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筆者とKaiさん。
前回までのあらすじ
こんにちは。
今回も引き続き小笠原諸島・父島よりお届けいたします。
小笠原は東京から南へおよそ1000km、交通手段は片道24時間かかる定期船「おがさわら丸」のみ。
そんな小笠原諸島は、間違いなく「一番遠い国内」ですが、実はかつてアメリカ領だったことはあまり知られていないかもしれません。
そして今年はなんと返還50周年。
島では返還を記念し様々なイベントが開催され、10月には「Ogasawara Music Festival」という音楽フェスが行われるんですが……
リハーサル風景。筆者は手前のテントの中で配信機材のチェックとかをしている。
そのプレイベントでの音楽ライブを生配信するために、筆者とカメラマンは島を訪れたというわけなんですねえ。
でも、せっかく来たんだし「おうちコラム」の取材もさせておくれ!
ってことでイベントの主催者さんに紹介してもらったのが、こちら「シェアハウス海(うみ)」。
前回は海に近いこの家ならではの工夫やこだわりを伺いました。
小笠原のおうち拝見Part1 「海に一番近い家」は直射日光が入らない家⁉
様々な工夫が凝らされたシェアハウス海。(写真提供:ガッツ)
そして今回はKaiさんが小笠原に住む理由や、島での暮らしについて聞いていきたいと思います。
住宅や不動産といったテーマからはちょっと離れますが、「どんな地域に住んでどういう暮らしをしたいのか」というのも「住まい」を選ぶ上での大切な要素ですからね。
というわけで、今回もよろしくお付き合いください!
Kaiさんと、この時たまたま遊びに来ていたお母さんの千恵子さん。千恵子さんはベルギー在住。
バルコニーでしばし語る
バルコニーに出たKaiさんと筆者。
イケウチ「改めましてですけど、今日はすみません、急に押しかけたりして」
Kaiさん「いえいえ、全然大丈夫ですよ!」
イケウチ「最高ですね、ここ! よくここで、座ったりボーッとしたりとかしてるんですか?」
Kaiさん「けっこうよく。星とかキレイなんで。あとはバーベキューしたり」
イケウチ「泳いだり?」
Kaiさん「ですね。今朝もちょっと潜ってました。最近素潜りを始めまして」
イケウチ「はあ~」
海ではイカやタコ、季節になると鰯が捕れるそう。家の敷地内でウミガメが産卵していくことも。
島に移り住んだ理由
涼しげなKaiさんとクシャッとした筆者。陽射しが眩しい。
イケウチ「そーいやKaiさん、小笠原来て3年でしたよね。その前は何してたんですか?」
Kaiさん「ここに来る前はベルギーで大学行ってたんですけど……その当時は自分がどうしたいのか、なにがやりたいのか、あんまり分かってなかったんですね」
そう語るKaiさんは、インターンとして大阪の音楽関係の会社で働いたりした後、ダイビング関係の仕事ができたらと、一人小笠原にやってきたのだとか。
Kaiさん「初めてこの島に来た時は波が高くて、船がすごい揺れて、すごいアドベンチャーな感じで。で、島に着いても誰も知らなくて」
イケウチ「それで……いきなり居着いちゃったんですか?」
Kaiさん「そうですね。2ヶ月くらいヨーロッパに戻っていた時期もあるんですけど、またすぐに帰ってきて。ここにいたら絶対にいい人生が過ごせるって感じがしたんですよ。なんか、ガッツフィーリングというか?」
カメラマン「ガッツフィーリング?」
イケウチ「『身体で感じた』みたいな?」
Kaiさん「そうそう(笑)。今もまだ感じるんですけどね。シェアハウスを始めた時とか、最初は不安定だった。でも今はどんどんどんどん強まっている」
語らいは続く。
シェアハウス海
イケウチ「で、今はシェハウスをやっているんですよね。なんでシェアハウスをやろうと思ったんですか?」
Kaiさん「私はもともとダイビングで来たんです。自然が好きで、海の近くに住んでみたいって思って来たんです。それで住んでみて、ここがすごく気に入って。訪ねてきた両親もここが気に入って。それで、ここでなにか(事業等を)やってみないかという話になって」
イケウチ「へえ~!」
Kaiさん「この島に初めて来た時、家が全然見つからなかったんですよ。だから、私みたいなトラベラーが働きながら住める場所があればいいなあと思って」
イケウチ「あ、そうかそうか。ゲストハウスじゃなくてシェアハウスだから、本当に働きながらここで暮らす、長期滞在の人の物件なんですね。ちなみに今、空きはあるんですか?」
Kaiさん「8月まで埋まってるんですよ」
イケウチ「おおお」
2階にあるシェアハウス、共有スペース。(写真提供:ガッツ)
2階にあるシェアハウス、共有キッチン。(写真提供:ガッツ)
2階にあるシェアハウス、寝室。(写真提供:ガッツ)
そんな「シェアハウス海」には5つ部屋がありますが、島に暮らす人と観光客が生活レベルで触れあえる場所になればと、そのうち1部屋を短期滞在客用に貸し出しています。
日本語以外に英語とかドイツ語を話すKaiさんは、増えてきている外国人観光客をサポートし、島の人とコミュニケーションを取れる場所にもしたいのだとか。
物静かで温かいKaiさんが待つ「シェアハウス海」、もし小笠原を訪れたり、長期滞在する予定があるなら、チェックしてみてはいかがでしょうか!
2階部分がシェアハウスとなっているおうち。
仕事なのか、ライフスタイルなのか
再びリビングに戻った筆者とKaiさん。
イケウチ「でも、島で暮らすのって、大変じゃないですか?」
Kaiさん「そうですね。友人、知り合い、親戚がヨーロッパにいたりするので、なかなか会えないとか、時々大きな町やパーティー、ボウリングとか映画とか、この島にないものが恋しくなる時もあります。私、クラブミュージックとか好きなんで(笑)」
イケウチ「それは、ここにはないかも(笑)」
Kaiさん「住み始めると色々問題はあると思うんです、たとえばビックカメラがないとか(笑)。でもしばらくすると、ここのライフスタイルが好きな人は、ここの暮らしに慣れて、どういうモノを人生に求めていて、こういうものが必要で、こういうモノがいらないっていうのがクリアになってくる」
そういうKaiさんの部屋には趣味のDJ機材が置かれ、ビールを買いに行く時などに利用するというスケボーや自転車などが置かれている。
この日は朝から近づいてきているアウトリガーカヌーの大会の朝練に出たり、海に潜ったりと、人生を満喫しているようです。
イケウチ「なんか……楽しそうですね」
Kaiさん「楽しいですよ(笑)。オフィスワークが苦手というわけじゃないんですけど、もっと体を動かす仕事で、楽しい環境に住んで、働きたいって思いがすごく強い。通勤で1時間、2時間、電車や車に乗って、ずっとコンクリートに囲まれるのは、私にはそんなに向いていない」
「ライフスタイル」について語るKaiさん。
Kaiさん「私には仕事よりもライフスタイルの方が重要なんですね。こういうキレイな場所でイベントができたり、スポーツができる、そんなライフスタイルを求めてきた。自分は今のライフスタイルを実現するためにここにいて、今の仕事をしている」
イケウチ「仕事を中心に人生を考えるんじゃなく、自分の生きたい人生のために、住む場所、働き方、暮らし方を考える……みたいな?」
Kaiさん「そんな感じです(笑)」
イケウチ「おおおお~。じゃあ、この先も、この島で……」
Kaiさん「そうですね」
千恵子さん「というか、借金背負って会社立ち上げたんだし、頑張ってもらわないと(笑)」
Kaiさん「はい、頑張らないと(笑)」
取材の後・補足
Kaiさんの家の目の前の海。右の腰が引けている方が筆者。
実は、この取材をした日の夕方に「シェアハウス海」の前の海でSUP(スタンダップパドル)に初挑戦しました!
こういう「遊び」が、東京では想像できないくらい身近にあるのが小笠原のすごいところですね。
Kaiさんが、こんな素晴らしい環境の中で、楽しく遊び、働き暮らすというライフスタイルを選ぶというのも分かる気がします。
あ、ここでいう「ライフスタイル」というのは「都心の高層マンションに住んで外車に乗って」とか「小笠原でSUPをしながらデジタルノマドとして暮らす」みたいな表面的なことではなく、どんな場所でどんな風に自分の人生を過ごすのかという、自分で選択した「生き方」のことですね。
筆者やカメラマンの周りにも、家族との時間を大切にしたい、自然の中でもっとノンビリ暮らしたい、様々な理由で東京を離れ、自分の選んだ人生を生きようとしている人も増えています。
今の自分は、本当に自分の望む場所で、自分の望む人生を送れているのだろうか?
たまにはそんなことを自分に問い直してみるのもいいのかもしれません。
「高度成長期の時は食べることとか、いい旅行するとか、そういうことばっかり考えていたけど、今は『自分は何をしたいのか』を考えるようになった。そう思うと、日本人は豊かになったんでしょうねえ」
記事の中では詳しく書けませんでしたが、取材の最後に千恵子さんが言っていた、そんな言葉も印象的でした。
というわけで今回はここまで!
Kaiさん千恵子さんありがとうございました。
次回も引き続き小笠原からとなります。
なんとなんと、「DIYで自宅を建てちゃった」という人のお宅からです!
お楽しみに!
(文・池内万作 写真・池内みちよ)
最終更新日:2018年12月20日
俳優(東宝芸能)
池内 万作
1995年映画『君を忘れない』で俳優としてデビュー。以後、映画・テレビを中心に活動中。代表作として「こちら本池上署」シリーズ(TBS)、映画「光の雨」、「この世の外へ~クラブ進駐軍~」、「犬神家の一族」等。
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