ページトップへ

Yahoo!不動産おうちマガジン は家探しのヒントが満載の情報サイトです!

>
>
休眠不動産は再生するか? 所有者不明土地法が6月に全面施行

2019年07月23日

平賀功一

休眠不動産は再生するか? 所有者不明土地法が6月に全面施行

平賀功一の最旬コラムNo.138

休眠不動産は再生するか? 所有者不明土地法が6月に全面施行

写真:ペイレスイメージズ/アフロイメージマート

所有者不明土地に伴う経済的損失は約1800億円

これまで資産の代表格とされてきた不動産が、今般、所有意識の希薄化などを背景に、一部“負動産”(管理不全な資産)へと姿を変えつつあります。


というのも、バブル期には「土地神話」(地価は上昇し続けるという考え方)により投機対象となって急騰したわが国の土地が、一転、人口減少社会の到来で土地活用の担い手が減少し、利用ニーズの低下に伴い所有意識が薄れた結果、次第に所有者の所在が分からない土地が増えているのです。


本来、土地の管理は所有者自らが適時・適切に行わなければなりません。しかし、土地の利用価値が低ければ関心は薄れ、誰も相続しようとは思いません。そのため、相続登記(相続発生に伴う所有者変更の登記)がなされないまま放置され、所有者が分からなくなっていくのです。


近年、こうした所有者の所在が不明の土地は増加しており、所有者不明土地問題研究会の推計によると、その合計面積は約410万ヘクタール。九州(368万ヘクタール)を上回る規模にまで膨れ上がっています。今後、同研究会は死亡者数の増加に伴い、所有者不明の土地はさらに増大すると予想しています(文末のリンク参照)。課税や管理コスト面など、土地所有の負担感が追い打ちを掛けています。


そこで、これ以上、所有者不明土地を増加させず、また、その利活用を促進させるべく2019年6月1日に完全施行されたのが「所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法」(所有者不明土地法)です。いくら所有者が不明とはいえ、許可なく第三者が勝手にその土地を利用したり処分したりすることはできません。こうした強い権利が所有権者(土地の実質的な持ち主)を守る一方、現行法の厳格な規律が所有者不明土地の円滑な利用・取引を阻害してきました。そこで一部、法規制を緩和することで、利活用を図ろうという狙いです。


ただでさえ国土が狭い日本において、その土地が休眠状態と化し、有効活用されないのは経済的損失に他なりません。所有者不明土地問題研究会では2016年単年での所有者不明土地における経済的損失を約1800億円と試算しており、2040年には単年で約3100億円にまで拡大すると見込んでいます。管理が行き届かない所有者不明土地には雑草が生い茂り、荒廃することでゴミが不法投棄されるなど、衛生面や景観にも悪影響を及ぼしています。そこで、こうした管理不全な資産を流動化させるのが所有者不明土地法の役割です。休眠(=所有者不明)の土地を“目覚めさせる”(再生させる)ための実効性ある法律が同法なのです。

土地所有者の探索方法を弾力化し、効率的な所有者探しを実現させる

写真:GYRO PHOTOGRAPHY/アフロイメージマート


こうして誕生した所有者不明土地法ですが、同法ではまず土地所有者を探索するための仕組みを弾力化しました。


その前段として、そもそも所有者不明土地とは「相当な努力が払われたと認められる方法により探索を行っても、なお、その所有者の全部または一部を確知することができない一筆の土地」と定義されています。不動産登記簿などの所有者台帳を閲覧しても所有者が直ちに判明しない、または判明しても所有者と連絡が付かない土地というわけです。


こうした所有者が不明の土地を探索する方法としては、不動産登記簿以外にも固定資産課税台帳や地籍調査票、戸籍謄本や住民基本台帳などの閲覧が挙げられます。ただ、個人情報保護法の目的外使用の恐れや、税情報を知り得る税務職員の守秘義務違反(地方税法)に抵触する可能性があることから、たとえ公共事業のためであっても、これまでは利用が制限されていました。こうした法の規制が土地所有者の探索を難しくしてきたのです。


そこで、本法では探索のために必要な公的書類(登記簿や住民票、戸籍など)の照会範囲を親族までに制限する一方、行政機関が合法的に調査(照会)できるようにしました。土地所有者の円滑な探索を図るという法の趣旨を踏まえつつ、必要な範囲内に限定して行政が公的書類を閲覧できるようにしたのです。所有者情報の規制緩和に踏み込んだわけです。

最長10年間の利用権を設定し、コンビニの出店も可能になった

写真:GYRO PHOTOGRAPHY/アフロイメージマート


しかし、探索の弾力化で所有者不明土地がゼロ(所有者が全員判明する)になるとは考えにくいでしょう。東日本大震災では土地所有者の所在が分からず、高台移転事業で土地取得が難航したのは記憶に新しいところです。そこで、探索しても所有者が判明しなかった土地については、一定条件のもと、「所有権の取得」あるいは「利用権の設定」を可能にしました。


まず、国や都道府県知事が事業認定した公共事業を所有者不明土地で行おうとした場合、都道府県知事の独自裁定により土地(所有権)を取得できるようにしました。従来、公共事業のために土地を収用(取得)しようとした場合、収用委員会の採決が必要でした。収用委員会とは公共事業の実施に伴い、公共の利益と私有財産(収用しようとする土地権利者の利益)との調整を図るべく、公正・中立な立場で収用(=所有権の取得)の適否を判断する権能を与えられた行政委員会です。所有者不明土地法では当該委員会の審理手続きが省略され、公共事業の円滑な実施が可能になりました。


同時に、公的機関のみならず民間事業者やNPO、自治会、町内会などが事業主体として所有者不明土地を利用できるよう、最長10年間の利用権を設定できるようになりました。関係市区町村長の意見を聴衆するとともに、一定期間の公告・縦覧ののち、事業の公益性や必要性が認められれば都道府県知事が利用権を設定します。事業内容は地域住民の共同の福祉や利便の増進につながる業態に限定されますが、コンビニエンスストアや家電量販店、ドラッグストアの出店も可能です。地域の利便性向上に一役買うことが期待されます。


なお、この利用権は都道府県知事の承認が得られれば、別の事業者へ権利譲渡が可能です。また、利用権の存続期間満了後も引き続き事業を継続したい場合には、期間延長を裁定申請できます。その際、権利者の意向に変化が生じている可能性があることから、改めて土地所有者の探索・反対する権利者の有無の確認を行う必要があります。期間中、不明であった所有者が現れた場合には、利用権の存続期間の満了時に原状回復して土地を返還しなければなりません。

地方自治体が財産管理人を選任請求できるようになった

写真:アフロ


そして最後、管理不全となりやすい所有者不明土地の財産管理人を見つけやすくなりました。


現在も不在者の財産管理人を選任する制度はあるのですが、その選任の請求をすることができるのは利害関係人(親族や相続人、債権者など)か検察官に限定されています。その範囲を本法では地方自治体にまで広げ、所有者不明土地の適切な管理のために特に必要があると認められる場合には、地方自治体が家庭裁判所に対して財産管理人の選任請求を行えるようになりました。


財産管理人とは、不在者(所有者不明土地の所有者)に代わって当該土地を管理する権限を有する人のことです。その権限は投棄されたごみの撤収や繁茂する雑草の除草などにとどまり、勝手に土地を売却することなどはできません。かなり役割は限定的ですが、所有者不明土地の適切な利用・管理を確保するには不可欠な存在といえます。


所有者不明土地問題研究会の将来推計によると、2040年には所有者不明土地の面積は約720万ヘクタールにまで増加するそうです。死亡者数の増加や相続意識の希薄化が進行し、面積増に拍車を掛けます。ついに約846万戸にまで達し、急増する全国の空き家問題(総務省「平成30年住宅・土地統計調査」)は深刻ですが、同等に所有者不明土地問題も根深いものがあります。不動産飽和時代の“負の遺産”が顕現し始めています。手遅れにならないためにも、本法が所有者不明土地の適正かつ合理的な利用に寄与することを願ってやみません。


参考サイト

最終更新日:2019年07月23日

キーワードを入力してください

キーワードから探す


本文はここまでです このページの先頭へ

Yahoo!不動産 おうちマガジンとは?

不動産にまつわるマジメな記事からおもしろ記事まで、家さがしが楽しくなる情報をお届け!新しい暮らしのヒントが満載のマガジンです。