分割合を増やすことができます。例示したケースでは、妻の法定相続分3500万円のうち、住宅の評価額が3000万円から2000万円に減価したと仮定すると、3500万円-2000万円=1500万円の現金が妻の手元に残ります。 


【用語解説】

  • 使用:その住宅に自ら住むこと
  • 収益:その住宅を第三者に賃貸すること
  • 処分:その住宅を売却すること


たとえば、住宅の所有権を子供が相続したとすると、所有権者が子供、配偶者居住権者が妻という権利構成になります。子供が母親(妻)に住宅を無償で供与するイメージです。要綱案では、住宅のリフォームや第三者への賃貸には所有権者の承諾を必要としています。権利上の制約が、こうした点に表れてきます。


あくまで法律案の段階であり、敷地の取り扱いがどうなるのかなど、詳細は未定です。ただ、着眼点は評価でき、実現する可能性は高いと考えられます。住宅は生活の基盤です。超高齢社会の到来に合わせ、生活弱者への支援拡充は待ったなしです。 


【参考サイト】

※該当箇所は、4ページ「2 配偶者の居住権を長期的に保護するための方策」以降の部分

最終更新日:2018年08月30日

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