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<北欧>一緒に暮らして57年 モダンな部屋のお洒落ソファ

2017年09月05日

佐野 俊輔

<北欧>一緒に暮らして57年 モダンな部屋のお洒落ソファ

北欧デンマーク〈座る〉紀行 #8

<北欧>一緒に暮らして57年 モダンな部屋のお洒落ソファ

インテリア知らずの不粋な37歳男が、お洒落インテリアデザインの本場・北欧デンマークを中心に、シックで小粋でハイカラな椅子やらソファやら、理想の〈座る〉を追うこの企画。なんと、最終回となってしまいました。

家の中で快適に過ごしたい北欧の人たちにとって、〈座る〉という行為は、日々暮らすうえで欠かせないはず。そんな仮説をもとに、「市井の人たち」を先生に見立て、インタビューを通じて、そのポイントを教えてもらいます。インテリアのプロではない彼らの、リアルな暮らしぶりをご覧ください。


最終回となる今回は、企画史上最年長となる、カールさん・インガさん夫妻にアタック。さてさて、どんな〈座る〉に出合えるでしょうか。

【取材概要】

今回の先生:カール・エルケアさん(82歳)、インガ・エルケアさん(81歳)

素敵ハウスの場所:デンマーク フレデリシア

素敵ハウスの築年数:35年

リノベーションで美しくなった集合住宅 

ユラン半島の東側に位置する地方都市フレデリシア。カール・インガさん夫妻の素敵ハウスは、中心部から離れた静かな郊外にありました。築年数は35年になりますが、5年前にリノベーションして綺麗になったという集合住宅は、大変美しい佇まいです。現在はユーゴスラビアや韓国の人なども住んでいて、インターナショナルな場所になっているようです。

シックな建物のグレーと植えられた緑の対比が美しい、ベランダ側の外観。

未来チックな入口側の外観。シルバーに赤いサインが刺激的。ベランダ側の壁はグレーなのに、入口側はブラウンです。何とも不思議な組み合わせ。


引っ越しを繰り返しながらも、生まれてからずっと、フレデリシアに住み続けてきたカール・インガさん夫妻。1960年に結婚してから早57年。月日は流れ、いまではお子さん2人に加え、お孫さん6人、ひ孫さん1人の大家族となりました。カールさん曰く「たくさんの家族を持つのは本当にお金がかかることなんだ……」。それでも嬉しそうなのは気のせいでしょうか。それにしても、「たくさんの家族」と聞くと思い浮かぶのは、名作テレビドラマ『ひとつ屋根の下』(※1)ですよね。


(※1)江口洋介さん主演、フジテレビ月曜夜9時のホームドラマ。「昭和ネタだ!」と喜んだのも束の間、調べてみると放送は1993年4月から6月まで。1993年はまさかの平成(5年)でしたよ、あんちゃ~ん。


ふたりは2年前に、いままで住んでいた一戸建ての大きな家を引き払い、こちらに引っ越してきました。

光射すダイニングルーム。赤紫色のテーブルクロスと椅子の統一感ときたら!

ひさびさのご紹介、ステキッチン! ダイニングとリビングの間にあり、不思議なつくりになっています。上の棚に飾られたポットが美しいです。

人生で7つ目のソファ

それでは早速インタビュー開始です。


――あなたの好きな椅子、もしくはソファについて教えてください。


カール

僕らが好きなのは、このソファだね。ふたりで足を伸ばして座っても、もうひとり座ることができる。背もたれが身体をうまく支えてくれることもあって、とても快適なんだ。もちろん、色も気に入っている。濃い色だから、ビールをこぼしても平気だ。実用的な理由だよ。


インガ

シープスキンの椅子も買ったんだけど、そっちは失敗したわね。座ると汗をかいてしまうの。すごく高くて、すごくいい椅子だったんだけど。残念よね。

ビールをこぼしても目立たず、汗をかいても吸ってくれる、ふたりお気に入りの布地。


――このソファ、どのようにして手に入れたのでしょうか。


カール

前の大きな家から、この家に引っ越ししたときに買いに行ったんだ。年を取ると、一戸建てから集合住宅に引っ越す人は多いよ。大きな家に住み続けるのは手入れやらなんやらで大変だからね。大きな家具はここには持ってこられないから処分して、新しい家具を揃えたんだ。

このソファのブランド名はわからないな。フレデリシアにある家具屋・IDEmøbler(イディムーブラ※2)で手に入れた。ともかく、どれにするか選ぶのはインガ、僕はお金を出す係だ。わかるだろう、これがWoman powerだよ。いつだって女性が強いんだ。


(※2)デンマーク国内に40店舗ほどある家具のチェーン店。

「小さなこの家に合うように買った」というソファ。家もソファも、日本と比較するとだいぶ巨大ですが……。なお、写真右奥に見えるのが失敗したシープスキンの椅子です。


――このソファ、どんな風に使っていますか。


カール

僕はリラックスしながらテレビを観たり、コーヒーやビールを飲んだりする。この場所にいることは多いよ。僕がここに座って「何か欲しいな」と思ったら、すかさずインガが何か運んできてくれる。――といったことは、もちろんないさ! 欲しいと思ったら自分で取りに行くんだよ。


インガ

私もだいたい、このソファに座っているわね。iPadで新聞を読んだり家族の写真を見たり、コーヒーを飲んだりお菓子を食べたりするわよ。

私には毎日のリズムがあるの。料理をつくって、食べて、疲れてここに座る。もう81歳だからね、若いころと比べるとすぐ疲れちゃうのよ。年老いれば老いるほど、いろいろなことは大変になるの。だからソファで休むのはとても大事なことなのね。

iPadを使いこなすインガさん。窓の横、向かって左側が定位置です。

冷蔵庫から自分で運んで、自分で注いだビールを飲むカールさん。


カール

映画を観たり旅行番組を観たりするけど、一番好きなのは、金曜日の夜にアニメ番組のドナルドダックを観ることだね。あれはいい笑いだ。笑うとリラックスできるから、健康にもとてもいいよね。


インガ

私は犯罪映画を観るのが好き。髪の毛一本の証拠で、犯人を捜していくのがワクワクするのね。


カール

そうなんだよ、インガは殺人事件が出てくる、犯罪映画をたくさん観てるんだ。僕は、彼女がそこから何か善からぬことを学ぶのをとても恐れているよ(※カールさんのデンマーク的ジョーク)

犯罪映画の話を聞いてから見ると、急に意味深に見えてくる黄色のクッション。


――これまで、いろいろなソファや椅子をお持ちだったと思うのですが、このソファは何番目に好きですか。


カール

これまで使ってきたソファの数を数えると、おそらく7つほど。このソファは何番目になるかな、順番をつけるのはなかなか難しいね。

ただ、それとは別で、これまでで一番印象に残ってるソファの話をしてもいいかな。50年前に持っていた木のソファだよ。

ある日眺めてたら、ソファの中からハチが出てきたんだ。木の中で幼虫が育って羽化したのか、それとも巣をつくって住んでたのか……。ともかく、びっくりしたよ。ソファからハチだよ。ただ、子どもたちにとっても印象的な出来事だったと思う。


――それはなかなか貴重な体験ですね。童話に出てくる魔法のソファみたいで羨ましい限りです。

さてさて、私は理想の椅子やらソファやらを探しているのですが、どうやったら見つかりますか。何かアドバイスがあれば教えてください。


インガ

ソファとベッドは、選ぶのが難しい二大家具ね。


カール

自分が「人生のどんな段階にあるのか」によって変わってくるよね。例えば恋人がいたり結婚したばかりだったら、すぐにくっつけるような、小さなソファがちょうどいいだろう。僕らくらいの年になったら、残念ながらその必要もないけれどもね。ははは。

自分の子どもや孫たちを見ててもわかるけど、若い学生のときなんかは、だらっと座りたいよね。だけど面白いことに、彼らも子どもができて、そのあと徐々に成長していくと、親である自覚からか、段々と、きちんと座るようになるんだよ。


インガ

(※完全に使いこなしているiPadでお孫さんの写真を私に見せてくれながら)そうそう、でも、子どもがすごく小さいときには、ソファは必要なくて、床に座ることの方が多いかもしれないわね。


カール

人を家に招くことが増えれば、お客さんも座れるような大きなものが必要になるだろうね。そのときどきによって、欲しいものは変わるんだ。

でも、いつだって “Sofa is calling for me” だよ。「ソファは私を呼んでいる」、だから僕らは、ソファに呼ばれたらどんな状況であったとして、座らなくてはならないんだよ。ははは。もし君が日本に戻ったら、“Sofa is calling for me”っていう広告コピーを使って、ソファを売ったらいいさ。きっとたくさん売れるよ!

「もはや、くっつく必要はない」と語りつつも、仲よしなふたり。これが人生の妙味でしょうか。

恒例のおまけ、素敵ハウス探索

最後に、カール・インガさん夫妻の素敵ハウスの素敵ポイントをご紹介。

シンプルな寝室。お嬢さんがインドに行ってお土産に買ってきてくれた象柄パッチワークの布がアクセントになっています。

たくさんの家族写真が飾られたダイニングルームの棚。なお、一番上の段の中央にはデンマーク国旗が飾られています。デンマークの人は無類の国旗好きなので、いたるところで目にします。

インガさんが棚から出して見せてくれた、50年ほど昔の家族写真。ふたりとも、若い! なお、インガさんはデンマーク語でマシンガントークをぶち込んできます。私がデンマーク語を解するか否かは全くお構いなしです(たぶんこの写真の解説だと思われる)。これが80年以上生きてきた人の強さか、あるいはカールさんの言っていた、Woman powerの強さか……。

玄関に置かれたテレフォンテーブル。テーブル部分に電話を置いて、椅子の部分に座って電話をしていた、とのこと。電話が高級な機器だった時代の逸品。この素敵ハウスの中で最も高価な家具だそうです。その凛とした佇まいから、おいくらなのかすら、聞けませんでした……。

【今回とこれまでの〈座る〉の学び】

理想の〈座る〉を求めた8回目、いかがだったでしょうか。カール・インガさん夫妻の年齢とあいまって、最終回っぽい流れとなりました。今回とこれまでの取材を通じた〈座る〉の学びをあらためて。


1.私たちは人生のうちで、いくつかのソファを買う

ソファや椅子を買うときは、それを「永遠に使うような気持ち」でいます。しかし、人生これから先だって、きっと別のものを買うときは来るんですよね。「いまここ」にあるソファや椅子ごとに、思い出を貯めていく気持ちをどこかで持っていてもいいのかもしれません。カール・インガさん夫妻のように、50年も前に持っていた椅子のことをいまでも覚えているのですから、ね。


2.理想のソファは「変わる」かもしれない

どこかにずっと変わらない、完璧なソファがあると思っていた節がありました。しかし、考えてみればわかるように、そんなことはきっとないんですよね。

家族が増えたり減ったり、住む場所が広くなったり狭くなったり、 病気や怪我や老化で自分や家族の身体の具合が変わったり、と私たちは少しずつ(あるいは時に急に)変化していくんですよね。そのときどきで欲しいものを考えていくことは、きっと自分の人生自体を考えることと似ているんでしょう。


――さて、これにて「北欧デンマーク〈座る〉紀行」、お開きとなります。短い期間でしたが、ここまでお付き合いいただいた心優しき読者のみなさん、ありがとうございます。みなさんが近い未来、素敵な椅子やらソファやらに出合えることを願ってやみません。

それでは、また会える日まで、ごきげんよう!


(取材・文・写真 佐野俊輔)

最終更新日:2018年08月30日

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