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<北欧>ゆらり揺られ台本読み 舞台女優のロッキングチェア

2017年08月15日

佐野 俊輔

<北欧>ゆらり揺られ台本読み 舞台女優のロッキングチェア

北欧デンマーク〈座る〉紀行 #7

<北欧>ゆらり揺られ台本読み 舞台女優のロッキングチェア

インテリア知らずの不粋な37歳男が、お洒落インテリアデザインの本場・北欧デンマークを中心に、シックで小粋でハイカラな椅子やらソファやら、理想の〈座る〉を追うこの企画。

家の中で快適に過ごしたい北欧の人たちにとって、〈座る〉という行為は、日々暮らすうえで欠かせないはず。そんな仮説をもとに、「市井の人たち」を先生に見立て、インタビューを通じて、そのポイントを教えてもらいます。インテリアのプロではない彼らの、リアルな暮らしぶりをご覧ください。


今回は郊外の一軒家に家族で暮らすギーデさんにアタック。さてさて、どんな〈座る〉に出合えるでしょうか。


【取材概要】 

今回の先生:ギーデ・イェンセンさん(47歳)

素敵ハウスの場所:デンマーク グレーノ

素敵ハウスの築年数:60年

鳥のさえずりが聞こえる家 

ユラン半島に位置するデンマーク第2の都市・オーフスから、バスに揺られながら北東に進むこと1時間半。カントリーサイドの観光都市・グレーノに到着です。夏場には海沿いの浜辺が観光客で賑わうそうです。ギーデさんの素敵ハウスは、丘の近くありました。

ギーデさんの素敵ハウスから徒歩5分、丘の上にある風車。牧歌的。

ガレージつきの素敵ハウス。デンマークの美しい初夏です。


ギーデさんは、小学校で放課後の児童保育の仕事をしています。普段は、子どもたちと一緒に絵を描いたり、本を読んだり、ボードゲームをしたり、ケーキを焼いたりしているとのこと。取材前にお邪魔したのですが、その日は、子どもたちと焚き火をしていました。焚き火を目にすると、私の頭の中では童謡「たきび」(※1)が“自動再生”されます。児童だけに……。ちなみに、我が家は以前、灯油ストーブを愛用していました。灯油屋さんがトラックに乗って灯油を売りに来る際に、音質のすこぶる悪い「たきび」を流していたことが、ふいに思い出されます。とぅるるるるるるる、る、る、る。


(※1)ご存じ、日本を代表する童謡です。作詞・巽聖歌氏、作曲・渡辺茂氏。この歌以外で「ぴいぷう」という言葉が使われているのを聞いたことがありません。ほかの使用事例をご存じの方はご一報ください。


なお、ギーデさん、週末は舞台女優。「アマチュアよ」とはおっしゃるものの、普段着ながらその然とした佇まいは、もはや女優のそれです。

「お前、ここに何しに来た」的な視線を投げかけてくる猫のエストリくん。

リビングルーム。大きな窓に、映える緑。大きなソファに、たくさんのクッションとブランケット。これがデンマーク式なのでしょうか。中央のテーブルの天板部分は石でできていました。素材のミックス感がたまりません。

ギーデさんとお嬢さん・エヴィアヤさん。デンマークの親子関係は比較的フラットな印象を受けます。素敵なソファのひじ掛けは、腰掛けと足掛けに。それはそうと、ケチャップ片手にエヴィアヤさんは何を話しているのか……。

インタビュー前に、家族の皆さんがテラスに大集合! 二人のお嬢さん(姉のエヴィアヤさん、妹のスィーアさん)に、旦那さんのクラウスさんまで。恐縮します。そして、鳥のさえずりがBGM。最高に贅沢です。

思い出は特にない? ロッキングチェア

それでは早速インタビュー開始です。


――あなたの好きな椅子、もしくはソファについて教えてください。


ギーデ

私が好きなのは、ロッキングチェアね。座ったときの、揺れる動きが好き。毎日このチェアには座るわ。仕事から帰ってきたら、ひとり、コーヒーを飲んでリラックスするの。ときどき猫が膝に乗ってきたりもするけど。

窓際のロッキングチェア。家に椅子があるだけの風景なのに、なんでしょう、このいい感じは。


――このチェア、どのようにして手に入れたのでしょうか。


ギーデ

私のお婆ちゃんが亡くなったときにもらったの。もう20年くらい前かしら。最初は2脚あったんだけど壊れてしまって。いまはこの1脚だけね。どれくらい古いものかはよくわからないの。

お婆ちゃんはこのチェアに座って、編み物をしていたわ。パッチワークがとても得意だったの。ブランケットやテーブルナプキンをよくつくっていたわ。

ゆらりと揺れるロッキングチェア。同じロッキングチェアといえども、連載2回目(<北欧>ペットは馬 豪邸で代々受け継がれるロッキングチェア)のものとはずいぶん形が異なります。

<北欧>ペットは馬 豪邸で代々受け継がれるロッキングチェア

――お気に入りの過ごし方はありますか。


ギーデ

新聞や小説を読んだりするわね。私も夫も、北欧の犯罪小説が好きだからよく読むの。夫は、私より読むのが早いし、夕方も私より時間があるから、2日足らずで読み終わるの。高い本なのに、2日しか楽しめないのよ! 本当にもったいない! 私はゆっくり読むの。それで、買いたい本があったら、夫に言って買ってもらうのよ。

アマチュアでお芝居もしているから、台本を読んで覚えるときもこのチェアに座わるの。台本を読んで、ページを閉じて、目を閉じて、口を動かして覚えるの。

台本を読む(ふりをしてくれる)ギーデさん。

台本を読む(ふりをしてくれる)ギーデさんの足元。亀。


――それではここで、お嬢さんにも質問。ロッキングチェアに座っているお母さんはどんな感じですか?


スィーア

お母さんが座っているときは、私、猫みたいに邪魔することが多いかもしれない。「ねえねえ、私のこと見てよー」とか、「ねえねえ、何か買いに行こうよー」とか。

それから、そうねえ、座ってるお母さんはまさに“オールドレディ”みたいに見えるわね。お婆ちゃんみたい! あはははは。


ギーデ

ああ、そう。それはどうもありがとう、優しい子ね!(デンマーク的皮肉)

青空の下で繰り広げられるデンマークジョーク。あまり知られていないですが、デンマーク人は比較的、皮肉が好きです。


――さて、私は理想の椅子やらソファやらを探しているのですが、どうやったら見つかりますか。何かアドバイスがあれば教えてください。


ギーデ

うーん、何がいいかしらねえ。家具屋さんに行って、革のソファなんか探してみるといいかもしれないわね。綺麗で、スタイリッシュなソファ。でもそういうのって重いし、高いのよね。

大事なのは、「使うために持っている」ということだと思うわ。生活していれば、コーヒーをこぼすことだってあるじゃない。うちには猫がいるから、引っ掻いたりすることもあるし。


エヴィアヤ

いま思い出したんだけど、私、友だちのうちに遊びに行って、ソファにコーヒーをこぼしちゃったことがあるの。そしたら、友だちの顔が真っ青になって。「お母さんに怒られる」って。友だちのお母さんはインテリアにすごくこだわりがある人で、しかもとても厳しい人なの。私、申し訳ない気持ちと、怖い気持ちで苦しくなっちゃったんだわ。


ギーデ

あら。それは大変。でもうちじゃあ、そんなことないわね。あはははは。コーヒーカップだって物だって好きに動かせばいいのよ。「ここにこれを置いておかなくちゃいけない」なんて、ない。どうなったって全然気にしないから。

実を言うと、私、このロッキングチェアにまつわる思い出って特にないの。ここにあることが当たり前すぎて、考えたこともない。

私たち、ミュージアムに住んでるわけじゃなのよね。ここで暮らしているの。取り散らかってるけど、それが私たちにとっての“Hygge”(※2)だから。


(※2)ヒュゲ。デンマーク語で「リラックスして、心地いい時間を過ごすこと」をあらわします。デンマーク人が愛して止まないことのひとつです。

ひじ掛けに刻まれた猫ちゃんの引っ掻き傷。ここにドラマチックな物語があるわけでもなく。ただ、日々使われていた小さな証ですね。

恒例のおまけ、素敵ハウス探索

最後に、ギーデさんの素敵ハウスの素敵ポイントをご紹介。

ダイニングに掛けられた棚(どこかのオシャレ雑誌で見たことあるやつだ!)。左上の斜めに置かれた、めん棒(パンをつくる際に使う棒)すら美しさを放ちます。

ダイニングのちっちゃなランプ。「緑にするか紫にするか、お店ですごく迷っちゃって。で、選びきれなくて、結局どっちも買っちゃった」とギーデさん。

リビングの一角に吊るされた、謎の木のオブジェ。金属のハートがこれまた可愛い。こういうものが部屋にあると、一気にアート感が増します。

トイレ! なんですか、このオシャレ感は。トイレなのに照明が凝っている! 「トイレ撮りたいです」とお願いすると、エヴィアヤさんが笑ってました。

【今回の〈座る〉の学び】

理想の〈座る〉を求めた7回目、いかがだったでしょうか?

今回の取材を通じた〈座る〉の学びをあらためて。


1.「私だけの場所」を持つ大切さ

ギーデさんにとって、ロッキングチェアは「私だけの場所」でした。ギーデさんの忙しい毎日をそっと、でも確実に支えています。日々の中で一息つくことができる場所を持つのは大切なこと。日本に住む私たちは、力を「入れる」ことには日々目を向けていますが、力を「抜く」ことは疎かにしがちです。デンマークの人たちは、リラックスすることにとても意識的。ぜひ見習いたいところです。


2.ソファもチェアも飾り立てる必要はない

ロッキングチェアをはじめとして、ギーデさんのうちにあった家具はどれも「使われるためのもの」でした。格好良く飾り立てて、見栄などもついつい張りたくなってしまいますが、そういうものはあまり意味を持たないのでしょう。私がお邪魔してから部屋を片付けていたのも印象的です(これは笑ってしまいましたが!)。「私たち、ミュージアムに住んでいるわけではない」というギーデさんの言葉は至高。


――それにしても、ギーデさん一家の仲のよさが羨ましい限りでした。理想のチェア探しもいいけど、それより理想の家族探しが先決か……?


(取材・文・写真 佐野俊輔)

最終更新日:2017年08月15日


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