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長期修繕計画と大規模修繕工事の実施主体は「管理会社」ではなく...

2019年11月14日

平賀功一

長期修繕計画と大規模修繕工事の実施主体は「管理会社」ではなく「管理組合」です

マンション管理の実務ノウハウ#7

長期修繕計画と大規模修繕工事の実施主体は「管理会社」ではなく「管理組合」です

写真:GYRO PHOTOGRAPHY/アフロイメージマート

居住者にありがちな“固定観念”の払拭がマンション永住の第一歩

突然ですが、分譲マンションにお住いの読者の皆さんは、自宅マンションの長期修繕計画や大規模修繕工事について、どの程度の理解や知識をお持ちでしょうか?―― しばしば耳にする意見として、「長期修繕計画や大規模修繕工事と言われても、よく分からない」「専門性が高く、難しそう」という声を聞きます。想像するに、当人にとっては“未知の領域”であることが最大の理由と考えられます。通常、大規模修繕工事は10数年に1回しかやって来ません。中には管理会社の仕事だと勘違いしている人も見受けられます。正直、できることなら関わりたくないという人もいるのではないでしょうか。


しかし、大規模修繕工事の成否がマンションの資産価値を左右することは理解しているはずです。快適なマンションライフを望まない人はいないでしょう。修繕工事の実施主体は管理組合であり、マンションの居住者です。管理会社任せにせず、まずは“固定観念”を払拭するところから始めてください。


国土交通省の平成30年度マンション総合調査によると、62.8%の居住者が、現在、住んでいる分譲マンションに「永住するつもり」と答えています。しかも、こうした永住意識は今回の調査が最も高い値を記録しており、多くのマンション居住者が総じて住み心地に満足している実態が垣間見られます。


ただ、マンションの住み心地(安全性や快適性など)は勝手に備わっているわけではありません。努力があって初めて確保されます。その努力とは、居住者を司令塔とした建物や設備の保守点検と計画修繕です。建物に使用されている部資材(部品や材料)には当然、寿命があり、時間の経過とともに形状や性能は変形・低下します。管理組合は適切な維持管理の実施によって、建物や設備を保全しなければなりません。定期的に点検し、計画的に修繕することで、機能や性能の維持・向上が図れるのです。


その際、重要となるのが大規模修繕工事です。大規模修繕工事とは分譲マンションの共用部分を対象とした、おおむね10年~15年周期で実施する建物や設備の全体的な修繕工事をいいます。当該工事には劣化や不具合を新築時と同等レベルまで回復させるとともに、性能や機能をアップグレードさせる改良工事も含まれます。単なる部資材の補修や交換で終わらないよう、居住者の意見や希望を反映させた工事内容が当該工事には求められます。


同時に、大規模修繕工事を滞りなく行うためには資金的な裏付けも欠かせません。1回の修繕工事には数千万円から億単位の費用が掛かります。しかも、工事費の支払いは現金が基本です。資金ショートしないよう、管理組合は修繕積立金の徴収によって計画的に工事費用を積み立てなければなりません。


そこで、欠かせないのが長期修繕計画です。長期修繕計画とはマンションの修繕工事を25年~30年間の長期的な視点で計画し、年単位で工事費用の収支をまとめた(=見積もった)計画をいいます。


表現を変えれば、修繕積立金の金額を設定する“根拠”となる資金計画ともいえます。たとえば10年後に予定される大規模修繕工事には〇〇億円が必要なので、10年前の現在、その金額を修繕積立金で貯めるには1世帯当たり毎月いくら徴収すればいいのか、“逆算して”必要額(=適正な修繕積立金の金額)をはじき出すことができるのです。大規模修繕工事も長期修繕計画も、どちらも快適な住み心地の確保にはなくてはなりません。両者は綿密かつ不可分の関係にあるのです。 

「どこを」「いつ」「どの程度」「いくら位で」修繕するかを計画に盛り込む

写真:Panther Media/アフロイメージマート


ここまでお読みいただいた読者の皆さんには、大規模修繕工事の重要性が伝わったものと思います。形あるものは必ず壊れるわけです。資金的な裏付けとなる長期修繕計画の必要性もご理解いただけたでしょう。


ところが、前出のマンション総合調査によると長期修繕計画を作成していない管理組合が約1割存在しました。由々しき事態といわざるを得ませんが、実は仕方ない面もあります。長期修繕計画の作成には広範囲な知識が求められるからです。


長期修繕計画の作成にあたり、まずは建物や設備の劣化状況を診断し、その状況に応じた修繕方法を提案できるだけの技術的な知識が欠かせません。また、概算工事費を算定するには発注価格の相場(単価)も知らなければなりません。さらに修繕工法は日々進化しています。知識も経験も乏しい管理組合が独自で修繕計画を作成するのは極めて困難です。そのため、管理会社にお願いすることになるのですが、意見交換するにも一定の知識が求められます。管理組合は知識武装に努めなければならないのです。


実際、長期修繕計画を作成するには、具体的に「どこを」「いつ」「どの程度」「いくら位で」修繕するかを確定させなければなりません(図表1)。すべて重労働なのですが、とりわけ面倒なのが修繕費用の積算(見積もり)です。その基礎の基礎として、修繕費用は工事項目ごとに算出した「数量」に「工事単価」を乗じて算定します。数量とは「面積」「長さ」「個数」などを意味します。


たとえば屋上の防水工事を例に、これまでと同レベル(アスファルト防水)での修繕を希望したとして試算してみましょう。工事対象面積が100平方メートル、工事単価が9000円の場合、防水工事費用は「100平方メートル(数量)」×「9000円(単価)」=90万円(税抜き)となります。 


【図表1】長期修繕計画に盛り込むべき修繕内容


注意点として、工事単価は長期修繕計画を作成した時点の金額であり、10年~20年先まで同額という保証はどこにもありません。物価や社会情勢は常に変動しており、加えて、実際に工事日を迎えた頃には想定以上に劣化が進行していたというケースも考えられます。さらに新たな材料や工法が開発される可能性もあるでしょう。このように長期修繕計画には不確定要素が多分に含まれています。5年程度ごとに見直す必要があるのです。作ったら作りっぱなしにせず、情報のアップデートを怠らないようにしてください。

大規模修繕工事を成功させるための9つのステップ

写真:GYRO PHOTOGRAPHY/アフロイメージマート


続いて、今度は大規模修繕工事に話を移します。工事の成功ノウハウを9つのステップで紹介します。


<ステップ1> 管理組合による工事実施の発意と専門委員会の発足

大規模修繕工事の時期は突然にやって来るわけではありません。日常生活での不具合の発生、あるいは長期修繕計画に定めた予定時期の到来など、必ず何らかのきっかけが存在します。そして、そのきっかけをスタートに、まずは理事会で工事実施の有無を検討し、その実施を発意するのが第一ステップです。


実際、発意から工事完了まで2~3年を要することも珍しくありません。とても長丁場になります。そこで、理事会とは別に専門委員会を発足し、各理事の負担軽減と修繕工事専任の人選を図るといいでしょう。メンバーは建築に詳しい人が理想ですが、過去に大規模修繕工事を経験したことのある人や熱意・関心の高い人も大歓迎です。工事がすべて完了するまで責任をもって任務に当たれる人が望まれます。修繕工事の実施体制づくりが最初の仕事です。 


<ステップ2> 建物調査(劣化診断)の実施

続いて、建物調査を実施します。健康診断をしてみなければ、どこが悪いのか判明しません。マンションでは打検調査・目視調査・指触調査など、色々な方法で劣化状況を診断します。と同時に居住者へのアンケートも行いましょう。区分所有者の意向や不具合についての情報をヒアリングすることで、そこに住んでいる人にしか分からない問題点を発見するのが狙いです。たとえば、雨漏りや漏水は建物の内部からでないと発見できません。「外」と「内」の両面から建物の不具合を洗い出すのです。


<ステップ3> 発注方式の選定

第3段階として建物の健康状態が把握できたら、続いては工事発注方式を選定します。マンションの大規模修繕工事には【図表2】の工事発注方式があり、コストバランスを意識しながら最適な方式を選ぶ必要があります。その際、高値づかみは論外として、安かろう悪かろうでも困ります。マンションの規模(総戸数や階数)や管理会社との親密度などを判断材料に、最適解を見つけてください。


【図表2】大規模修繕工事における主な工事発注方式


図表の見方を補足しておくと、劣化診断から工事監理までの業務を一社がまとめて引き受けるか否かで「一括発注」か「分離発注」かに大別されます。さらに、工事監理を誰が行うかによって分離発注は3方式に分類されます。


それぞれの長所・短所として、一括発注では一社にすべて任せられるため、管理組合の手間が軽減されます。しかし、外部のチェック(競争原理)が期待できないために、割高なコストを提示される恐れがあります。価格の透明性に不安が残ります。


他方、分離発注では相互の監視機能が働くため、コストの圧縮が望めます。施工品質を維持したまま、工事費用の軽減が期待できるのです。しかし、その分、設計監理料(コンサルタント料)という新たな出費が掛かります。マンションの居住者が「負担の少なさ」「工事費の安さ」「施工品質」等々、何を最優先するか(優先度)によって結論は異なります。 


<ステップ4> 修繕基本計画と実施計画の策定

次は、最も重要となる修繕基本計画の策定です。修繕基本計画とは、前述した劣化診断やアンケート調査などの結果を踏まえ、工事項目や工事範囲、また、採用する工法や仕様、さらに使用する部資材の単価・数量といった工事費用に至るまで、大規模修繕の骨格となる工事計画を指します。


この計画には修繕工事の概算費用も盛り込まれており、特に積立金残高が不足ぎみの場合にはスペック(工事仕様)ダウンして工費を下げるなど、臨機応変な対応が求められます。「しなければならない工事」と「してほしい工事」を取捨選択する必要があるのです。管理会社や専門家の意見を聞きながら、十分な議論をしてください。


そして、修繕基本計画で検討・決定した結果をもとに実施計画を作成します。材料や工法・仕様などを確定させ、仕様書と設計図に落とし込みます。その際、注意点として設計変更や実費精算により工事費が増減した場合の取り扱いや、工事完了後の保証・定期点検の内容なども確認しておいてください。工事の性格上、実際に施工してみないと正確な数量(面積や長さ、個数など)が確定しないからです。実施計画とはいえ、工事項目によっては推測や仮定で数量が見積もられています。心配な場合はあらかじめ予備費を計上しておくと安心です。 



写真:ペイレスイメージズ/アフロイメージマート


<ステップ5> 施工業者の選定

実施計画が完成したところで、今度はその計画を実行するための施工業者を探します。選定基準としては、専門性や技術力はもとより、工事完了後も数年間は定期点検や保証での契約関係が続くことから、経営状況や保証能力、アフターサービスも考査の対象としたいところです。着手金を支払った途端に倒産されたら目も当てられません。


大げさかもしれませんが、施工業者選定の成否が大規模修繕工事の成否を決定付けます。マンション居住者の関心も高く、それだけに選定過程を常に公表し、また、競争原理を働かせながら工事費用の妥当性を追求する作業が欠かせません。居住者から多数の意見を受け入れ、全員が納得したうえでの選定が求められます。 


<ステップ6> 工事費用の確保

ステップ6では工事費をどのように工面するか、資金調達方法の確認です。管理組合としては、修繕積立金で全額まかなえるのが理想ですが、もし不足するようであれば工事直前に一時金を徴収するか、ローンを組んで対応するしかありません。特に借り入れる場合は適用金利や融資期間など、無理のない返済計画の立案が求められます。資金調達が怪しくなった場合、最悪、修繕工事の先送りや工事範囲の縮減など、計画通りに実施できない事態に直面する恐れがあります。それだけに長期修繕計画に基づき、時間的な余裕を持った資金計画を立てるようにしてください。


<ステップ7> 工事説明会と総会の開催・承認

ひと通り修繕工事に向けた準備が整ったところで、今度は住民説明会の開催となります。工事の目的や工事個所、発注先、工事費用、スケジュールなどを説明することになるのですが、大規模修繕工事には新築工事と違い、人が生活している中での作業という特徴(難点)があります。そのため、工事中は日常生活に何らかの支障が及びます。「洗濯物が干せない」「水が出ない」「工事音がうるさい」―― いずれも経験してみると分かるのですが、かなりのストレスです。ささいなことでもクレームになりかねないので、説明には十分な時間を割いてください。大規模マンションでは複数回の開催が望まれます。そして、きちんと理解が得られたところで臨時総会を開催し、承認決議(賛成)の運びとなります。


<ステップ8> 正式な工事契約 大規模修繕工事の実施

続いて、正式な工事請負契約を締結後、大規模修繕工事の開始となります。修繕委員会のメンバーにとっては、一息つける瞬間です。ただ、工事中は工事中で中間検査の立ち会い、また、何らかのトラブルが発生すれば、その都度、対応を迫られます。加えて、工事が一通り終われば竣工検査が待っており、施工不良がないか確認作業に立ち会わなければなりません。気の抜けない日々が続きます。


工事期間は規模や工事内容によって半年から1年程度が目安となります。この間、工事車両や職人が出入りします。騒音や振動、洗濯物が干せない、窓が開けられない、エレベーターが使えない ―― 不便な日々を強いられます。しかし、すべて諦める(甘受する)しかありません。イライラしても仕方ないのです。資産価値の向上に結び付くのだと考え、寛大な心で過ごしてください。 


<ステップ9> 工事終了後のアフターメンテナンス

ようやく騒々しかった日々とのお別れです。平穏な日常が戻ります。ただ、修繕委員会のメンバーは喜んではいられません。工事が完了したからといって、即座に業務がなくなるわけではないのです。完了直後には報告書や設計図書などの書類を受け取り、残金精算しなければなりません。また、引き渡し後に不具合が見つかった場合には、その対応もしなければなりません。大なり小なり一定期間はトラブルの発生が想定されるのです。何事もなく数カ月が過ぎて初めて大規模修繕工事は完了となります。



写真:GYRO PHOTOGRAPHY/アフロイメージマート


ここまで読み終えて読者の皆さんの心境は二分したのではないでしょうか。資産価値の向上に結び付くのであれば積極的に参加したいと思った人。これに対し、こんな面倒な作業には加わりたくない。きちんと管理費や修繕積立金は支払っているのだから、有志の方々に一任したい。


強要や無理強いは逆効果ですので、仕方ない一面はあります。ただ、何千万円もの住宅ローンを組んで手に入れたマイホームを他人任せにするのは寂し過ぎます。良好なコミュニケーションは災害時にも役立ちます。自分の生命と財産を守れるのは自分だけなのです。マンションに永住したいなら長期修繕計画と大規模修繕工事にも関心を持ってください。固定観念の払拭がマンション永住の第一歩となります。


参考サイト

最終更新日:2019年11月29日

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