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「片手」「両手」ってどういう意味? 元・不動産営業マンに聞き...

2018年10月03日

日刊Sumai

「片手」「両手」ってどういう意味? 元・不動産営業マンに聞きました

「片手」「両手」ってどういう意味? 元・不動産営業マンに聞きました

今回は不動産取引における「片手」「両手」というものについてお話したいと思います。


不動産取引で業者が客から受け取るお金は、賃貸借、売買いずれの場合も原則として契約締結に持ち込んだ場合の仲介手数料だけです。

物件を何件も紹介し、交通費などの経費を使って現地案内を繰り返したお客様でも、他社で契約されてしまえば1円のお金も入ってきません。


業界が抱える問題点のすべての根源が、ここにあるように思います。


仲介手数料は、賃貸の場合は月額賃料の1か月分、売買の場合は売買代金の3%+6万円と決まっています。

売り上げを増やして給料を上げるためにはなるべく金額の大きな物件を決めることがカギとなりますが、もう一つの手段として「両手」をねらうというものもあります。

そもそも「両手」「片手」とは一体何のことを差すかご存じでしょうか。

売主と買主に別々の仲介会社がつく「片手」取引って?

shimanto / PIXTA(ピクスタ)

不動産取引において賃貸の場合は貸主と借主、売買の場合は売主と買主という2組の当事者があります。


家を売りたい、貸したいと思っている人は自分で客を探すのが難しいため、媒介契約を結んで不動産業者に依頼します。

一方、家を買いたい、借りたいと思っている人も不動産業者を訪れて物件を紹介してもらいます。


ややこしくなるため、ここから先は売買に限定します(賃貸でも内容は変わりません)。


甲さんの依頼を受けたA社が売却活動をした物件をB社が乙さんに紹介し、甲さんと乙さんの間に1,000万円で売買契約が成立したとします。


この場合A社は甲さんから、B社は乙さんからそれぞれ36万円の仲介手数料(税抜)を貰います。

売主側と買主側の仲介会社が違うこのような取引を「片手」と呼びます。

 

売主と買主の仲介会社が同一の「両手」取引って?

ふじよ / PIXTA(ピクスタ)

甲さんから売却依頼を受けたA社が、A社で物件探しをしている丙さんに紹介して甲さんと丙さんの間で売買契約が締結されたとします。


この場合A社は売主の甲さんと買主の丙さんの両社からそれぞれ36万円の仲介手数料(税抜)を貰うことができ、1件の取引で2倍の売り上げとなります。

このような取引を不動産業界では「両手」と呼んでいます。当然のことながら営業はまず両手を狙います。


物件を「物上げ」した場合まず自分の客に紹介できないか考え、次いで同じ店の他の営業に紹介可能な顧客を抱えていないか確認します。


物件情報をオープンにするのはその後です。

 

「両手」取引はそんなに悪いことなの?

maroke / PIXTA(ピクスタ)


この両手取引が“評論家”の間で評判が悪く、「不動産業界における悪しき商習慣」の筆頭のようにまで言われています。


私が不動産業界に転身した19年前、入社初日に読んだ業界誌で「両手取引では利害関係が異なる売主・買主の双方に対して責任が果たせない」と書かれていたことを今でも覚えています。


売主は高く、買主は安く取引したいのが当たり前なので一つの会社で仲介するのは利益相反だと言うのです。


両手取引の場合買主と売主の間に1社しか入らないため、買主の値引き要求(「指し値」という)があれば売主がそれを飲まされて損をするというのですが果たしてそうでしょうか。


現実の取引では購入申し込み(買付け)が入ると片手であっても両手であっても仲介会社は何としてもその客で決めたいと思います。


先ほどの事例でいえば、B社にとっては自社で紹介した物件で決まらなければお金になりませんし、A社にとってはこの申し込みが破談になればそれ以降に別の申し込みが入る保証はなく、それではやはりお金になりません。

ですから指し値が無茶な内容でない限り、買い付けが入ればA社は売主を説得しようとします。

これはA社の両手取引でも変わりません。


売主の側にとっても早い段階で指し値に応じて売ってしまうことにメリットはあります。

指し値を断って破談になればその後物件が売れ残る恐れがあり、そうなると値引きか売却中止しかないからです。


そもそも売主は指し値が入ってくることを前提にして、相場に少し上乗せして値付けをしているものです。

そして買主の希望する金額が納得できなければ断ればいい話です。


お互いが意地になって50万円の差額がどうしても埋まらず、両手取引が成立しなかった経験が筆者にはあります。

従って、両手取引で誰かが不利になる、という事は実際にはないのです。

 

「両手を狙って物件を囲い込む」というのは本当?

ふじよ / PIXTA(ピクスタ)

「両手取引を狙うあまり、業者は物件情報を他社に流さず囲い込む」という指摘もよく見ます。

囲い込みにより売却が遅れたり、それによる値引きで売主が不利益を被るというものです。

両手取引はもちろん効率的ですが、特定の物件に狙ってできるほど客付けというのは簡単なものではありません。


物上げした物件をピンポイントで気に入ってくれる客を自分で見つけるのは至難の技で、そんなことをしても買い客を逃すだけです。

囲い込んだまま売れずに売却中止になる、あるいは一般媒介に切り替えられて他決するという最悪の事態を考えると、両手取引を狙って物件を囲い込むことにメリットはありません。


何より営業マンというものは今月の数字をどうするかということしか考えない人間です。

将来どうなるかわからない物件を抱え込むよりは、片手でいいから決めて今月の数字にしたい、と考える方が普通でしょう。


あくまでも両手取引を目指す、という会社も中にはあるかもしれません。

しかし私がこれまで在籍してきた会社はすべて「片手でいいから決めて、今月の数字を何とかしろ」という方針でした。

囲い込みが業界内で常態化しているかのような指摘は、実態から乖離しているといえます。

 

薄っぺらい業界批判に惑わされず、不動産業界を正しく理解してほしい

ABC / PIXTA(ピクスタ)

これまでも書いていますが、不動産というものは金額が高く、売るのが大変だからこそ、買い付けを取るためにあらゆる可能性にかけるのです。

そのため他社が物件を内見するのは大歓迎され、予約を入れれば「ありがとうございます! 頑張ってください!」と言われます。


不動産やマンション管理についてのニュースはこまめに見るようにしていますが、

実務について何も知らずに書いていると思われる、薄っぺらな内容の業界批判が多すぎるようです。


不動産は契約にならなければお金にならず、それでいて契約を1件まとめるというのは大変だということをお分かりいただきたいと思います。


(written by 鶴間 正二郎)

最終更新日:2018年10月03日

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