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玄関扉の表は共用部分で裏は専有部分⁉ 分譲マンションの分かり...

2019年09月18日

平賀功一

玄関扉の表は共用部分で裏は専有部分⁉ 分譲マンションの分かりにくい権利関係

マンション管理の実務ノウハウ#3

玄関扉の表は共用部分で裏は専有部分⁉ 分譲マンションの分かりにくい権利関係

写真:GYRO PHOTOGRAPHY/アフロイメージマート

専有部分の工事費用を修繕積立金から拠出する是非が東京高裁で争われた 

堅牢な造りの分譲マンションも、経年による設備劣化には勝てません。首都圏にある築45年の分譲マンションで、老朽化した給排水管とガス管の更新工事(すべて新しく取り換える工事)が行われました。その際、同時に各専有部分内の浴室やトイレの設備工事も行い、その工事費用を修繕積立金から拠出(総会決議による承認済み)しました。ところが、資金繰りなどについて一部の区分所有者から異議が唱えられ、以下のような主張(争点)のもと、訴訟へと発展したのでした。


(A)「修繕積立金は共用部分の修繕のための費用であって、専有部分の設備の修繕のために使用することは修繕積立金の目的外使用に相当し、無効である」 


(B)「管理組合が専有部分内の設備まで交換するのは、区分所有権の侵害となるのではないか?」


分譲マンションの宿命として、水道管やガス管は構造上一体となって敷設されます。共用部分と専有部分を区別なく横断するため、すべての配管を更新しようとすれば共用部分に敷設された配管(本管)と専有部分に敷設された配管(枝管)いずれも同時に更新する必要があります。一緒に更新工事を行ったほうが工期は短縮され、当然、コストも安くなり合理的です。


そのため、一審の横浜地裁では原告の請求が棄却。その結果を不服として東京高裁へ一部の区分所有者は控訴したのですが、控訴審となる東京高裁でも請求棄却の判決が言い渡されました。主な理由は次の通りです。


(a)「そもそも修繕積立金の使途を共用部分に限定する法令上の定めはなく、区分所有法や他の強行法規に違反するものとは認められないことから、修繕積立金の目的外使用とは言えない」


(b)「管理組合が専有部分を共用部分とともに一体として管理することは、建物価値の維持保全のために必要かつ有益と考えられるから、直ちに区分所有権の侵害とは認められない」 

分譲マンションの権利形態は「区分所有」

写真:GYRO PHOTOGRAPHY/アフロイメージマート


一見、この判決は当然と思われがちですが、実は、必ずしもそうとは言えない点に注意が必要です。なぜなら、今回の管理組合による専有部分の工事は「共用部分の工事と一体として行う必要がある工事」だったからです。建物の構造や配管の設置場所に照らし、一体工事の必要性や合理性が認められた結果、修繕積立金からの拠出が正当化されました。


本来、専有部分の工事は区分所有者が自らの負担と責任で実施するのが本筋です。専有部分の管理主体は区分所有者だからです。専有部分内の工事費用を管理組合が負担するのは、かなり“イレギュラー”なケースなのです。分譲マンションの権利形態が「区分所有」(後述)に基づいて形作られていることを、理解できているか否かで判決の受け止め方に違いが生じます。


ここで改めて、分譲マンションに混在する権利形態を1つずつ整理していきましょう。


分譲マンションにおける法律構成を説明するにあたり、すべての基盤となる考え方が「区分所有」です。区分所有とは、1つの建物に複数の所有権を成立させるための権利形態を指します。賃貸マンションも一戸建て住宅も所有者は1人です。これに対し、分譲マンションは複数の所有者が1つの建物に同居します。そのため、区分された所有形態として「区分所有」という方式が誕生しました。そして、区分所有する権利を有する者を「区分所有者」と呼び、区分所有される建物に関する法律を「区分所有法」と名付けました。


こうして区分所有という権利形態が整備されたことで、各区分所有者は他の区分所有者や管理組合から制限を受けず、単独で室内をリフォームしたり、賃貸や売却・相続も可能になりました。こうした賃貸や売却の対象となる建物の部分を「専有部分」といい、区分所有法では「区分所有権の目的となっている建物の部分」と位置付けています。普段、何気なく使っている言葉ですが、すべて法律用語です。それぞれに法的な意味が込められているのです。 

分譲マンションの玄関扉は「専有部分」「共用部分」どっち?

写真:GYRO PHOTOGRAPHY/アフロイメージマート


分譲マンションが、賃貸マンションや一戸建て住宅と異なる点は他にもあります。「共用部分」の存在がその1つです。共用部分とは専有部分以外の建物の部分であり、区分所有者全員の共有財産です。たとえば廊下や階段・エレベーターが共用部分なのは、ご存じの通りです。その他、屋根や外壁、支柱なども同様です。


それならば、賃貸マンションの廊下や階段・エレベーターも共用部分なのか?―― 疑問に思うのも不思議ではありません。ただ、答えはNOです。賃貸マンションの所有者はオーナー1人。そのため、区分所有という権利形態そのものが存在しません。賃貸マンションには専有部分も共用部分も存在しないのです。呼称は同じマンションでも、分譲と賃貸は似て非なる権利構成なのです。


疑問に思う点は枚挙にいとまがありません。その代表例が専有部分と共用部分の区分けです。突然ですが、分譲マンション各住戸の玄関扉は専有部分・共用部分どちらでしょうか?―― この質問はかなり難易度が高い質問になります。


実は、区分所有法には専有部分と共用部分の境界を明示した条文はありません。その欠点を補うべく、国土交通省が作成・公表している「マンション標準管理規約(単棟型)」に専有部分の例が記載されています。「対象物件のうち、区分所有権の対象となる専有部分は、住戸番号を付した住戸とする」とした上で、専有部分と共用部分について、次のように例示しています。 


【専有部分の範囲】

  • 対象物件のうち区分所有権の対象となる専有部分は、住戸番号を付した住戸とする。
  • 前項の専有部分を他から区分する構造物の帰属については、次の通りとする。

(1)天井、床および壁は躯体部分を除く部分を専有部分とする。 

(2)玄関扉は、鍵および内部塗装部分を専有部分とする。

(3)窓枠および窓ガラスは、専有部分に含まれないものとする。

(4)専有部分の専用に供される設備のうち、共用部分内にある部分以外のものは専有部分とする。

(以下、省略)


これによると「玄関扉は、鍵および内部塗装部分を専有部分とする」と記載されています。つまり、玄関扉には専有部分と共用部分が表裏一体となって混在しているのです。裏を返せば「鍵および内部塗装部分」以外は共用部分なわけです。よって、たとえば玄関扉に補助錠を取り付ける場合、共用部分の管理主体は管理組合なので、事前に管理組合の承認が必要になります。一棟の建物を区分所有することによる権利形態の複雑さが、お分かりいただけたのではないでしょうか。


上述した【専有部分の範囲】4番目の「専有部分の専用に供される設備のうち、共用部分内にある部分以外のものは専有部分とする」という表現も難解です。補足しておきましょう。


分譲マンションの床下や壁の裏側に敷設された水道管をイメージしてみてください。同じ水道管でも、上下に設置された縦方向の配管は「共用部分」とされ、他方、専有部分の床下に寝かせて敷設された配管は「専有部分」とみなされます。敷設の方向が「縦」なのか「横」なのかで異なってくるのです。そして、後者の「専有部分」が4番目の専有部分の典型例となります。分譲マンションの権利構成を深掘りすると、複雑極まりない実態が見えてきます。 

専用使用権を備えるバルコニー しかし、専有部分ではなく共用部分

分譲マンションではバルコニーも、しばしばその区分けが問われます。バルコニーは専有部分の利用者(賃借人も含む)が室内生活の延長として排他的に利用できるスペースです。こうした排他的に利用できる権利を「専用使用権」といい、この権利のおかげで他の居住者の侵入を抑止できます。


とはいえ外部に向けて開放されており、構造上の独立性はありません。また、非常時には避難通路としての役割を担っており、利用上の独立性も完全には確保されていません。バルコニーは専有部分に付属しているため、その構造上、専有部分の一部と思われがちですが、所有権の登記もできません。そのため、バルコニーは共用部分に区分されます。物置などをバルコニーに置く行為は慎まなければなりません。 

マンションの場合、建物と土地の権利はセットで扱う

写真:GYRO PHOTOGRAPHY/アフロイメージマート


最後、分譲マンションの敷地の取り扱いについて触れておきます。上段で、賃貸や売却の対象となる建物の部分を専有部分と説明しましたが、「分譲マンションを買う」という行為は「専有部分に加えて、持分割合に応じた共用部分と敷地も同時に購入する」行為です。専有部分が独立の所有権の対象になるといっても、建物は一体ですから他の部分とは切り離せません。敷地の取引を伴わなければ建物だけが宙に浮いた状態となり、現実的ではありません。


確かに、わが国の法律では土地と建物がそれぞれ別個の独立した不動産として取り扱われます。法制度上、土地だけを売買したり賃貸借することが可能です。しかし、分譲マンションで敷地の分離処分が認められると、たとえば区分所有者ではない者が敷地利用権者(敷地の利用権を有する者)になった場合、区分所有者でない者には規約や集会決議の効力が及びませんので、管理組合運営において不都合が生じます。管理費や修繕積立金の負担割合、さらに固定資産税や都市計画税が誰にいくら課されるのか、すべてが未知数になります。


区分所有法では「敷地利用権が数人で有する所有権その他の権利である場合には、区分所有者は、その有する専有部分とその専有部分に係る敷地利用権とを分離して処分することができない」としています。専有部分と敷地利用権の一体性を担保すべく、分離処分を禁止しています。


分譲マンションは1つの建物が多くの人々によって区分所有されるため、どうしても全体としての合意形成が難しく、居住者の多様な価値観を意思統一するのは容易でありません。加えて、「専有部分」「共用部分」「専用使用権」「敷地利用権」といった権利関係が混在するため、マンションの法律構成をより複雑にします。


とはいえ、分譲マンションに住むからには「知らない」で済まされません。無知ほど怖いものはありません。本稿を参考に、マイペースでかまわないので知識武装に努めてください。


最終更新日:2019年09月18日

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