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ヨーロッパの建築家が絶賛した日本建築とは?

2018年02月07日

TKO-M.architects

ヨーロッパの建築家が絶賛した日本建築とは?

現代にも生かされる伝統的な日本美

ヨーロッパの建築家が絶賛した日本建築とは?

石元泰博《桂離宮 新御殿外観南面部分》1981, 82年 国際交流基金蔵 (c)Kochi Prefecture, Ishimoto Yasuhiro Photo Center(出典:三重県立美術館)

一度は見ておきたい「桂離宮」

京都市西京区にある皇室関連施設「桂離宮」はご存知でしょうか? 江戸時代初期の皇族である桂宮家の別邸であり、複数の建築群と庭園が7万平方メートルの中に配置されています。建築物は書院造りをベースに「侘び・寂び」の精神を表現している茶室の要素を加えた物で、簡素で洗練された美しさがあります。また、庭園も回遊式庭園の傑作とも言われており、ガイドツアーで見学をされた方もいらっしゃる事でしょう。一度は見ておきたい日本人が作り出した美しい風景だと私も思います。

桂離宮の中で雁行配置されている建築群。(中央が中書院)(筆者撮影)

ヨーロッパの建築家が絶賛

1933年に日本を訪れたドイツの建築家、ブルーノ・タウトは桂離宮や伊勢神宮を見学し、世界に誇るべき日本建築の最高傑作と絶賛したのです。同様に、20世紀前半にドイツで設立された「バウハウス」という学校で初代校長をした建築家ヴァルター・グロピウスも桂離宮を賞賛しました。この二人はヨーロッパで建ち始めていたモダニズム建築を実践していた建築家なのですが、古い日本建築である桂離宮の中にモダニズム建築との共通点を見いだし、評価し始めたのです。


ブルーノ・タウト《画帖―桂離宮》(部分)1934年 岩波書店蔵(出典:三重県立美術館)

モダニズム建築ってなに?

モダニズム建築というのは、20世紀前半にヨーロッパを中心にして世界中に広まった建築の形式です。18世紀後半に産業革命が起こり、大量生産・大量消費・物流整備などが実現されている時代背景において、建築も新しく時代にあわせて作り方やデザインが変わってもいいはずです。そこで、ル・コルビジェなどによって無装飾で合理的な形態をした建築物がこれからの時代を現す建築だと提唱されました。具体的には写真のように作りやすいよう規格化された寸法で単純で簡素な形態を持ち、構造計算によって実現された光や風を取り入れられる開放的な空間をもつ建築が20世紀において最先端の建築物だったのです。そこでは美しさの定義も旧来から変化し、精巧で手の込んだ工芸品的なものよりも、素材の良さを活かしたシンプルで合理的な物を美しいと捉えるようになってくるのです。

モダニズムの代表的な建築物といわれるサヴォア邸〈設計:ル・コルビジェ 1931年竣工〉(筆者撮影)

桂離宮はモダニズム建築?

そのモダニズム建築家達が桂離宮のどんな部分をみて評価したのか、その答えが現在三重県立美術館で開催されている「モダニストの日本美」で展示されている石元泰博の写真を通してよく分かるようになっています。石元はサンフランシスコで生まれ、高知の農業学校を卒業後に単身で渡米してシカゴのインスティテュート・オブ・デザイン(現在のイリノイ工科大学)写真学科で学んだ写真家です。私たち日本人が見慣れて当たり前と感じていた桂離宮の建築、庭を構成する様々な要素が石元のアメリカ的視点(1969年に日本国籍取得)で鋭く切り取られています。展示されている桂離宮の写真50点はすべてモノクロのため、鑑賞する私たちは物と物の配置、陰影による素材感をダイレクトに感じる事が出来ます。通常のカラー写真ですと色の鮮やかさがまず目に入ってきてしまい、次に写されている対象が何なのか?などの意味を把握しようとしてしまいます。しかし、石元の写真はアップの写真が多いのもあり、「意味」よりまず白と黒の陰影で現れる「物の構成」を意識させてくれるのです。そう見るとモダニズムが掲げる簡素な美との共通点がはっきりと分かってくるのです。意味ではなく石元の写真を抽象画のようにずっと眺めていると、日常風景の中に日本人が古来より持っている「美」がきちんと潜んでいることを再認識させてくれることでしょう。

石元泰博《桂離宮 楽器の間広縁前の雨落排水溝と飛石》1953, 54年 国際交流基金蔵 (c)Kochi Prefecture, Ishimoto Yasuhiro Photo Center(出典:三重県立美術館)


石元の写真を見終わって振り返ってみると、私が実際に訪れて見ていた桂離宮の写真は一枚も無い事に気がつきます。同じ物や空間を全く別の視点で見ていたという訳です。石元の写真をじっくり見てから訪れると、桂離宮はきっと別の物に感じるのかもしれません。

再評価された日本美

本展覧会では洋画家である三岸好太郎が1933年に書いた下記の一文からスタートしています。

ところでこれ等の西欧の最も前衛にある建築法は、面白い事にこの目的のために東洋精神の財宝として愛されつつある寂明美と、簡明美とをその形式に上に取り入れ始めた事である


ヨーロッパが日本の伝統美を近代的な視点で再評価していることを認識してから描く絵が変化した三岸の作品が展示され、同様のことに気づいていた長谷川三郎の絵画、岸田日出刀の写真と文などと続き、最後に石元の写真へと繋がっていく展示となっています。キュレーターがこのテーマを掘り下げて調べ、次第に理解を深めていく様子そのものが展示構成になっているように思われました。

三重県立美術館 展示風景(筆者撮影)


モダニストに指摘されることで再発見された日本美は、現在も日用品や空間をデザインする際に活かされています。あなたの住む家にもこの日本美を取り入れてみるように考えてみてはいかがでしょうか。


【取材協力】

三重県津市大谷町11

開館時間:9:30~17:00(※入場は閉館の30分前まで)

休館日:毎週月曜日 (ただし祝日にあたる場合は開館、翌日火曜日閉館)

展覧会:モダニストの日本美―石元泰博「桂」の系譜

会期:2018年1月4日(木)~3月4日(日)

最終更新日:2018年02月07日

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