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SUPを楽しむ筆者。
前回までのあらすじ
今回も引き続き小笠原諸島は父島からお届けです。
10月に行われる「Ogasawara Music Festival」をお手伝いすることになった筆者とカメラマンは、そのプレイベントの生配信をおこなうために、小笠原にやってきたというわけ。
シェアハウス海オーナーのKaiさん。
せっかくなので「おうちコラム」の取材もさせてくれませんかね、とイベントの主催者に頼み込み、まずは海に一番近い家、「シェアハウス海」を紹介していただきました。
南の島ならではの建築の工夫や、なぜ島に移住して暮らすことにしたのか、そんな話をKaiさんに聞かせてもらったのが前回。
小笠原のおうち拝見Part1 「海に一番近い家」は直射日光が入らない家⁉
小笠原のおうち拝見 Part2 「求めたライフスタイル」がある暮らし
2軒目となる今回は「DIYで家を建てちゃった」という方のおうちにお邪魔することになりました!
家って自分で建てられるんですね……。
自分でもなんちゃってDIYをやる筆者としても興味津々です。
さあ、どんなおうちが待っているのでしょう。
今回もよろしくお付き合いください!
ここは本当に日本なのか!?
未舗装道を往くガッツ車。
Kaiさんの取材をし、小笠原の森をハイキングしたり、海でSUPに初挑戦したりと、小笠原を満喫したその翌日。
県道から未舗装道路へと入った車は、筆者とカメラマンを乗せガタガタと揺れながら走っていました。
突然現れた駐車場。その脇にはツリーハウスも。
そんな風に走ること数分。
車が止まったのはこんなところ。
どこもかしこも緑だらけ。
都内では見ない植生が辺りを覆い尽くし、ツリーハウスなんかもあったりします。
そこで車を降り、緑を切り拓いて作った道を行くと、「ここは本当に日本なのか!?」、そう呟きそうになる風景が姿を見せます。
ジャングルの中にある集落、のように見える。
市野邸。裏は崖で傾斜面に建っている。
ここが今回お世話になる「市野さん」のおうち。
一見フツーの家ですが、これ大工さんでもない人が、自分で建てたものですからね。
フツーってこと自体、奇跡だと思いません?
今回お世話になるのは
この家を建てた、市野さん。
今回の取材を快く引き受けてくれたのが、市野雄一さん。
もともとリバーカヤックの競技者で、カヤック関係の仕事で生計を立てたかったため、知り合いのいる小笠原に18年前に移住。
その方の会社「プーランプーラン」でシーカヤックガイドを努め、独立。
今は「アキビーチ シーカヤック クラブ」の代表で、シーカヤックガイドをやられています。
そしてテラスには子犬の頃に拾った「麦」も。
犬の麦。
おうちの中は
LDKで迎えてくれた市野さん。窓のところに立っているのはSUPの師匠、ツヨシさん。
玄関を入ると吹き抜けになったLDK。
屋根は杉材、壁はコンパネに打ちっぱなしのビスが目立ちます。
「なぜビスが見えたままなんだ?」と気になる人もいるかもしれませんが、これはちゃんと理由があってのこと。
その真相は最終話で(おそらく)明らかになることでしょう!
LDKから撮った写真。
玄関(写真左)を入るとLDK。その左側奥にもう1部屋(写真中央)。右側奥にはバス、トイレ、洗面所への入り口が(写真右)。部屋にはロフトもあり、そこは寝室と収納スペースになっています。
不思議な刷り込み
市野さん「(この家は)去年の10月くらいにできたんですよね」
カメラマン「へえ~!」
イケウチ「どれくらいかかったんですか?」
市野さん「えっと、4年半くらい(笑)」
イケウチ&カメラマン「4年半!」
傾斜地ということもあり、基礎を作るだけで1年。
建てている間は、近所の借家で仮住まいを続けながら、時間がある時に作業を行っていたという。
イケウチ「すっげえ……」
市野さん「でも、この辺だいたい、みんな、自分で作ってるから(笑)」
イケウチ「ええっ!? 家をですか!」
LDKで市野さんの話を聞く筆者。手前が市野さんを紹介してくれた、ガッツさん。
なんだか知っている世界が崩れ落ちていくようです(笑)。
市野さんにお茶を頂きつつ、話の続きを。
イケウチ「そもそも、なんで自分で家を建てようなんて思ったんですか?」
市野さん「元々プーランプーランってとこでシーカヤックのガイドしてたんですけど、そこのオーナーが全部(家を)自分で作ってたから。
それを手伝ってるうちに、『家は自分で作るモンなのかな?』みたいな。
不思議な刷り込みじゃないけど……そういうもんかなって(笑)」
イケウチ「……マジか(笑)」
カメラマン「すごすぎる(笑)」
電気と水回り
イケウチ「電気とか、どうしたんですか?」
市野さん「電気はさすがに頼みました。時間もなかったから、プロに任せて」
イケウチ「水回りとかは……」
市野さん「配管は自分で」
イケウチ「おおおお!」
市野さん「でも、最近インターネット見れば、けっこうやり方書いてありますからね」
イケウチ「えっ?『家の建て方』みたいな?」
市野さん「いや、『配管のやり方』みたいな」
イケウチ「……ですよね(笑)」
日本のトイレと違うところ
カメラマン「じゃあ、トイレも自分でやったんですか?」
市野さん「見ます? 見た目はいたって普通のトイレですよ」
言われたとおりなんの変哲もないフツーのトイレです。
しついこいようですが、「なんの変哲もないフツーのトイレ」を作れちゃうって事がすごいことなんですよ。
「万が一逆流でもしたら……」
そう思うとトイレの取り付け作業なんて怖くてできませんもん。
配管も設置も市野さん一人でおこなったトイレ。少しだけ変わった点がある。
イケウチ「どこが大変だったですか?」
市野さん「トイレって浄化槽に繋がってるじゃないですか? フツーなら浄化槽の管理って自治体がやってくれるんですけど、浄化槽も自分で設置しちゃったから、管理も自分でやんなきゃいけないんですよねえ」
イケウチ「へえ~」
市野さん「で、紙を流すと浄化槽の寿命が縮まっちゃうから、うちのトイレは、紙は流さない」
イケウチ「えっ!? 」
市野さん「そこに来た人用に注意書き書いてあるんだけども、紙は缶の中に入れてもらって……そこはちょっと違うかな、日本のトイレとは(笑)」
イケウチ「日本のトイレって(笑)」
トイレの中のあれこれ。
浄化槽は汚水をためて微生物で分解する仕組みで、人間の出した物は比較的分解されやすいのですが、紙などはそうもいかず、清掃の必要が出てきたり、寿命が縮まってしまうのだとか。
一番大変だったのは
ユニットバスに見入る筆者。
市野さん「風呂とかもねえ、フツーのを付けたんですけど、付けんの大変でしたね。ユニットバス付けんのが一番大変だったかも」
イケウチ「……ユニットバスって据え置けばいいってイメージなんですけど」
市野さん「いやあ、そうなんですけど……メーカーが送ってきた図面を見て、あまりに色々なこと書いてあるから『たぶん大丈夫だろ』って思って注文したら、ドアの場所が違うのが来ちゃって(笑)」
イケウチ「ええっ~! そんなたくさん色々なことが書いてあるんですか?」
市野さん「もうね、素人が見るには情報が多すぎて。細かいとこにけっこう重要なことが書いてあったんですよね。結果、大丈夫じゃなかった(笑)」
笑いの絶えない取材。
小笠原は日本本土から1000km離れている島なので、ユニットバスも東京から唯一の交通機関である定期船「おがさわら丸」で運ばなければなりません。
東京で購入し、船に積み込み、島に帰って組み立てようとしたら、ドアの位置がまるで違う場所にあったことが判明!
その時は「これ、使えないのかな……」と絶望感に襲われたそうですが、最終的には間取りを変更して、なんとか対応したとか。
イケウチ「そういえばユニットバスだけじゃなくて、材木も島内での調達は難しいって聞きましたけど……」
市野さん「そうなんです。だから、材木からなにからなにまで、いっさいがっさい船で運んできて」
イケウチ「へえ~!」
筆者のふとした疑問
大工の棟梁は家の大きさを聞けば、建てるのに必要な資材の量、職人の数、建築費用なんかが分かるなんていいますが、市野さんは大工の棟梁ではなく、シーカヤックの人ですから。
必要な資材は全部内地で購入して船で持ってきたといいますけど、「家一軒分の資材」がどれくらいになるのかなんて想像もつきません。
イケウチ「でも……どうやって必要な資材の量を見積もったんですか? 建てる前に計算するのって大変じゃないっすか?」
市野さん「ああ。それはね、まずは最初にね……」
奥の部屋へと消える市野さん。取り残される筆者。
そういうと市野さんは奥の部屋に消えていきました。
何かを探すゴソゴソという音が聞こえてきます。
市野さんは、一体何を探しているのでしょう?
その答えは次回記事までお待ちください!
というわけで今回はここまで!
次回をお楽しみに。ではまた!
(文・池内万作 写真・池内みちよ)
最終更新日:2018年12月20日
俳優(東宝芸能)
池内 万作
1995年映画『君を忘れない』で俳優としてデビュー。以後、映画・テレビを中心に活動中。代表作として「こちら本池上署」シリーズ(TBS)、映画「光の雨」、「この世の外へ~クラブ進駐軍~」、「犬神家の一族」等。
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